恨霊
信じていた親友に片思いしていた女性を奪われた僕は絶望のあまりアパートの自室で首を吊った。
死んでも消えない怨みと未練が僕をこの世に留め、住んでいた部屋は事故物件となり、誰も借りることがなくなっていた。
久しぶりに開いたドアからあの頃より少しだけ年を取った親友が入ってきた。涙を流し謝罪しながら持参した花束と一緒によく飲んだビールを置く。
馬鹿かお前は。
このまま知らん顔してれば僕の恨みはここに留まるしかなかったものを――
僕を背中に憑け、こいつは何も知らずに家に帰った。
幼い娘を胸に抱き、にこやかに出迎える彼女はあの頃と全然変わっていなかった。
さてどんな手段で恨みを晴らそうか。
娘が僕をじっと見ている。幼い子が『視える』というのは本当なんだと思った。手を伸ばし「にーたん、にーたん」と無邪気に笑う。あの頃の彼女の笑顔によく似ていた。
霊にも涙が出るのだろうか。僕の中で何かが溶けて流れていく。
これからずっとこの子を見守っていこう、僕はそう決めた。