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11話

家の外に出る。
すぐ外は昨日の内に草刈りは済ませている。近くには、その草が山盛りに置かれていた。

「よーし、皆しゅーごー!」

気合を入れて、出せる精一杯の声を出す。
妖精達はすぐに集まってきた。

「なにー?」
「どうしたのー?」

ワイワイと賑やかな妖精達。
特に不安がっている様子もない。

「まず最初に確認だけど、ここで何をやってもいいんだよね?」

もちろん犯罪など、あくどい事はやるつもり無い。やって何か良い事があるかと言うと、何もないからだ。最終的に自分に返ってくるし。

「いいよー」
「何やるのー」

やるならもちろん自分のためになる事に限る。
この広大な土地を使ってできる事。先程食べた美味しいリンゴ。それはきっと、この土地が豊かだからだ。

「農園を作ります!」

そう宣言すると、「わー!」と声が上がったり、ぱちぱちと手を叩く音が聞こえたり。
正直、意味がわかっているのかと問えば、多分分かっていないだろう。
そしてもちろん、この広い土地で農園をするのが大変なのはココロも理解している。

両親がそれぞれ農家の出身だった。どちらも兄がいて継ぐことは無かったが、幼い頃は時期になるとよく手伝いに連れて行かれていた。
どちらの祖父母も良くしてくれて、農家の知恵を教えてくれた。

知識はそれなりにある。
広い土地だが、妖精達の力を借りれば問題無い。それどころか、季節関係なくいろいろな野菜、そして果物も苦労なく育てられると予想していた。

まずは妖精を全員見回してそれぞれの能力を再確認する。
青のと赤の妖精は、イメージそのまま水、そして火の能力。
黄色の妖精は光、藍色の妖精は風。
グレーの妖精は、昨日の草刈りや木等を切って加工、濃いグレーの妖精はハンマーやドライバー等の工具だろう。違いは切る・削ると組み立てる辺り。
そしてオレンジの妖精は土に関する力。
他に白とピンク、紫の妖精がいるが、彼らの力はまだ見たことないので、不明のままだ。

そして力によっては、同時に使うことで掛け合わせることができるのではないか。昨日初めて来たときに、青と黄色の力が合わさり、虹が出来たように。
稲作をするなら土以外に水もいる。
水温や気温も関わってくるだろうし、調節すれば季節問わずいろいろな野菜や果物を育てられるだろう。
そこまで考えつくのに、然程時間はかからなかった。
朝もらったリンゴを食べたときに、いい土地なのだろうと思ってからだが、それ以上に、食べ物に困らなくなるからだ。

「あぁ、そっか」

この世界に来る前。地球の女神に問われたときの答えを思い出した。
「危険や争いがない」世界には来れた。中央国家、及び東西南北それぞれの国は、それぞれトップが民を導いている。国同士が協力体制をとっており、戦争等も起こらない。
そしてハロルドとの会話から、自然災害は最小限に抑えられている。世界の力だろうと言っていた。

そして、ココロに与えられた「みどりの手」と言うスキル。
妖精達の力を借りれば、食べるのに困らない環境を作れると言うことだろう。
のんびり暮らす、というには、農園は向いていないかしれないが、自分で決めた事。平和で食べ物に困らないなら何も問題無い。

「と言うわけで、まずはこの草をなんとかしないと」
「僕の出番ー!」

目の前一面、緑色。これから目指すものも緑色。整備されてないかされているかの違いだ。
最初から広くしすぎても管理しにくいだろうから、ある程度の大きさを決める。
とりあえずサッカーグラウンドぐらいあれば良いだろうか。

「じゃあ、いくよー!」

ココロがそう考えていると、早速グレーの妖精が飛び出す。
思い描いた大きさに草がなぎ倒されていく。
そして刈られた端から風が吹き、草の山が大きくなっていく。

「ココロ、これはどうするのー?」
「そうだねー、ここにあると邪魔になるしなー」

雑草は土の養分を吸って育つから、栄養は豊富だと言っていた。だから肥料にしているとも。
どちらからも聞いた話だ。しかし方法は違う。米ぬかと土を混ぜて作る方法と、灰にして作る方法だ。
今回は、米ぬかの準備がないので、灰を使うことにする。

「燃やしていい?」
「あ、待って。まず穴を掘らないと」
「分かった」
「深さは30cmぐらいで…あ、これぐらいね」

どれぐらいの穴がいいのか説明する。
全部の草が入るくらいだからかなり広い穴になりそうだ。草の山の隣に、今度は土の山ができ始めた。

「じゃ草を穴の中に入れて」

穴が完成した頃には、草刈りも終わっていた。
草の山が無くなり、穴の中には草が敷き詰められている。本来は枯れ枝や新聞紙等に火をつけて焼くが、今はないので仕方ない。

「一気に燃やさないやうに低温でね」
「はーい」

低温でという指示に戸惑うことなく、小さな火を穴全体に広げていく。
全部の草が燃えたのを確認して消火する。
それが終わったら土をかぶせて一旦完了。数日待つ必要がある。

「次はー?」
「今日はこれでお終いかな。肥料撒いてからタネ植えたいし。あ…」

そこまで言って、重要なことに思い至った。
野菜を育てるために重要な、種を何も持っていないのだ。

「そうだった、まず買いに行かないと。家電とかもほしいし…あ、待ってその前に…」

もう一つ、重大な事に気がつく。

「お金、どうしよう…」

早速手詰まりになってしまった…

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