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「はい、おつかいのやつ。お客さんは、見えた?」
「えぇ、今客間に居るわよ」
「じゃあ、挨拶をしてくるよ。知り合いなんだ!」
ゆ、裕太君!?知り合いって言っちゃうの!!
裕太君の元気な声がここまでよく聞こえてきた。
これは、紛れもなくピンチだ……。
「宮下……お前。裕太と知り合いなのか?」
「えっ?そうなんですか?ウチの息子と……」
課長だけではなくお兄様まで聞いてきた。
ヤバい……もう隠し通せない。
バレるのも時間の問題だった。すると裕太君は、バタバタと小走りで、こちらに来る。
そして思いっきり障子の戸を開けた……。
「いらっしゃい。菜々子さん」
あぁ、目の前にキラキラした天使の笑顔の裕太君が……。
「こら、裕太。お客様の前に失礼だぞ」
「はーい。ごめんなさい」
課長のお父様に叱られる。
でも相変わらず素直に謝る姿は、いい子だ。
私は、どうしようかと思いながらもニコッと微笑んだ。
「こんにちは……裕太君」
「裕太。彼女と知り合いだったのか?」
「うん、俺のバイト先のオーナ兼店長さんだよ。ねぇ、菜々子さん」
課長の質問に対して彼は、笑顔で即答してくる。
あぁ、バレてしまった……。この世の終わりだ。