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衛星

 ハードゥスのれいが本体から独立して幾らか月日が過ぎていった。その間、独立したことで何か変化があったかといえば、全く無かった。
 元々本体のれいがかなり配慮していただけに、不便が一切ないどころか快適ですらあったほど。
 独立する前までは、生殺与奪の権を握られている感覚と言えばいいのか、上の存在と根本で繋がっているような感覚が僅かにあったのだが、今ではそれが全く無い。創造した管路補佐達とは今まで通りに繋がっているが、それは前述の繋がりとはまた異なる。
 本体のさじ加減により変動していた基礎能力も独立した時に確定した。ただ、独立する時に餞別だと言って基礎能力を大幅に上昇されたので、能力自体はとんでもなく上昇してしまっている。これは本体が持て余していた力の一部を最後に押しつけたということなのだろう。
 れいは非常に優秀なようで、そんなことになっても能力に関しては直ぐに完全に掌握してしまったので問題は起こっていない。ただ、れい側も元々力を持て余していたので、そういう意味では困ってしまったが。
 困ったことと言えばおそらくそれぐらいなのだが、面倒なことには変わりなかった。
 装置による力の保管もかなりの数に達しており、既に世界一つ分ぐらいは保管装置が占めているだろう。その全てを使えば、どれだけの世界が亡ぼせるのやら。
 それでいながら、当然だが力は未だに増えている。果実の作成にも限度があるし、褒賞用の物は創造しても大して力を使わない。そもそも褒賞の半分ぐらいは、安易に市井に流せない高性能な漂着物を流用しているので、その辺りは中々難しい課題であった。
 それこそ、新しい世界を創造するのならば、そこは力の保管庫として創造してもいいとさえ思える程なのだから。
「………………とりあえずハードゥスの拡張はするとしまして、折角独立したのですから、世界の創造をしてもいいかもしれませんね」
 独立したからには、何処かにお伺いを立てる必要性は無い。近隣世界との距離感は気にする必要はあるが、考慮すべきはそれぐらいだろう。
 それに、世界を創造するだけでもかなりの力を消耗する。少なくとも、今のれいであれば一日から二日分の余剰な力は使う必要があるので、保管装置の幾つかは使用出来る。
 そして、そこを厳重に護れば力の保管庫として使用出来るだろう。なんだったらハードゥスの衛星にしてもいいかもしれない。
 今は他の世界を参考に月のようなモノを生み出して導入しているが、衛星を創ればそれも必要ないだろう。もっとも、月のようなモノを創り出して、その役割を再現していたハードゥスの力を別の場所に割り振らなければならないが。
「………………別の場所の補助に回せば問題ないでしょう」
 ついでに衛星の管理者も創造しておけば、更に力を使用出来る。衛星の目的は力の保管場所だが、妙な管理者は創らないようにすれば問題ない。
 そうした予定を組み立てた後、れいはハードゥスの衛星を創造することにして、そこに溜めに溜めた保管装置を移管することにした。
 もっとも、それでさえ一時しのぎでしかないが。やはり永続的に莫大な力を消費するような何かを考えなければいけないのだろう。

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