51話〜鈍感過ぎるハクリュウ
ここは名もなき城。ハクリュウ達は中庭に近い場所まで来ていた。
そして辺りを警戒しながら近くの部屋に入って行った。
その様子を見ていたライロスは近くの物陰に隠れ少し様子を見る事にした。
するとライロスは、ハクリュウ達が入って行った部屋の扉の前にシグマがいる事に気づき、
(シグマ!?何のつもりだ!何でここに……向こうで何があったというんだ?だが、シグマの事だ何か考えがあってここに来たとも考えられるが。もう少し様子を見てみるか)
そう思いながら動きを伺う事にした。
その頃、ハクリュウ達は部屋の中で話をしていた。
「これからどうする?」
「ハクリュウ様。どうしましょうか?恐らくは中庭の近くまで来てるとは思うのですが。内部の見取り図があればいいんですが」
ハウベルトがそう言うとラシェルは少し考えたあと、
「やはり、指示どおり動いた方がいいと思いますので、この辺りで待機していた方がいいかと」
「ラシェルの言う通り。時間が来ないと何も出来ないし。少しここで休むしかないよな」
ハクリュウはそう言うと両手を上げ、ん〜と言いながら伸びをした。
すると、いきなり扉が開いてシグマが堂々と入ってきた。
ハクリュウとハウベルトとラシェルは驚き慌てて身構えた。
すると、シグマは3人の前に立ち、じーっと見渡しハウベルトをみて、
「おい!お前がハクリュウか?なるほど、なかなか骨がありそうなやつだ」
ハウベルトは首を振りハクリュウの方を指差して、
「いや人違いだ。ハクリュウ様は……」
「どうしたらハウベルトと俺が間違われるんだ?てか、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「えっ!?嘘だろう……こいつがハクリュウだと!確かに顔はいいが、そんな弱々しい身体で本当に強いのか?」
そう言われハクリュウはシグマを睨みつけながら、
「見た目だけで俺が弱いって?おい!戦いもしないで分かるのかよ‼︎」
「ほお。いい顔をするじゃねぇか!そうそう、名前を名乗っていなかったな、俺はシグマだ!そして、クロノアを俺のものにする為、ハクリュウお前を殺しに来た!」
そう言われハクリュウは驚いたように、
「へ?今なんて言った?何でクロノアの為に俺が狙われなきゃならない!?」
「それは、どういう事なんだ?シグマ。お前はいったい……」
ハウベルトはそう言うとシグマの顔をどこかで見た記憶があり考えていたが思い出して、
「あっ!思い出した。お前は、シグマ・ラクス。確か、コロシアムで大量に怪我人を出したとんでもないやつ」
「そんな人が、何故こんな所にいるのですか?」
「それはなぁ。俺は元々オルドパルス様の配下。そして、さっきまでクロノアがいる方を見張っていたが、俺は彼女に一目惚れしてなぁ。それで、俺はクロノアの為にハクリュウ!お前を殺しに来た」
「まさか!クロノアに俺を殺せって、頼まれたんじゃないよなぁ」
「ハクリュウ様。いくらクロノア様でも、流石にそこまではしないと思うんだが」
「いや、あいつならやりかねない‼︎」
ここは城の地下。まだグロウディス達とウロウロしていたクロノアは、
「はっ、くしょん、くしょん!はぁ、誰だぁ私の悪口言ってるのは、ハクリュウか?」
クロノアがそう言うとまたディアナ達とひたすら抜け道を探して歩いた。
場所は戻り。それを聞いたシグマは、
「あ〜いや。クロノアはそんな事は、流石に言ってはいないがなぁ」
「じゃ、何て言っていたんだあいつは?」
「クロノアが言っていたのは、片思いの相手がいてそれがハクリュウお前だと言っていたが」
「はぁ?あいつが俺を……フッ、それはありえねぇ」
「だが、俺にはそう言っていた。お前が好きだとな」
「もし、本当に言ったとしても、恐らくそれはお前をふる為だろうなぁ」
「ん〜なるほどなぁ。これほど鈍感で女心が分かってないやつだとは……そういう事か、だがお前がいれば、クロノアは手に入らない。悪いがやっぱり、お前には死んでもらう!」
「ちょっと、何でクロノアの為に俺が……クソォッ!仕方ないやるしかないかぁ。クロノア!あとで覚えてろよ」
そう言うとハクリュウは剣を構え、ハウベルトとラシェルも身構えた。
そしてシグマも、ハクリュウに攻撃をしかけようとしていたのだった。