第五話 おっさん忠告する
アラームで起きた
「え?まーさん。寝ていなかったのですか?」
ソファーで考え事をしていたまーさんをみて、
「大丈夫だよ。おっさんになると睡眠が浅くて・・・ね」
「はぁ・・・」
「
”難しい会話”と言っているが、駆け引きが主になってくる。
話は、ロッセルや侍女から聞いても、権力側の人間の考えであって、それをそのまま信じるほど、まーさんは子供ではない。
「え?あっ大丈夫です」
ロッセルが出ていくときに、呼び出し方法をおっさんに教えていったので、実行した。
5分後に、ロッセルと先程の侍女と同じ服装をした女性が部屋に戻ってきた。
「まーさん。よろしいのですか?」
「大丈夫だ。カードは解った。実際に使ってみれば、良いだろう。それに、ギルドでも同じ物を使っているのなら、使い方は皆が知っているのだろう?」
「はい。ギルドで詳しく教えています」
「魔法やスキルを学べる場所はないのか?」
「・・・」
「ロッセル殿?」
「通常は、学園で習うのですが・・・」
貴族の子弟や、豪商の子どもたちが通う学校で、勇者も学校で魔法やスキルを学ぶことになるだろうと、付け加えた。
「そうか、学園は避けたほうがよさそうだな。基礎や発動方法がわかれば十分だ。特に、俺や彼女は”鑑定”が使えるだけだ」
「・・・。わかりました。鑑定には詠唱が必要です。詠唱は”万物を司る女神よ。吾に真実を見せよ”です」
「(微妙に
おっさんは、
「”万物を司る女神よ。吾に真実を見せよ”」
結果は、ロッセルが言っている通りになっている。
「なぁロッセル殿。詠唱は嘘だよな?」
「え?」
驚いたのは、
「なぜ?」
「ん?」
「まーさん。なぜ、嘘だと解ったのですか?」
「そうだな。ロッセル殿。貴殿は真面目すぎる。そして、後ろの彼女は素直すぎる」
種明かしをすれば簡単だ。
おっさんも
おっさんは詠唱が嘘だとは言っていない。話の流れが嘘だと言ったのだ。
そして、
おっさんは、これらの種明かしを伝えた。おっさんを除く3名には種明かしだったのだが、おっさんにとっては種明かしでもなんでもないので、すごく恥ずかしそうにしていた。、聞いているロッセルや侍女は衝撃を受けている。
「それで、ロッセル殿。魔法は、イメージとかいうのが定番だけど、そう考えて良いのか?」
「一応、発動するための詠唱があります。殆どの魔法は、詠唱して発動させます」
「そうなのか?」
「はい。無詠唱では、魔法が安定しないというのが通説です」
「ふーん。ロッセル殿?もう少し視線の動かし方や情報の出し方を学んだほうがいいな。”嘘です”と物語っているぞ」
「・・・。嘘では、有りません」
「それなら、本当の話を教えろよ。どうせ、初代様とか言うのは、無詠唱でイメージだけで魔法をつかっていたのだろう?それらの魔法を、詠唱するようにして使っているのが、今の魔法なのだろう?そうだな。古代魔法は、魔法陣が必要になっているのではないか?」
「え?」「まーさん!」
侍女が大きく目を見開いて、まーさんを見る。
ロッセルは、気が付かれていると思っていたが、具体的に言われるとは思っていなかった。言葉が出てこないほどに驚いている。
「どうして・・・?」
ロッセルがかろうじて絞り出した言葉は、まーさんに質問する言葉だ。
まーさんは、半笑いの表情で、机の上を指で叩き始める。
「ロッセル殿。少しだけ喉が渇きませんか?」
「あっ失礼しました。何か飲み物をお持ちします」
「温かい紅茶を頼む」
まーさんは、紅茶を頼んでから、
「あっ私もまーさんと同じものをお願いします」
侍女が、頭を下げて別室に移動する。
紅茶を用意し始める。
「さて、ロッセル殿。考えた理由だが、簡単だよ。ロッセル殿が”殆どの魔法”という言葉を使った。それに、”通説”というのは、確証が得られていない場合に使う言葉だ。俺や彼女は、”鑑定”を無詠唱で発動できた。多分、それは”鑑定”という魔法の内容を理解していたからだろう。それから考えると、無詠唱でも魔法は使えるが、”物理現象”や”理由がわからない”と発動しないのだろう。初代様と呼ばれる人物は、どうやら俺たちと同じような人物だろう。最低限の教育は受けていたのだろう。そこから、無詠唱は”イメージ”や”理由”が必要になる。現状、物理法則が解っている人がいないので、無詠唱では魔法の威力が弱くなる。そして、俺たちを召喚した床には巨大な魔法陣が書かれていた。結界魔法も同じだ。今まで説明がなかったから、魔法陣を使った魔法は、古代魔法だと勝手に判断した」
出された紅茶を口に含む。
「どうだ?ロッセル殿?」
「”ブツリホウソク”はわかりませんが、初代様が提唱したのは、過程を考える方法です」
「そうか、なぁロッセル殿。いちいち指摘しないと、次の話に移らないのは面倒だと思わないか?俺と彼女に信頼して欲しいのなら、情報を小出しにするのは愚策だぞ。それに、侍女さん。王家に近い筋は、ロッセル殿じゃなくて貴女でしょ?ロッセル殿は、辺境伯側の人間でしょ?」
「え?なぜ?」
ロッセルも慌てるが、侍女の慌て方は尋常ではない。
「ふたりとも落ち着け。別に、最初と侍女が変わっているから気がついて当然だ。俺と彼女の人となりを見てから変わったのだろう?王家の人間でも俺と彼女は恨みを言わない。だから、大丈夫だ」
「え?」「まーさん?!」
ロッセルが、侍女を横に座らせる。
侍女が懐から、魔法陣を取り出して破ると、姿が変わる。侍女の姿から、姫様と言われても納得出来る姿になった。
侍女が背筋を伸ばして、おっさんと女子高校生を見る。
「改めまして。私は、イーリス・アルシェです。まーさんがおっしゃったとおり、王家に連なる者です」
「ふーん。庶子なのか?」
「はい。なので、”アルシェ”を名乗っていますが、末端の末端で、継承権もありません」
「それは、俺たちには関係がない。それで?」
「”それで”とは?」
「ロッセル殿の話は、間違いでは無いのだろう?俺たちが知りたいことを、イーリス殿が説明してくれるのか?」
「私が知っているのは、帝国の闇の部分です」