第九話
『カズトさま』『あるじさま』
ウルズに、転移門を作ってもらって・・・。
部屋に帰って来て、寝てしまったのだったな。さて、暗闇だと、時間が曖昧になるし、この身体にも良くないだろう。ダンジョン攻略に行く前に、周りを散歩してきてから赴く事にしよう。
「カイ。ライ。おはよう。ウミは?」
『ウミは、外であそ・・・警戒しに行っています』
「いいよ。遊びに行くで・・・俺たちも行こう」
『はい』『はぁーい』
洞窟を出ると、いい天気の空が広がっている。さて、ウミを探すか?
「カイ。ライ。ウミを探してくれ、俺は、裏にある川で、汗を流している」
『わかりました』『はぁーい』
カイとライで探せば大丈夫だろう。湧き水が有る場所を、昨日見つけている。その場所に移動して、上着を脱いで、水に浸す。軽く絞ってから、身体をこする。湧き水が流れ出ている場所から少し離れた場所に、横になって身体が沈むくらいの場所を作成した。
湧き水が貯まるのを待っている間に、近くにあった石を敷き詰めた竈を作成して、上で枯れ木や枯れ草を燃やす。
遅いとは思っていたが、気にしない事にした。眷属になってから、カイとウミとライとの繋がりができているのは、わかっている。その上、何かあれば、”ぼんやり”だがわかるようになっている。少しだけ興奮している感じが伝わってくるだけで、危険な感じはしない。何か、食べ物でも見つけたのかもしれない。
水がいい感じに溜まってきて、竈にした石もいい感じに熱せられている頃だろう。お湯を作ろうと思っている。上の火を、剣でどかして、石を一個一個剣で移動させる。数個は、直接水が溜まっている場所に放り込む。水温を確認しながら、石を入れていって、いい塩梅になった所で、残った石を、水路?に置いていく。これで、しばらくは、暖かい水になってくれるのだろう。
全裸になって、お湯に身体を預ける。敷いた岩がいい感じに、土を抑えてくれて、濁りも最小限に抑えてくれる。注ぎ込まれる水も温度は一定ではないが、お湯になって注がれている。
そうだよな。転生したんだよな。10歳の頃って小学生4-5年生か・・・。好きな女の子と、ゲームと、サッカーと、そんなことばかり考えていたな。好きな子にちょっかい出したり、習い事もいろいろ頑張っていたよな。そして、まだ大人は間違った事はしない。信じられると考えてた頃だな。
『・・・。あるじさま。あるじさま』
ん?あっ寝てしまったようだ。
「どうした・・・ライ?」
間違いなく、カイとウミとライだ。
カイとウミが、一回り大きくなっている。それに後ろに”居る”のはなんだ?
/***** ??? Side *****/
背の高い男性と、背は低いが腕や肩の筋肉が盛り上がっている男性が、まずそうに何かを飲んでいる。テーブルの上には、他に食べ物らしく物も持っているが、殆ど手が付けられていない。
背の低い男性が、背の高い男性に問いかける。
「おい。どうする?」
「どうするって何がだよ?」
「あぁぁ??アイツ。ダンジョンに行ったって報告しに行ったぞ?」
「なっお前、なんで止めなかった?」
「止められるかよ。それに、アイツは、お前の管轄だろう?」
「・・・そう・・・だけど・・・なんで、そんな事を?」
「お前、知らなかったのか?」
「だから、何を?」
「アイツの兄貴が、一緒に行っているって事だよ」
「・・・しらん。そんな事聞いた事もない」
「・・・・そう・・・なのか?それなら・・・」
「そうか・・・兄貴・・・か・・・無理だろうな」
「あぁ多分な」
二人は神妙な顔で頷いてから立ち上がった。
テーブルには、レベル5のスキルカードが一枚置かれていた。
宿屋兼酒場を出た二人は、街の西門に向かう。
報告を終えた仲間が次に向かうとしたら、西の街だからだ。いつでも、旅立てるように、用意していた武器と食料を持ってきた。
西門では、一人の女性が、門番ともめていた。
二人は、それを見て、頭を抱えるしかなかった。
「おい」
「今は、忙しい、後にしてくれ、このわからず屋の門番を説得しなければならない」
背の高い男性が、持っていた剣の柄で、門番に詰め寄っている女性の頭を小突く。首に腕を廻して、引きずるようにその場から離す。背の低い男性は、その間に門番と何かを話すようだ。
「少し落ち着け」
「え?あっ!」
「武器も食料も持っていなければ、通してくれるわけが無いだろう?」
「え?どうして?」
「”どうして”も無いだろう?ダンジョンに向かうのだろう?」
「・・・」
「やっぱりな。俺は、”止めておけ”と言ったはずだ。死にに行くようなものだ」
