第四十七話 レイ・エヴァ・マナベ
/*** レイ・エヴァ・マナベ Side ***/
イレーネから衝撃の告白をうけた。
それから、どうしてこうなったのかわからないが、アルから告白された。
この部屋での生活も、既に１０日に達している。
そして、昨日始めて、アルと結ばれた・・・・キスだけだが・・・それ以上はしてくれなかった。
クリスの話では、あと１０日くらいは時間がかかるという事だ。
アルは、長いと言っているが、私は短いと思う。だって、その１０日が過ぎてしまえば、アルは旅立ってしまうのだ。私も、３年間は王都で高等学校に進む事になる。
レイ・エヴァ・マナベとしてだ。
アルは、先日までは、生活が楽になる、魔法道具・・・魔道具を作っていた。私も協力した。トイレのあとで、水で洗う魔道具はすごかった。既に癖になってしまっている。クリスやイレーネにも同じものを渡した。最初は、貴方たち何作っているの？と呆れられたのだが、使ってみた所、私の言っている事が解ってくれたようだ。
そして、イレーネからは、もう少し小型化できないかと相談を受けた。持ち歩きたいようだ。アルに相談したら、丁度試作品ができたので、楽して欲しいと言われた。私が試して、問題がなかったので、次の試作機をイレーネに渡した。
イレーネがすごく喜んでいた。ハンスに抱かれたあとに使いたいのだと言っていた。
女子だけの集まりで話していると、遠慮がない。アルにそれを告げる私の気持ちになって欲しいものだ。そう、イレーネやザシャやディアナにぶつけた。返ってきた言葉は・・・。
”アルを独り占めしているのだから、そのくらいの事をしてもいいだろう”
だ。確かに、私がアルを独り占めしている。当然だ、私はアルの事が好きで、アルも私の事が好きと言ってくれた。私が必要だとも言ってくれた。
”のろけるのなら、もっと違う要望を伝える”
と、脅されてしまった。
ノロケなのか？イレーネやザシャやディアナの話を聞いている私の身にもなって欲しい。こっちは、一緒に軟禁されながら、キスまでしかされていないのだぞ？っと言えれば、どんなに幸せなのだろうか・・・言えばきっと１０倍×３の言葉が返ってくるだけだ。
皆の道具に関する要望を持って、アルの所に戻る。
アルは、ここに来てから、本当に一歩も部屋の外に出ていない。律儀に最初に言われた事を守っているのだ。
「アル。ただいま」
「おかえり」
アルの笑顔が嬉しい。
最初の事は、うまく笑えないのか、笑顔が引きつっていたが、やっと昔のような笑顔を見せてくれるようになった。魔道具を作っているのが良かったのかもしれない。でも、私だけが知っている。夜中に、うなされている事を・・・。ユリアンネ様やラウラ、カウラの名前を呼びながら、謝っている事を、お父様やお母様やロミルダさんやルグリタさんの名前を呼んでは、置いて行かないでくれと叫んで、謝っている事を・・・。
それこそ、唇が切れるのではないかと思うくらいに噛み締めている事を・・・。
何度、夜中にアルを抱きしめても、自分の無力さを感じるだけなのだ。
私に抱きついて、泣く事も一度や二度ではない。アルは、自分を責め続けている。そして、自分と戦っている。夢のなかでも、私は、そんなアルを愛した。
今なら解る。私の父が母をどうして王国に送ったのか？そして、私達との”縁”切ったのか？
帝国の教会内で粛清が行われた。ボニートの件がきっかけで有ったのは間違いないのだが、粛清のしあいだ。聞いた・・・流れてきた話なので、どこまで本当なのかわからない、でも、父が所属していた派閥は、かろうじて主流派とつながり、無事だという事だ。
でも、私達が居たらどうなっていたのか？聖女と崇め祀られた私を奪い合ったりしたのかも知れない。事実、ボニートの弟君は、聖魔法が使えるというだけで、聖人認定を受けて、祭り上げられて、暗殺された。
「どうした？」
「ううん。なんでもない。アルは何を作っていたの？」
恥ずかしそうにしているのだが、アルがなにか作っていたのは間違いない。
「ねぇ見せて？見せてくれないと、ここで下着脱ぐよ？」
変な脅し文句だが、アルにはこれが１番効くのだ。
「解った。解った。脱がなくていいから、おいで？」
腕を広げて、私を招き入れてくれる。
アルに抱きついて、ただいまのキスをする。
「エヴァ。これを」
そう言って、指輪を私にわたす。これは？
「これは？」
「あぁえぇーーとな」
/*** シンイチ・アル・マナベ Side ***/
決めた事がある。
エヴァの気持ちにも、自分の気持ちも理解できている。
ただ、エヴァを抱く事はしていない。踏ん切りが付いていないわけではない。秘密を抱えたまま、エヴァと関係を進めるのは違うと思ったからだ。そこで、昨日から、指輪を作っている。魔道具になっていて、実用的な物だ。素材は、ギルに頼んだ。クリスにも相談をするために、連絡がほしい旨の伝言を頼んだ。
