12th:a place to come back C
近くにあったベンチに深く腰掛けているうちに、気づけば雨は止んでいた。
見届けた俺はこれからどうしようか。どう生きていこうか。
夜の帳に包まれる街を俺はどこともなく歩き始めた。教会、特売セールの日しか立ち寄らなかった雑貨屋。その隣の店のウィンドウにはいつか見た高級指輪が飾られている。
「おや?先日のお連れ様ですね」
ぼうっと指輪を眺めていると店の中から店主が出てきた。すべてを見通しているかのような穏やかな表情をしている。
「指輪、できてますよ。どうぞ店の中へ」
「いや、あの……俺は」
俺の言葉など耳に入っていないようで、店主はさっさと店内に戻ってしまった。受け取るべき本人はもうこちらの世界にはいない。どうしようか迷った挙げ句、とりあいず俺は店に入ることにした。
「これをお渡しください。値段分は、いい仕上がりになったと伝えていただけると」
困惑しながらも、俺は指輪の入ったケースを受け取るとポケットにしまい込んだ。
思えば、あの時は二人でここを出て行ったんだよな。惚れた男に渡すための指輪を作って、満面の笑みでルカはこの扉を開けていた。
そして、扉を開けた先に街の景色はなかった。
一面が光に満ちて、振り帰っても店内すべてが眩さに包まれていた。
わけがわからずにいるうちに光度はどんどん増していって、腕で目を覆わないと潰されてしまいそうだ。
どれほどの時間が経ったか、それとも思いのほかそれは短かったのかはわからない。ただ、やっと眩さが収束していったことだけはわかったので、恐る恐る俺は目を開ける。
懐かしすぎて実感がわかないけど、そこは見覚えのある景色だった。