「でも・・・」
「あぁ事情は、奴から聞いた。かなり厳しいぞ?」
「うん。わかっている。駄目だとは・・・思っているけど・・・それでも!」
「あぁそうだな。その気持はわかる。俺がそうだったからな」
「・・・あっごめん」
「別にいい。それよりも、一緒に行ってやる。奴も、俺と同じ考えだ」
「え?!」
「そのかわり、俺の指示に従ってもらう。守れるのなら、武器と食料を渡してやる。どうする?」
「本当に?」
「あぁ」
女性は、一度下を向いて、自分の手を見る。
手は、剣を握った事はあるが、戦いを経験しているような手ではない。自分では、街を出れば、一日も経たない間に死んでしまうかもしれない。そんな事は、わかっている。解っているが、それでも、街を出て、ダンジョンまで行かなければならない。そう考えている。
女性は、顔を上げ、背の高い男性の目を見る。
「わかった。お願い。私を、ダンジョンに連れて行って」
門番と話しをしていた、背の低い男性が、戻ってきた
「話はついたぞ」
「そうか、こっちも話がついた」
「わかった。それじゃ行くか?」
「あぁ」
背の高い男性は、女性の背中を優しく叩いた。
「行くぞ」
「はい!」
/***** カズト・ツクモ Side *****/
カイとウミは、確実に一回り大きくなっている。興奮していたのは、何かと戦っていたのかもしれない。
// 名前:カイ
// 性別:オス
// 年齢:3
// 種族:フォレストキャット
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:---
// 固有スキル:---
// 固有スキル:---
// スキル枠:念話
// スキル枠:----
// スキル枠:----
// スキル枠:----
// スキル枠:----
// スキル枠:----
// レベル1:火種(6)・微風(1)
// レベル2:炎(4)・水(2)
// レベル3:体力強化(1)・攻撃力向上(1)・氷(2)
// レベル4:水弾(3)
// レベル5:治療(1)
// レベル6:影移動(1)
// レベル7:
// レベル8:
// レベル9:
// レベル10:
// 体力:C
// 魔力:D-
スキルカードを得ているし、体力や魔力が上がっている。
ウミも同じ様だ。ウミは、スキルカードを得ていないが、話を総合すると、カイがスキルカードを預かったようだ。
// 体力:F+
// 魔力:B-
ライは、体力も魔力も変わっていない。
”魔蟲”それが、ライの後ろに控えている者たちの総称の様だ。簡単にいうと、蜘蛛/蜂/蟻だ。
『あるじさま。飼っていいですか?』
ライが、”飼いたい”と、いい出したのだ。
皆の話を総合すると、最初蜂が、狼に襲われていた。そこに、颯爽と現れる、ウミ。助けに入るが、一進一退の攻防が続いた。均衡が崩れたのは、狼が仲間を呼び出したのだ。このままではまずいと思ったウミは、蜂を連れて逃げる事を選択した。しかし、うまく逃げられない。狼は、シャドーウルフという種族で、影を使っての移動を固有スキルで持っている。
そのときに、カイとライが助けに入る。数的には、狼のほうが有利だったが、スキルで圧倒した。カイとウミが、狼を殲滅しているときに、別の狼に襲われていた、蜘蛛と蟻をライが助け出した。蜘蛛と蟻と蜂は、カイとウミでは、意思疎通が難しい状態だったが、ライとは意思疎通ができた為に、話をして、洞窟に住みたいとの事だ。今は、数が少ないが、増えてくれば、益虫でもあるので、何かと役に立つという事だ。本人?たちも、安全に過ごせるのなら、そのほうが嬉しいという事だ。
「なぁカイ。魔蟲を飼うのは部屋があるから別にいいけど、管理はどうする?」
『はい。ライと話したのですが、カズト様の眷属にするには、意思疎通が難しいので、ライの眷属にするのが良いかと思います。幸いな事に、魔蟲は、”個にして全”という種族でして、群れの長だけを眷属にすればいいのです』
「へぇそうなると、ライに、眷属化のスキルをつければいい?これからも増えるかもしれないよな?」
『はい。そうされるのがよろしいかと思います』
「わかった。ライに、眷属化のスキルを付けるぞ」
眷属化のスキルカードを顕現させて、ライにスキルを付ける。
その後、ライが、蜘蛛と蜂と蟻を眷属にした。防衛や戦闘力は上がったと思うが、生活環境の向上にはつながらない。
ダンジョンの攻略を急いだほうがいいのか?それとも、森の探索を進めたほうがいいのか?
