免許剥奪!?
その翌日のことだった。なにやら一階がバタバタと騒がしくって、新規の客でも来たのか、それとも仕事依頼でも来たのかな、なんて思い、俺は眠い目をこすりながら食堂へと降りていった。
……そこには、きれいに磨かれた甲冑に身を包んだ3人の男。あれか、リオネングの騎士団の連中か。
「ここのギルド長は貴様か」先頭にいる金髪の若い男が俺に言い放つ。ああ、いつもながら見下したもの言いっぷりだ。
じゃない、そういや俺ここのギルド長だったっけか。親方が死んで自分が相続したんだっけか。
あの頃の俺は読み書きなんてできなかったんで、トガリに全部任せたんだ。とは言ってもトガリは俺のギルドに属してない。あくまで臨時雇いのコックだ。
それにジールもルースも別のとこに所属してるしな……もっと偉い人だとかって話だが。
ということで、ギルドとかなんとか言っても、俺一人だけの運営なんだ。
名前は……確か「岩砕組」だったっけか。そう、亡き親方の二つ名がそのままギルドの名前になっている。これは何十年も昔っからだ。
「貴様の名は獣人ラッシュとか言ったな。話がある」獣人だけ余計だ。要は……ああ、城の連中は獣人嫌いが結構多いって聞いたっけ。
ルースが以前教えてくれた時には、オコニドと違いこのリオネングは俺ら獣人には寛容だとは聞いたのだが……そう、結局のところ「この戦争の発端は獣人」という声が城内で再燃し、排斥、追放論まで出た次第だ。
いまやこの街でも獣人の数はほんの一握りとなってしまった……差別なく住める新たな場所を求めて。
さて、話がそれちまった。っていうかこいつらいったい何しに来たんだ? こんな物々しい格好して仕事の依頼とは到底考えづらいし。
「先日、貴様はゲイルという男に接触したそうだな。我々の作戦を無視してまで」
えええ⁉ 一体どういうことだ。確かに接触はしたけど作戦無視なんかしてねえぞ!
いや、そうじゃない。アスティだ。あいつ正規のリオネングの兵だからわかるはず!
「弓兵のアスティ?……初めて聞く名だな」
「うそつけ! 俺はあいつと一緒にオコニドの連中と戦ったんだ! それに捕虜を一匹連れて行ったはずだ……なぜ」
その時思い出した。そうだ、昨日……アスティが瀕死の状態で川に浮かんでいたことを。
「つまり、だ、リオネングの正規ギルドである貴様が、こともあろうに我が国を裏切ってオコニドに行ったゲイルというやつと接触した。これは紛れもない事実。よって貴様を厳罰に処することとなった」
「え……」
金髪の隣にいた騎士の男が、紙を取り出して読み上げたもの、それは……
「岩砕組の解散、そしてギルド長であるラッシュ。貴様の全権利剥奪をここに申し渡す」