龍の角笛{改済}
ここはファストル城の北東に位置する山。
この山のふもとでは、龍神祭の準備が着々と進められていた。
石の祭壇の周りには草木が生い茂り、ふもとから眺める景色は絶景そのものである。
「フゥ。こんなもんかな。そういえば知ってるか。今年の龍神祭は、この国の女を生贄にしないですむらしい」
「ほぉ。それはどういう事なんだ?」
「ボンゼル様が言ってたんだが。他の世界からきた女を、生贄にするんだとさ」
「他の世界って。そんなことが、本当にあるのか?」
「さあな。だがこれで、龍神バルロス様が、今年も大人しくしてくれるなら誰でもいいんじゃないのか」
そう2人の兵士が話をしていた。
するとボンゼルが涼香を抱きかかえ、配下の者たちを引き連れ、兵士たちの側まできた。
「お前たち、準備の方はどうだ?」
「これは、ボンゼル様。準備の方はできております。あとは生贄を祭壇に捧げ、龍神バルロス様をお呼びするだけでございます」
「そうか。では、この女を祭壇に捧げるとするか」
そう言うと涼香を生贄の祭壇に寝かせた。
ボンゼルは、配下の者と兵士たちに避難をするように指示を出した。
そしてボンゼルは、全員がその場からいなくなったことを確認すると、龍の角笛を取り出し空に向け吹いた。
……キュルルルルゥゥゥーーー……
そう鳴り響くと、先程まで晴天だったはずの空が暗くなりはじめる。そして黒い雲がモクモクと広がりだした。
すると辺り一面に、
「ギャオォォォーーン!!」
と雄叫びが響き渡り、ボンゼルはその声を聞くと急ぎその場を離れた。
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そして場所は移り、ここは要が寝かされている部屋。
要は、お菓子などをあまり口にしていなかったため、大臣の予想よりもはやく目覚めた。
そして要は辺りを見渡したあと起きようとする。
だが要は、身体を縄で縛られ動くことができなかった。
(クソォッ!これじゃ動けねぇ。そういえば、涼香はどうなったんだ?)
そう思っていると扉の向こうから、見張りの兵の話し声が聞こえてきた。
「はぁ。いつまで、こんなことが続くんだろうな」
「そうだな。でも今年の龍神様の生贄は、あの異世界からきた女らしい。この国の女を生贄にしないですんだだけでも、良しとしないとな」
「そうだな」
それを聞いた要は、涼香を助けなければと思い、身体を縛り付けている縄を解こうとした。
だが縄は解けず、気持ちばかりが焦りはじめた。
(クソォッ!?こうしている間も涼香が、生贄に……。どうにかして、この縄を解かなきゃ)
そう強く思いひたすら縄を解こうとするが、やはり解けず。
(クソオオオォォォォ〜!!)
と、要は心の中で叫び無意識に身体中に力を入れていた。
すると両手が赤くなり、炎が現れ縄を燃やした。
(えっ⁉︎え〜っと。今、使ったのって魔法なのか?ってことは、この力を使えば涼香を助けることができるかも)
そう思い要は、外の兵士たちを倒し、他の兵士たちに気づかれないように変装をして、城を抜けだした。