48話〜エマとアリスティア
ここは名もなき城の1階付近の部屋。そこにユリナ達は隠れていた。
そして、アリスティアは警戒しながら隣の部屋が安全か確認していた。
その様子をエマが物陰から見ていた。
(あ、あれは、アリスティア様。なんて幸運なのかしら。あ〜、でも今は、敵同士なのですよね。せっかく会えたというのに)
そう思っているとアリスティアがユリナ達を誘導し隣に移ろうとしていた。
それを見てエマはアリスティア達が部屋に入ったのを確認すると近づいていった。
そしてアリスティアは部屋の中で.
「なんだか、先程から凄くいやな寒気がするのだが?」
「あら、アリスティア。もしかして、ここに、エマさんがいたりしてねぇ」
シャナは意地悪気味に言った。
「シャナ!!じょ、冗談でもエマの事は言うな!」
アリスティアは頭を抱え溜息をついた。
そして、ユリナ達はこの先どう行動したら良いかを話し合っていると、いきなり扉が開き、近くにいたクレイマルスはとっさに反応するも、既にそこにはいなかった。
そしてアリスティアの背後で、
「アリスティア様〜〜、お会いしたかったですわ〜〜」
エマはそう言いながらアリスティアに抱きついた。
アリスティアは一瞬で氷ついた。
その光景を見てクレイマルスは、
「これはいったい。どうなっているんだ?」
「あら、あら、どうしましょう。私の予感が当たってしまいましたね」
アリスティアは我にかえり、
「エ、エマ!何でお前がここにいる?」
「ふふ〜ん。
「エマ頼む!それだけはやめてくれないか。それに私は女だ」
「え〜!そんな〜……」
「そうだ、エマ。ここにお前がいるって事は、オルドパルスの指示で来たんじゃないのか?」
「ええ、そうなのですが。アリスティア様とは戦いたくないので配下の者達に戦わせて、私はアリスティア様と……」
「い、いいなエマ!その先は絶対に言うな!!言ったら……」
「クスクス。あらぁ、アリスティア様ぁ照れているのですかぁ」
「頼むからいい加減にしてくれ」
「アリスティア。どうしましょう?」
「はぁ、シャナ。戦うしかないだろう。エマは、こう見えても強いからなぁ。すんなりこの先に進ませてくれないだろうしな」
「えー戦うの〜!それなら仕方ないわねぇ。お前たち、アリスティア様以外、やっておしまい!」
「エマ!!お前なぁ……」
ユリナはその光景を呆然と見ていた。
(ん?もしかして、この緊張感がないお子様が異世界の勇者?ふふ、許せないわね。その可愛さ、それにアリスティア様と一緒にいるなんてね)
エマはそう言うと、瞬時にナイフを取り出しユリナを斬りつけようとした。
ユリナはそれに気づき瞬時に避け、持っていた短剣を投げつけた。
エマはユリナが短剣を投げて来るとは思っていなかった為、避けるも短剣の鋭い刃が頬をかすめた。
「クッ、避け切れたと思ったけど。見た目と違いなかなかやるじゃない」
「ちょ、ちょっと待って、なんで私が狙われるわけ?」
「それは簡単な事。あまりにも、お前が可愛い過ぎる。そしてアリスティア様と一緒にいるのも気にくわない。だから死んで!」
エマはユリナ目掛け鉄製のカードを投げつけた。アリスティアはそれを見てとっさに魔法を放ちカードを弾いた。
「ちょっと!なんなのよ〜。何故アリスティア様がそんな小娘を庇うのですか。私という者がありながら」
「エマ。お前なぁ……。ユリナ様、気をつけてください。エマはこう見えても、幻影のマジシャンと言われていて腕は確かだ!」
「ん?マジシャンって、確か手品師みたいな職業だよね。ハンカチをステッキに変えたり、無意味にお花をいっぱい出したり、水を勢いよく噴射したり、箱に入って剣でグサっと刺されるアレだよね?」
「あ、あのね。それは戦闘には何の関係もないし。確かに城ではそれやってかなりうけたけど……ってか、私を馬鹿にしてるわけ?」
「そっかなるほど。エマさんの手品1度でいいから見てみたいなぁ。あっ、馬鹿にしてるわけじゃないんだけどね。あはは……」
「お、お前!?よほど死にたいようね!」
エマは身構え何で攻撃するかを考えていた。
「あ〜あ。仕方ないなぁ。あの力せっかく手に入れたし。今の状態で使えるかは分からないけど。試しにやってみますか」
そしてユリナは、あの力が使えるか試してみる事にした。