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ザルティマイ・キャンプで滞在と取材の許可を得ると、真理は早速キャンプ内を散策した。
どんな様子なのか、まずは下見だ。
このキャンプには500人近い難民がいる。
難民キャンプとしては過去に取材してきた中では小規模な方だ。
特徴的なのは女性と子供ばかりというところで、殺されたり徴兵されたりで男手を失った者たちが身を寄せている。
停戦を迎えたおかげか、そこに住まう人達の顔は概ね明るい。
ウクィーナ共和国は早くも、自国民達の支援を始めている。
少しでも穏やかな日常を取り戻すため、仮設住宅などの建設も始まっているようだ。
そうなれば、このキャンプが解体できる日も早いかもしれない。
そんなことを取り留めもなく考えていると「アメリア!」と名を呼ばれた。
振り返るとティナがにこにこしながら近づいてくる。彼女は、ガンバレン国首都でジャーナリスト仲間に会いに行くと、いったん別れたが、ザルティマイ・キャンプに興味を示し最後まで同行させて欲しいと言ってきたのだ。
もちろん真理に否もないので、喜んでティナが来るのを待っていた。
1日遅れでやってきたティナは元気だ。ティナは戦争ジャーナリストとしての経験が浅いと言っていたが、真理から見てとても向いているように感じた。
冷静沈着で行動に隙がないのだ。大きな戦争はこれが初めてだろうが、意外にタフで動じない。
自分もタフさには自信があるが、なかなか女性で自分が認められるほどの強さを持つジャーナリストはいないので、そういう意味でもティナの存在は心強い。
とても良い出会いをしたと感じている。
「お仲間には会えた?」
「はい、会えました。無事だったので安心しました。ランディは行っちゃいましたか?」
「とっとと行っちゃったわ。彼はせっかちなの」
ランディの様子が想像できたのだろう、ティナが残念と言いながら、笑った。
運営スタッフ達と避難してきているウクィーナ共和国の女性たちに混じって、夕食の準備を手伝う。ティナは隣で人参、真理はジャガイモの皮を剥いている時だった。
ドドーン!!シュッ!!ババッー!!!!!
突然、地鳴りのような号砲と爆発音がしたのだ。調理場のテントが爆風で激しくガタガタと揺れて、みんなが悲鳴をあげる。
「なにっ?!何が起きたの?!」
慌ててテントの外に出て確認しに行くスタッフや逃げ始める難民達。
真理とティナも外に出ると、思わぬ光景に声を上げた。
この難民キャンプは100近いテントを4つのエリアに区切って配置している。
小さいとは言っても、それなりの広さはある。
西側のキャンプサイトから火の手が上がり、悲鳴をあげながら逃げ惑う難民の姿が見える。
そして・・・・・・
「どういうことっ!?」
ありえないものが見えて、真理が声をあげた。
戦車だ!
ガンバレン国の紋章が入ったそれが装備している火砲で、火を噴きテントやそこに住む人間を所構わず攻撃する。
激しい爆音と阿鼻叫喚の悲鳴、吹き飛ぶ女性や子供たち。そして降り注ぐ肉片に血の塊。
一瞬で地獄絵図と化したキャンプに、続々と戦闘車両が侵攻するのを見て、真理とティナは呆然と立ち尽くした。