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巨人

 巨人。れいが拠点としている巨大建造物を建築した者達で、その範囲は世界によって異なる。数メートル程度の巨人も居れば、十数メートルの巨人だって存在する。中にはそれ以上だって居るのだから、巨人の定義は幅広い。
 その巨人だが、今までハードゥスには流れてきていなかった。いや、正確には保管されていて漂着されていないだろうか。
 元々漂着数がそれほど多くはなかったので、ある程度在庫が溜まるまで待っていたのだが、つい最近まとまった数が漂着したおかげで、その数が十を超えて十六にまで溜まった。
 それぐらいの数になれば、勢力としては問題ないだろう。巨人は身体が大きいだけに、それだけで非常に戦闘力が高い。なので、少数でも勢力としては申し分なかった。
「………………大きさに多少バラつきが在るのが気掛かりですが、まぁ問題ないでしょう。後は何処に漂着させるかですね」
 巨人を見たことがあるのは、漂着者の中でもごく一部だけ。話だけなら物語に登場するので知られているが、実物となると容易に相応の混乱が予想される。かといって、新しく大陸を創るにしては数が少なすぎた。
「………………さて、どうしましょうか」
 れいは考えてみるも、直ぐには解決策は思い浮かばない。このままもう少し数が増えるまで待ってもいいし、適当な大陸で人の国から離れた場所に新たに町を創ってもいい。
「………………最大で身長およそ十三メートルですか。巨人としては標準的……なのでしょうか? 世界によってはもっと大きな者も存在するようですし、このぐらいだろうと思うことにしましょう」
 倉庫の中で最も大きな個体を調べたれいは、その大きさを基に場所の選定をしていく。
「………………倉庫の中にも使えそうな建物は少ないですね。補修が必要な建物も多いですし」
 住民相応の大きさの建物だけに、穴に落ちた際に一部元の世界に残してきている場合や、穴に落ちる際に何処かにぶつけてしまったような跡があったりと、用意するにもまずは建物の補修から始めなければならなさそうだった。
 それでも建物の数はそれほど多くないが、なにも流れ着いた巨人全員が何の関係もない者同士というわけではないので、近しい者達は一緒に住んでもらえばいい。
 それであれば保管庫に在る建物で足りるし、今後は自力で建設を任せてもいいかもしれない。問題は、漂着者の中に建設関係に携わっていた者が誰も居ないことだろうが。
「………………後はそれだけの数の建物を設置する場所ですね」
 巨人の住居であるからして、その建物も相応に大きい。相応に大きいということは、それだけ土地が必要ということだ。場所に関してはないわけではないが、条件を考えると大分減ってしまう。
「………………流石に秘境というのも可哀想ですからね」
 巨人達だけでも生きていけるかもしれないが、やはり交流はあった方がいいだろう。そう考えると、更に候補は減っていく。
「………………アーロトントに管理させている多種族が共存する大陸もありますが、あちらは大分形が定まってきて、少し排他的ですからね。まぁ、交流を諦めれば……うーん、いっそここに住まわせますか?」
 れいはふと、自分が拠点にしている建造物について思い出した。元々ここは巨人のための施設で、それも結構大型の巨人向けなので、棲む分には問題ない。
 居住用の部屋も大量に余っているし、森が在るので食べ物には困らないだろう。必要ならば何かしら設置すればいいのだし。
「………………ただそうなると、交流の面で不便になりますね」
 巨大建造物が建っているのは、絶海の孤島である。近くに大陸は存在しないし、建物内にはれい以外には管理補佐か動物ぐらいしか存在しない。管理補佐は手助けという方面ではかなり心強いだろうが、普通の交流は難しそうだ。
「………………この建物の保全は任せられ……るのでしょうかね? 教えれば何とかなるとは思いますが」
 巨大建造物に住まわせると仮定して考えるも、それはそれで大変そうだった。しかしそれでも、無用な衝突だけは避けられるだろう。
 れいはどうしようかと考えるも、他の場所となると、それはそれで不便が存在する。結局のところ一長一短なので、まずは巨大建造物内に住んでいる管理補佐達に相談した後、折角なのでこの際、特例として巨人達自身にも直接話を聞いてみることにした。

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