北の森状況報告
北の森の開拓が進んだ。いや、開拓ではなく共存だろうか? フォレナーレとフォレナルの存在が伝わった国では、れいの従神が管理する森を荒らすわけにはいかないという結論に達し、国側に近いフォレナーレを窓口に、素材採集に人が森に立ち入る許可を求めたのだった。
それをフォレナーレが許可したことで、北の森は国が出入りを管理し、森に入るのを許可制にしたという。といっても、元々北の森に立ち入れるほどの者は素性がしっかりしている者が多かったので、そこまで厳しい審査があるわけではない。なので、森に入る者はそれなりに居る。
フォレナルにはフォレナーレから連絡がいっているので、そちらも問題はない。
フォレナーレとフォレナルの存在について報告した主座教の聖女候補は、従神との繋がりが決め手になり聖女に認定されたという。だが、その後もちょくちょくフォレナーレの家を訪ねているらしい。
フォレナーレは今では最も近くに居る従神であるので、聖女はたまに信者も連れて巡礼に訪れている。北の森は強い魔物が多い危険地帯でもあるのだが、聖女が先導する信徒は魔物に襲われることはないらしい。
そういった話を魔木から聞いたれいは、そうなのかと頷く。
北の森に人が出入りしているのは知っていたが、そういった細かなところは重要な情報ではないと判断して、記録だけ管理補佐達との共有記録領域に投げ込んでいたのだった。
「………………ここも賑やかになりましたね。この周辺には人は来るのですか?」
「いえ、この周辺は魔物もあまり寄り付かないので、人はまだ来ていませんね。それ以前に、人はまだ入り口付近から然程奥まで来ては居ませんが」
「………………そうでしたか」
「はい。それに、どうやら人の最初の目的は森の探索よりも、フォレナル様とお会いすることのようですので」
「………………フォレナルにですか?」
「はい。この森に来ている人の国はれい様を崇めていますので、れい様が創造された存在も特別なのです。そして、フォレナル様よりも森の入り口に近いフォレナーレ様は既に人と交流を持ったようですので」
「………………なるほど」
魔木の説明に頷いたれいだが、果たして何処まで理解出来ているのかは分からない。
「………………しかし、フォレナルの許まで辿り着けるのですかね? 道中には魔木も存在してますし」
「我々はあまり動かず攻撃範囲も狭いので、上手く迂回して進めば問題ないかと。魔狼などの魔物に関しては、群れに遭遇しなければいけるのではないかと」
「………………魔木と普通の木を見分けるのが大変そうですがね。しかし話を聞く限り、思ったよりも人の成長が遅いですね」
「そうなのですか?」
「………………話を聞く限りではありますがね。近いうちに一度外での活動の様子も観察するとしましょう」
昔に地下迷宮内での人の戦闘を観察したことがあるが、人が魔物と地上で戦っているところは長いこと見ていない。話を聞く限りでは、どうも思ったよりも早く成長が頭打ちしてきたようだと判断した。
魔物の方が大きく成長するというのも色々とバランスが崩れてしまう。それを確認するために近いうちに現状の確認をしておこうとれいは思った。もっとも、仮にバランスが崩れても、それはそれとして受け入れるのだが。
それからも魔木と情報交換をした後、れいは現状を直接確認するために各大陸を回ってみることにした。