2話 まさかの勇者誕生!?
「……な、何だ今のは……っ!?」
「ディ、ディラン様……!」
「……」
やっと思い出した。「違和感」の正体はこれね。
先程までは記憶を完全には思い出していなかった。だから2つの意識があるような感覚がおぼろげにあり、特に前世があるという自覚もなかった。全てを思い出した今、その意識は自然と1つになった。今の
そして、今世の自分が誰なのかも。今、何が起こったのかも。全てを、思い出した。
「さあ……」
「っ!」
「はっ!」
剣を思いっきり振る。周りには誰もいないので、空振りだ。だが、空振りでは終わらない。
「「「うわああああ!」」」
たったそれだけで、全員が吹っ飛んでしまった。……知ってはいたけど、凄い。これが、魔力波?
「これは一体何事だ!」
閉じられていた会場の扉が開き、力強い声が響いた。国王陛下だ。
「申し訳ありません、陛下。
現れた陛下はこの惨状に呆然としていた。この卒業パーティには国王陛下も参加されるのだ。
立っていた人も、全員が
「何があったのだ、カミラ。……お、お主、その剣は!」
「はい。聖剣でございます」
今日は重大な日、というのはこの勇者を探すためでもあるから。
でも、
この世界は実は乙女ゲームの世界。この聖剣を抜くことができるのはそのルートの攻略キャラ、つまり聖女と最も好感度が高いキャラのみが抜ける。その上、歴代の勇者も全員が男性。
一方の
だが、この乙女ゲームの悪役令嬢であるカミラとは違って、
そもそも、好感度が高いのであればこんなことはしないはず。
「実は、殿下に婚約破棄を言い渡されまして……」
「何だと!?」
陛下は殿下を睨みつけた。流石、王家の血筋。魔力が多いおかげで、
殿下は怯えた目でこちらを見ていた。
「身に覚えのない罪を言いつけられ、更にはその噂を広められ、
「……例の噂か」
「ご存知でしたか」
当然と言えば当然ね。次期国王となられる殿下の婚約者に悪行など、あってはならないこと。学園中で噂になっていたのであれば、陛下のお耳にも入るでしょう。
「あれは根も葉もない噂ではないか。それを流したのは、お前達だな?」
「ね、根も葉もない噂ではございません! 真実でございます、父上!」
「聖女の話だけを信じ、自分の婚約者の話など耳も傾けていなかっただろう! 故意であるかどうかは別として、それのどこが真実だと言うのだ!」
陛下は顔を真っ赤にして、大変お怒りね。
一方で、一気に青ざめていく殿下。やっと自分が何をしたのか、少しは自覚したかな?
無実の罪で公爵令嬢との婚約破棄を勝手に宣言した上に、その公爵令嬢は魔王から世界を救うための勇者だったのだから。
たとえ無実ではなかったとしても、報告も相談もせず殿下側で勝手に進めていた。許されるわけがない。
「で、ですが父上! この目でカミラは本当に聖女に対して非道な行いを——」
「お前は国を、いや、世界を滅ぼす気か! なんと軽率な行いをしたのだ! お前達には重罰を与える!」
「父上!」
「お前に『父上』などと言われたくもないわ!」
殿下はそれ以上、何も言えなかった。何故なら、陛下のお言葉は息子だと認めないということ。絶縁宣言のそれに近いものだから。
公爵令嬢と勝手に婚約破棄というだけでも内乱の可能性がある。その上、勇者。
聖女だけではどう足掻いても魔王には対抗できない。聖女は魔王が放つ呪いなどを浄化できる。しかし、そのような後方支援ばかりで攻撃手段はない。だから、対抗できる勇者が必要なのに。
「な、なんだこの音は!」
突然、どこからか轟音が聞こえた。
その音を聞いて、次に何が起こるかを察した。この音は聞き覚えがある。
「陛下、
この後、更なるイベントが発生する。勇者が現れた瞬間、それを倒そうとする奴が。