第4話「ねじれたモノ②」
今度は、二段公園が荒らされていた。
桜の木の枝が折られ、遊具には落書き。砂場の砂がまき散らされ、ベンチはひっくり返されていた。
それはもういたずらというレベルではない有様だった。
「昨日、我らが見たときは何ともなかったのに」
「常に見てるわけじゃねぇんだから、そんなもんだろ」
首を傾げるスイとテンに、サワさんが2匹の口元にクッキーを差し出しながら、つれなく返す。
これまでの事件についての情報や、見回りで得た情報を共有するために、俺たちは、便利屋の事務所として使っているスハラの家に集まっていた。
「現行犯で見てしまったほうが危なかったかも」
オルガの言うとおり、現場に居合わせて目撃してしまったほうが、何か危害を加えられる可能性もあるし、危険は大きいだろう。
「けど、現場にいないと犯人がわからないよ」
頭を抱えるスハラの言葉もそのとおりだと思う。
これまでの犯行は、人目につかないところで行われていた。おそらく犯行の時間帯も人がいない夜。防犯カメラの死角を狙っての犯行と思われている。
だから、犯人の目撃情報がなく、防犯カメラにもその姿は映っていない。
「見回りを強化するしかないのかな」
結局その隙間を狙われてしまったらどうにもならないけれど、少しでも抑止力になれるなら。
俺のつぶやきに反応したスハラが、ちょっと迷うそぶりを見せながら、夜の時間に見回ろうかと提案する。
「犯行が夜に行われるなら、夜に見回りをすれば現場を押さえられるかもしれない」
その提案には、サワさんが異を唱えた。
「それは本当に危ないだろう?何かあった時に、助けを呼べないかもしれないぞ」
至極まっとうな意見。
この提案がオルガに関わるからだろう。
いつになく真剣な表情のサワさんは、スイをなでる手を止めて、正面からスハラを見据えた。
「どうしてもというなら、単独行動は避けろ」
サワさんは、そのまま俺を見る。スハラも、サワさんにつられてこちらを見た。そして、なるほどという顔をする。
「じゃあ尊を連れていくならいいでしょ?」
「あぁ。何ならスイとテンも連れていけ。いいだろ?ミズハ」
「ええ、スイ、テン、お願いできるかしら」
スイとテンは、サワさんの足元で尻尾を振って、肯定を示している。あとは、俺だけだ。
「尊、お願いできる?」
スハラの言葉で、みんなの視線が俺に集まる。
俺は、ちょっとだけ息を呑んで、首だけで頷く。足元では、俺の代わりにスハラの猫―レン―が、呼ばれてもないのに、にゃあと返事をした。