迷う所だが、今日は、森を探索して、食料を探す事にした。
この食料探しだが、ものすごく簡単になった。
ライの眷属になった、蜘蛛や蟻や蜂が優秀だ。群れの長は、洞窟の中に引っ込んだ。転移門を作った場所近くに、ライと蟻が通路を作って、”魔蟲の間”を作った。そこから、さらに、個別の部屋を作成した。長は、そこに蜂は蜂の巣を作るようだし、蟻は洞窟内の警備と補修と補強をしてくれる。蜘蛛は、糸の生産から重点警護をする事になったようだ。俺が訪ねる事はないだろうから、大きさは住みやすい大きさにして良いと伝えた。
種族別のスキルもある為に、種族間の意思疎通ができるので、侵入者の発見も容易になるのだと言っている。洞窟の入り口部分に、隙間を作って、魔蟲たちが自由に出入りできるような通路を作るよう。
長と洞窟内に残る以外の者たちで、近隣の森にある、果実は蜂が把握済み。植生は、蟻がある程度把握している。魔物の群れに関しては、蜘蛛が把握しているようだ。
食べられる魔物を、カイとウミとライに聞いたが、よくわからないが、答えになってしまうようだ。
群れからはぐれている魔物を数体狙ってみる事にした。
”索敵”や”探索”系のスキルを見つけていないので、魔蟲に頑張ってもらって、探してもらった。
最初に見つけたのは、イノシシだろうか?
// フォレストボア
とだけ表示された。イノシシなら食べられるだろうが、大きい。俺が知っているイノシシの5-6倍はある。ド○ファンゴと呼んでもいいかもしれない。ブ○ファンゴくらいで良かったのだけど、大きい方になってしまうようだ。
雷属性が弱点だったが、この世界のイノシシはどうなのだろう。意気込んでいたが、勝負は一瞬でついてしまった。
ライが、岩弾を、イノシシの頭部に散弾のように降り注いで、倒れた所を、俺が剣で息の根を止めた。
これで終わりだった。
『カズト様』
「どうした?カイ」
『長老に聞いた事があるのですが、血抜きというのをすると、美味しくなると人族が言っているそうです』
「そうか、血抜きをして、清流で冷やせば臭みも抜けるだろうからな。食べられるかわからないけど、やってみるか?」
『はい!』
蜘蛛に少し丈夫な糸を出してもらって、イノシシを縛る。そのまま、近くの川まで持っていって、体温を下げる。血抜きをして、イノシシが冷えるのを待つ。
待っている間、魔蟲には、果物を集めてきてもらう事にした。採取した果物は、洞窟の倉庫へ搬入してくれる。イノシシが冷えるのを待って、解体を始める事にする。もちろん、イノシシなんて解体した事は無いが、魚なら何度もやっているので、なんとかなるだろう。
結論・・・・なんとかなった。内臓は知識にあった、”動物”と違いがなかった。鑑定先生が大活躍した。食用の判断ができるようだったので、解体しながら食用なのかを判断していた。皮は、蜘蛛が欲しがったので、ボロボロになってしまった物を含めて渡した。内臓は、蟻が食べるようだ。食用にもできるようだったが、足が早そうだし調理器具もない事から、蟻に渡した。
ブロック状にした肉は、洞窟の中に運ばれて、吊るしておくことになった。予定よりも大分早いので、洞窟の改良を行う事にした。
魔蟲たちは、自分たちで住みやすいように改良すると言っていたので、基本放置する事にした。