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真理はその日から3日間、アレックスの私邸に泊まらされた。
パーティの招待があったことを理由に、アレックスに拝み倒され、押し切られ、真理もOKしてしまったのだ。
ヘンドリック・ハミルトンが主催する、ジョージ国際映画祭の打ち上げと称した、ごく個人的なパーティに、一緒に参加しようと言われたのだ。
王子の交友範囲とはいえ、人目につく社交にまだ迷いがないとは言えない。
だが、写真を撮られて、叔父に知られたことで、真理の中ではさらに覚悟ができたのかもしれない。
王子のわがままとも言える願いに、真理は拭いきれない不安や迷いに蓋をし、一緒にいることを選んだ。
甘やかしやのアレックスは、映画祭の時から、真理が困らないようにザ・グレースから下着や日常使いの洋服、部屋着、そしてパーティ用のドレスを用意してくれている。
もちろんそれ以外の細々した化粧品や雑貨も揃える気のつかいようだ。
贅沢過ぎるそれらに、愛人みたいで嫌だから、そんなことしないでと真理がいくら言っても彼はどこ吹く風で。
「好きな女性にプレゼントしてなにが悪い?」
悪い顔をしながら、真理のこめかみに口付けるのだ。
アレックスが公務に行くと、彼の私邸はとても静かになる。
自分と私邸を守る護衛が数人いるだけらしい。
あとは通いのハウスキーパーが、毎日数時間入るだけだ。
本当に彼はこの私邸には、他人を入れることを好んでいないようだった。
自分のために通いのシェフかケータリングサービスを頼もうかと心配してくれたが、真理は買い物に行ければそれで良いと断った。
この国の王子の私邸だし、他人を入れたがらないアレックスへの配慮もあったが、なによりも自分があれこれ世話されるのが好きではないからだ。
贅沢なプレゼントはやめなくても、行動を縛ることをしないのがアレックスなりの気遣いなのだろう。
彼の不在中は仕事用のパソコンを持ち込んで、WEBプログラマーとしての仕事をし、護衛は付くが買い物に出て、私邸のキッチンを借りて簡単な食事を作る。
そして夜は帰宅する彼を出迎えて、濃密な時間を過ごすのだ。
そんな生活は、今までと違いすぎるのに、不快感ではなくくすぐったさを感じるのは、恋をしているせいなのだろうか。
そう思うと、自分がどんどん変わっていくような気がして怖い・・・けど、好きの繰り返しだ。
そこまで考えて、ふぅっとため息を吐く。
考えても堂々巡りだ。
なるようにしかならない。
真理は着替えるためにクローゼット・ルームに入る。
いつの間にか、真理のためにできたスペースは、お伽話のように女性の憧れに満ちている。
もうじき、迎えの時間だ。
ヘンドリック・ハミルトンのパーティのために着替えなければ。
アレックスが、朝、指定していったカジュアルだが、洗練されたドレスを真理は手に取った。