日本の並行世界にピンリンという国が存在する。ピンリンと日本ではLGBT+に対する考え方が違うだけで、他は似ていた。日本は昔と比べ彼らに理解のある人が増えてきた。それでもなお、彼らに対する悪い偏見は多く彼らを苦しめている。しかし、日本の並行世界であるピンリンでは彼らの存在がみんなから認められ、誰一人として彼らを差別する者はいなかった。
-200X年-
ピンリンに加納 聖という女の子と麻歩 朔進という男の子が産まれた。聖は幼い頃、親が事故で亡くなってしまい、朔進の親に引き取られ彼らは兄弟のように育った。ピンリンで生きる彼らには、自然と性に向き合う機会が多かったため、2人は小学生の頃から自分自身が同性愛者だと自覚していた。
麻歩朔進は中学1年生のとき、小学生の頃から仲の良い利仁に恋心を抱いていることを自覚した。朔進は利仁への想いを自覚した途端、とても意識してしまい緊張のあまり想いを口にしてしまった。「利仁が好き…だから…俺利仁の恋人になりたい!」。朔進は断られると思ったのだが、利仁はこう言った。「実は僕も朔進が好き。僕も朔進の恋人になりたい!」。2人は晴れて付き合いだしたが、しばらくして利仁の親から悲しい事を聞いた。利仁が不治の病に侵されていること。あと生きて1年の命だということ。朔進は辛かった。だが朔進は利仁の方が辛いはずだから少しでも元気になってもらえるように頑張ろう、と考え毎日お見舞いに行った。けれど、利仁は3ヵ月も経たないうちに亡くなってしまった。朔進はとても苦しんだが、2人の関係を知る周囲の人に心配させないように元気に振る舞った。元気に振る舞えば振る舞うほど、朔進の心は傷ついていった。それをそばで見ていた聖は朔進に寄り添い続けた。そのおかげで、朔進の傷が少しずつ癒えていった。
3週間程経った後、朔進と聖が話していると急に彼らを激しい頭痛が襲った。2人は痛みから解放され気づくと知らない部屋にいた。どうやら道で倒れていたところを、心優しい夫婦に助けられたらしい。部屋はピンリンに似ている。夫婦にこの場所を聞くと日本と言う国だということがわかった。だがピンリンでみた地図の中に日本と言う国名はない、もちろん聞いたこともない。もしかしたらと思い夫婦にピンリンと言う国を知っているか尋ねると、知らないと言われた。
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