第1話 空の眷属/攫われた馬鹿
お腹が減ったので食堂に行ったらなんか知らない連中に攫われました(憤怒)
いや本当におかしくない? なんで攫われちゃうかな?
俺みたいなのを攫って何になるのって話なんだよね。
こういうのって普通は美少女が攫われるもんでしょ。
なんで僕みたいな野郎を攫うんだよ。お前らマジに思考回路狂ってるよ……。
俺を攫えるのなら、俺のオヤジだって攫えるよなア?
聴いて驚くんじゃないぜ。俺のオヤジはなんか知らないけど10億円の借金して自分探しの旅に出てるんだい! 連れ戻してくれよ。
「ハァ……ハァ……こいつが伝説の『空の眷属』で合ってるのか……!?」
うわぁ、ハアハア言っちゃってるよ。
これはマジモノだね。
「ああ、あってるはずだ。……バカのような顔に、金色の頭髪、炎のように青い瞳……バカのような顔……!」
ヘイ誘拐犯! 同じこと2回言ってるぜ? 言う事ないなら「イケメンで天才でイケメンな少年」とでも言っておけばいいのに。
そんな「バカだ」なんて事実無根の証言してないでさ。「イケメン天才美少年」って言っておけばもう許されるぞオイ。
「あ、そうだ。腹減ったんで途中で飯買ってくれませんかね?」
「なんでこいつ堂々と自分をさらった連中をパシろうとしてんだ?」
「そのバカにかまうな!」
バカっていうのはおかしいでしょうがって話だ。初対面で人にバカって言っちゃうのってバカだけなんだよ。つまりお前たちはバカってワケだ。ヤーイ、バーカバーカ!
「俺ア、イタロ・Y・ドメニコーニって言ってな、ここで一番偉いんだ……。……。……なにがなんだか分からねぇって顔をしているから俺がきっちり教えてやるぜ……俺たちは『天命騎士団』って言うんだ。俺たちの目的は〈地の魔王〉の殺害……!」
「さ、殺害!?」
予想外の一言にびっくりしてしまう。この人たち、誘拐罪だけにとどまらず殺人罪まで!? ちょっ……まずいですよ!
「〈地の魔王〉を殺すには、〈地〉に相反する特性を持つ〈空の魔王〉の力が必要だ! だが、俺たちは〈空の魔王〉とのコネクションがねぇんだ」
「……だから俺ンこと攫ったんすか? 俺がその……〈空の眷属〉だかなんだかで、つながりがあると考えて……?」
「そうだ」
俺は頭を抱えちゃったね。なんたって〈地の魔王〉だとか〈空の魔王〉だとか眷属だとか、知らない単語ばっかり出てきたせいで、ちょっとよく分からなかったもん。これはたいへん難しい話なんだなっていうのは理解した。
「俺達に協力しろ」
「何の目的があって〈地の魔王〉を殺すんすか?」
「世界平和」
「ああ、気に入った」
そうして僕は〈地の魔王〉討伐の片棒を担ぐことになった。