06
私は、その場を動かないでいた。
するとシンは、困った表情をしていた。
だが、あまりにも動かないのでため息を吐きながら……。
「まったく……分かったって。
妖精界に連れて行くのは無理だが、山道にある洞穴なら連れて行けるだろう?
あそこで怪我を治るまで面倒をみてやれ」
「うん、ありがとう」
なるほど、洞窟なら雨や風は、防げる。
後で食べ物と手当てをしてあげれば助かるかも……。
そして嫌々ながらもシンも手伝ってくれた。
山の奥にある洞窟に入っていく。
そして連れて行く時に、シンにドラッグストアで買ってもらった。
包帯を巻いてあげて、バスタオルで身体を拭いてあげた。
何を食べるか分からないので、ドックフードと水も置いてあげた。
「この事は、皆には内緒にしてよ?シン……」
「当たり前だ。こんな事を知られたら怒鳴られるぞ。
下手したら人間界に出入り禁止になる……」
確かにバレたら、怒鳴られるだけでは済まないかも
私も人間界に行けなくなる……。
でも、放っておいて死なせるよりはいいだろう。
私は、小さなオオカミの頭をソッと撫でてあげた。
ぐったりしていて一度も目を覚まさない。
早く良くなってほしいな……。
「早く元気になるといいね。また来るね」
私は、バレないように早く帰ることにしたのだった……。
そして夜になった頃……。
真っ暗な洞窟の中で小さなオオカミは、起きていた。
息を切らしながら目を開けていた。
相手から見て左目が赤で、右目が黄色の瞳をしていた。
すると1人の人物が洞窟の中に入ってきた。
小さなオオカミは、警戒をしながら唸る。
「急に失踪をするから探したよ。キラ様♪」
月の光りで、その人物の顔が見えてきた。
少し長めのアッシュブルーと赤い目をした男性だった。
仲間だと分かると小さなオオカミは、ハァッと深いため息を吐く。
そしてポンッと共に黒髪の幼い少年に姿を変えた。