第2話「星に願いを③」
「ただいまー」
帰宅を告げるスハラの明るい声。
賑やかな気配をまとって部屋に現れたスハラは、暗い顔をして沈黙する男2人を見て、笑い出す。
「あんたたち、暗い顔して何してんの?」
あっけらかんとしたスハラに、サワさんは鋭い目を向けて、盛大に舌打ちをしている。俺はその光景に、サワさんがキレるんじゃないかとはらはらしてしまう。
「サワ、さっきオルガが探していたよ。帰ったほうがいいんじゃない?」
スハラから投げられた言葉は、サワさんの地雷だった。サワさんは、見たことがないような怖い目をしてスハラを睨みつけるが、スハラは全く意に介せず、机の上のバラバラになったものを見つけて言葉を続ける。
「それ、オルゴール?壊れてんだね。」
さすがにそれは直せないなーと軽く言うスハラ。俺は、今にも爆発しそうなサワさんを横目に話に割って入る。
「オルガのものなんだって。これ、スハラでも直すの無理?」
「サワ、オルガのもの壊したの?それは、いくらオルガが探してても帰れないかー」
直すのもこれは無理だなーと、意外と手先が器用なスハラでも直せないらしく、他人事のように(実際他人事なんだけど)のんきなスハラに、サワさんは怒りが頂点に達したらしい。
冷たいオーラを放ちながら、無言で部屋を出ていこうとするサワさんに、俺は慌てて声をかける。だけど、全く耳に入っていないのか、見向きもしない。そんなサワさんの背中に、スハラが真面目な声で言う。
「サワ、どうにかしたいんでしょ?私の話、聞いてみない?」
効果てき面。サワさんは、背中を向けたまま立ち止まった。
スハラの提案は、とても単純なものだった。
オルゴールは直せない。だから、代わりになるもの、要はお詫びのものを用意して素直に謝る。
確かに、俺もそれしかないと思う。壊れたものは戻らない。代わりを用意したって、代わりになれるとは限らない。だけど、精いっぱいの誠意を見せる。
サワさんは、スハラの提案をちょっとの間考えたのち、頷いた。