06
「あの……ありがとうございます。さっきは、すみませんでした」
私が勝手にむくれてやったのに心配をして駆け寄ってくれた。
しかも手当てまで……。
そう思うと申し訳ない気持ちになった。
「礼には、及ばん。俺にも非があるからな。
取りあえずこれでいいか、捻挫もしていないみたいだし。
しばらく痛いかもしれないが我慢しろ。歩けるか?」
私を見ながらそう聞いてくる。
ドキッと心臓が高鳴った。
「……歩けます」
動揺して慌てて立ち上がろうとする。
しかし、疲労と痛さでフラつく。あ、ヤバい!!
だが課長が支えてくれて倒れずに済んだ。
「何処が大丈夫だ!?これ以上怪我したらどうするんだ」
「……すみません」
またもや叱られてしまった。
なのにまだ心臓がドキドキと高鳴っていた。
何で……!?このドキドキは、何?
「さて、どうしたものか……」
課長は、それに気づかずにため息を吐きながら考え込んでいた。
すると向こうの方から担当スタッフの人がこちらに来た。さっき事情を話していたスタッフだ。
「すみません。連絡が取れましたが、どうなさいますか?
このまま下山する事も出来ますが?」
下山か……仕方がないわよね。
こんな状態で登れないし……。
余計に迷惑をかけてしまう。むしろ良かったのよ!
もともとやる気なんてなかったし。しかし……。
「いえ、このまま登ります!」
……はい!?