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地下大迷宮の見回り

 ハードゥスの管理者であるれいは複数存在する。いや、れい自体は一人なので、他は分身体だと言えばいいか。
 現在れいの本体は、ハードゥスと一体化しているといっても過言ではない。いつでも分離することは可能だが、その場合はハードゥスの防衛力が大幅に下がってしまう。
 なので、普段表面に出ているれいは分身体のような存在だ。そして、その分身体は複数生み出すことが出来る。れいの力の成長もあり、それなりの力を持たせた存在でも問題なく複数体生み出せた。
 その内の一体を地下大迷宮に派遣する。普段よりも一体多めに生み出しておけば、管理業務に支障はない。そちらの方に処理能力を割く必要が在るので普段よりもやや処理能力が落ちるが、普段から情報処理には十分な余裕を持たせているので問題はなかった。
 そうして派遣されたれいは、地下大迷宮に入っていく。
 地下大迷宮は難度が極めて高いので不人気で、腕試し以外で挑む者は居ないとさえ言われている。地下大迷宮周辺も森が広がるだけで何も無いので、人の気配は全く無かった。
 地下大迷宮の入り口が在る神殿風の建物に入る。そこにある長い階段を下りて、門扉の無い門を潜ると地下大迷宮内だ。
「………………ここも変わりましたね」
 以前と構造が変わった神殿だが、今では神殿も地下大迷宮の一部のようなものなので、そういうこともあるのだろう。
 門を潜ると、それだけでガラリと空気が変わる。門前も冷えた不気味な空気が漂っていたが、地下大迷宮内部は空気が重たいような気味の悪さに満ちていて、人であれば入っただけで血の気が引くほどだろう。
 もっとも、れいにとっては何か変化したような? 程度の微妙な変化にしか過ぎない。地下大迷宮内は、門を潜ると広間になっていた。その辺りもまた変化しているようだ。
 洞窟のような広間からは、正面と左右の三方に道が伸びている。道は鉱山のように木枠で補強されているようで、見た目は地下というよりも坑道のような感じだ。
 明かりに関しては空間自体が光っているので、光源が無くとも明るい。なので影は出来ていない。
 れいは三方の道を確認した後、正面の道を進む。どの道を進めば次の階へと進めるかは頭の中に入っている。
 道中でつるはしを持った骸骨の魔物に遭遇するが、れいはハードゥス最高位の存在である。それは地下大迷宮内でも適用されるので、遭遇した魔物がれいに襲い掛かってくることはなく、むしろ道を開けるように端に移動した。
「………………現在のここは坑道がテーマなのですね」
 骸骨がつるはしを持っていただけだが、周囲の場所の影響で工夫の成れの果てに見えなくはない。そんな姿でも、強さで言えばそれなりの強さなのは、流石は地下大迷宮ということか。
 現在の階層のテーマが坑道なだけに、この階層には幾つか採掘ポイントが設けられている。その代り宝箱は存在しないようだが、それでも割と希少な金属がたまに出るようだ。途中で遭遇した魔物を倒してつるはしを奪えば、準備していなくともそれを使って採掘可能という仕組みらしい。
 無論、れいはそんなこと微塵も興味ないので、一直線に下へと続く階段を目指していく。浅層はそこまで広くはないので、道を知っていれば数時間程度で下に行けるだろう。れいの場合はゆっくり進んでも一時間ほどで到着してしまったが。
 それからも、れいは誰も居ない地下大迷宮をどんどん先へと進んでいく。全体の把握もちゃんとしているので、今のところ直接見に行くほどの何かは確認出来ていない。
 それからもれいは、地下大迷宮内を見回りつつもサクサクと地下大迷宮を下へ下へと進んでいった。

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