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私は、チラッと課長は、それに気づきクスッと笑ってくれた。
それを見て私は、嬉しくなる。
するとお母様が手を叩いた。
「正式な婚約が決まったのなら夕食にしましょう。
ご馳走たくさん作ったのよ」
「わ、私も手伝います」
「あら、いいのよ。
菜々子さんは、今日お客様なんだから」
「いえ。お手伝いさせて下さい。料理なら得意なので」
お母様がそう言ってくれたが私は、自ら進んでやると伝えた。
この緊張する空気に居るよりも手伝って方がいい。
それにいい嫁になるには、まず気に入ってもらわねば。
そして一緒にキッチンで、残りの料理を作るのを手伝った。
筑前煮にを作りながらお鍋の灰汁を取っているとお母様が興味津々に……。
「菜々子さんと誠は、元々上司と部下なのよね?
誠は、会社ではどうなの?
あの子……会社の事とか話してくれなくて分からないのよ」
会社の様子か……。
思わず叱り飛ばしている姿を想像してしまった。
ゲッ……それしかないのかしら?私には……。
「き、厳しい方ですね。でも、凄く真面目なんですよ。
言う事は、的確で色々と勉強になっていました」
まぁ、かなり怖かったけど……。
さすがに『鬼課長』と呼ばれていたなんて言えない。
「フフッ…そうなの?あの子、顔はいいのに……不器用な子でしょ?
奥手な所があるから女性との浮いた話が聞こえてこなくて心配をしていたのよ。
でも、菜々子さんが居てくれて安心したわ」
「……はぁ……」
不器用な人なのは、確かにそうなのだけど、顔がいい……?
お母様の美的センスがよく分からない。
さっきもお父様が1番のイケメンだと言っていたぐらいだ。