07
「はぁっ?焦ってなんかいないぞ?」
「いや、どう考えても焦っていますよね?」
私は、キッパリと言い切った。
いつまでも言い負かされてばかりじゃない。
私も言いたい時は言う。
すると課長は、しばらく黙るとハァッと深いため息を吐いてきた。
いや、そこまで考え込まなくても……。
私は、戸惑いつつ軽食用にお茶漬けと漬け物を課長に持って行く。
試食でたくさん食べたのでサッパリとした物が食べたかったからだ。
テーブルに置くと課長は、まだため息を吐いていた。
「どうもお前と絡むと余裕がなくなるな」
「余裕……?」
あ、やっぱり気のせいではなかった。
余裕が無いと思えたのは、どうやら本当だったようだ!
思わず聞き返すとこちらをチラッと見てきた。
「お前に悪い癖が出る前に急ぎたかったと言うことだ。
結婚を考え直されても困るしな」
その言葉にハッとする。あぁ、それでか。
私が、結婚を取り止めると言わないか心配なんだ。
あの時は、理解してくれて許してくれたと思っていたが、課長の中では解決してなかったようだ。
無理もないか……まだ悪い癖が抜けた訳ではないし
今日も散々やってしまったから。
「いくら何でも結婚を取り止めたりしませんよ。
何度も言いますが私が好きなのは、課長なんですから。
イケメンは、あくまでも鑑賞用です!」
アイドルを見るのと同じ。
鑑賞用と好きなのは、違うとちゃんと区別が出来ている。
いや、気づかせてくれたのは、課長自身だ!
「それならいいのだが……どうもお前は、イケメンを見ると他の事が疎かになるからな。
たまに俺が居ることを忘れているし……」
「それは、すみません」
しゅんと落ち込みながら頭を下げる。
自分でも直そうとしているのだが……イケメンを見るとつい、抑えているはずの本能が出てしまう。