06
あぁ、退屈だわ。熱く語りだして止まらないのでチラッと不知火課長を捜してみる。あ、居た。
課長が女性に質問をしているみたいなのだが、その女性は、背筋が伸びてガチガチになっていた。
顔つきから見ても青白くなっていた。
内容まで聞こえないけど、すぐに理解する。
あれは、課長が一方的な質問ばかりで、会社の面接に来ている気分にさせられているに違いないと。
何故そう思うのかは、経験があるからだ。
新人の頃……課長が私の居る課に就任したのだが、何故だか凄い質問攻めにあった。
それは……もう面接よりも緊張してしまうほどの圧力で。
私は、この時に思った。
この人とは、関わりたくないと……。
なのに退職してまで何故会わないといけないのだろうか?
すると私と目が合った。ギクッと肩が震える。
ヤバいと思い慌てて目線を逸らした。
そうしたらピーと終了の笛が鳴った。
『次の方に移動して下さい」
あ、もう終わりなんだ……?どのみち助かったわ。
その後も次から次へと移動して話をして行く。
しかし思った通り……イケメンらしいイケメンは居なかった。まぁ当たり前よね。
母に会員にはさせられちゃったけど、これからも現れないだろうし……。
行ったふりをして行かなければいいわよね?
一度は、行った訳だし……義務は果たした。
よし、帰ろう帰ろう。
今日は、イケメン俳優・相田君が出演しているドラマの放送日だし観なくちゃあ。
私は、さっさと出口に向かおうとした。
「おい、宮下」
すると不知火課長に呼び止められてしまう。
うっ……大人しく帰らせて下さいよ!
私は、嫌々だが振り返ることにした。
「……はい。何でしょうか?」
「宮下。お前……やる気あるのか?
何だあの態度は。人にものを聞く態度じゃないだろ。
周りをキョロキョロと見るな。
落ち着きのない奴だと思われるぞ」
「は、はい。すみません」