08
「いや……いい。それぐらいで、へばるような鍛え方をしていない。
しっかり掴まっていろよ?行くぞ」
そう言うと少しずつ歩き出した。
嘘っ……本気で、この状態で登る気なの?
いくら鍛えていても無茶苦茶だ。
「あの…無茶ですよ!?
そのまま下山した方がいいかと……」
「前にも言っただろ?俺は、いい加減な奴や中途半端な奴が嫌いだと……。
やるからには、最後まで登る」
課長は、そう言うと諦めずに登り続ける。す、凄い…。
ここまで妥協しない人は、初めて見たかも
本当に課長は、融通が利かないと言うか真面目よね。
そういえば、会社でもそうだった。
よく残業をして仕事をやれるだけ片付けていた。
私は、残業手当て欲しさだったから、てっきり同じだと思い軽く見ていたけど
もしかして人一倍責任感が強く自分にも妥協をしないから納得するまでやっていたのだろうか?
だとしたら凄いことだ。他人にも凄く厳しいから鬼課長だと周りから敬遠されがちだけど……。
あれ?それに課長の背中って……こんなに広くてたくましいんだ?
おぶられて分かる広い背中。課長がたくましいのは、見ていて何となく分かっていた。
だが、こんなにたくましいとは、思わなかった。
「あの……本当に大丈夫ですか?」
「しつこい。お前は、黙っておぶられていろ」
またもや注意をされる。しつこいって……。
そりゃあ、何度も言ったけど本当に課長は、怒りっぽい。
ムスッとするのだが、心臓がドキドキと高鳴ってうるさい。
たくましい背中とか声は、本当に高得点なんだけどな。
後は、イケメンだったら……どんなにいいか。
そんな風に思いながらも落ちないようにしがみつていた。
それからどんどんと登って行くのだがやっぱり辛そうに見える。本当に大丈夫だろうか?
無理もないけど……。
登るのにも大変なのにそれプラス私とリュックを背負っているのだ。普通なら負担が凄いはずだ。
「宮下」
「は、はい」
名前を呼ばれたので慌てて返事をする。な、何!?
ドキドキと高鳴していると立ち止まってきた。
「ほら、着いたぞ。見てみろ」