クリスからは、エヴァが、女子会に出席している時に、連絡が入った。
『アル』
クリスにも、アルノルトとは呼ばないように言ってある。他の者にもだ。
『ん。クリス。悪いな』
『いえ、やっと決心されたのですね』
『なんの事かわからないが、それで、クリス？』
『えぇ貴族社会の間ではよくありますわ。私も、ユリウス様から宝石を贈られています』
『そうか、贈る宝石は何がいい？』
『”誰に”贈るのですか？』
『あんがい、いい性格しているな』
『そうでございますか？』
『エヴァだ。エヴァに、宝石を贈りたい。婚姻の約束としてだ、エヴァが受け取ってくれるかわからないけどな』
『そうでございますか？』
『あぁだから、さっさと教えろ、そのまま、ギルに発注を頼む』
『解りました、それで、エヴァの髪の色にしますか？アルの髪の色にしますか？目の色にしますか？』
『なんだ、それでいいのか？』
『えぇそうですわね。迷ったら、ダイアモンドという選択が無難な物です』
『解った、全部だ』
『え？』
『だから、全部だ。大きめのダイアモンドと小さいダイアモンドを一個ずつ、小さいダイヤと同じくらいの粒の大きさになる髪の色２色と目の色で３色だ』
『アル。それではわかりませんわ。ダイアモンドはいいとして、貴方は銀髪、エヴァは、金髪はいいとして、目の色までは知りませんわよ？』
『そうか、俺は、目が黒と青で、エヴァは緑だ』
『・・・ふぅ即答しましたね』
『あ？お前、俺を試したのか？』
『いえ、違いますわ。その色でいいのですね』
『あぁ石の種類は任せる。なるべく良い物を頼んでくれ、それから、魔道具化するから台座は、ミスリルがいい』
『手配しますが、すぐに集まるかわかりませんわ』
『解った、明日まで待つ。用意できなければ、俺が自分で探しに行く！』
『待って下さい。解りました、用意させます』
『それじゃ頼んだ』
これが昨日の事で、今朝になって食事と一緒に、魔道具の素材が持ってこられた、そして、その中に指輪の素材が紛れ込ませてあった。
やればできるのだから、最初から予防線なんて張らなければいい。予防線を張るから、余計に無理しなければならなくなる。
今日も、エヴァは女子会に出かける。
この前試作した”トイレの後で洗う魔道具”の小型化を頼まれて、それを作った物だ。何度か、エヴァに試して貰ってから、イレーネたちにも配った。そのフィードバックとして寄せられた意見を参考にして、改良を加えた物だ。
イレーネやザシャやディアナとクリスにいいたい。それじゃ避妊にならないぞと・・・。エヴァが真っ赤な顔をしながら、用途を説明して、改良を頼んだのが可愛かったから、許すとするが・・・避妊に関しても考えなきゃダメかな？これは、エヴァに聞いてみる事にする。
まずは、自分たちの事だ。
今日は指輪を作る。
エヴァが俺を抱きしめながら寝ていた時に、左手の薬指のサイズは調べた。
こちらの世界でも、婚約の時に指輪を贈る習慣はある。貴族や豪商の習慣だとは言っていた。
デザインは決めている。
リングを総ミスリルにする。そして、内側に小さなダイアモンドを中心に右側に髪の色の金と銀。左側に、黒、青、緑を配置する。そして、二人の名前を、”アルファベット”で掘る。表面には、大きめのダイアモンドを配置する。シンプルだが、これでいいだろう。
こちらの世界には、ラウンドブリリアントカットは存在していない（らしい）。カラット的には、それほど大きい物ではないが、綺麗にカットできたと思う。素人の俺でも、綺麗にカットできたのは、魔法のおかげだ。イメージを膨らめて、膨らめて、固定して発動したら綺麗にカットされた。
グレードとかわからないがかなりうまくできた。綺麗だから、これでいいとする。カットした時にできた、削りカス？も有効利用する。内側に彫り込んだ。二人の名前に、粉砕して粉状にしたダイアモンドを埋め込んでおく。贅沢な感じがするが、このくらいのわがままは許されるだろう。
エヴァが戻ってくるのは、昼前の予定だ。
イレーネやザシャやディアナは、俺たちと違ってやることが山積みだ。午前中だけ時間をもらう事にしていると話していた。
昼はこっちも戻ってきて、一緒に食事をする。
その後は、魔道具の実験に付き合ってもらう。
今日は、少しだけ・・・違う日になるだろう。
「アル。ただいま」
「おかえり」
エヴァの笑顔が眩しい。
最初の事は、緊張したり、羞恥心で恥ずかしがったりしたのだが、やっと普通に笑いかけてくれる。
ん？なにか考え事か？
イレーネ達にまた何か、恥ずかしい伝言を頼まれたのか？
「どうした？」
「ううん。なんでもない。アルは何を作っていたの？」
あっ手元を見られたのか？
違うな。午前中に、魔道具を作ると宣言していたのだ。
「ねぇ見せて？見せてくれないと、ここで下着脱ぐよ？」
変な脅し文句だな。
でも、最近のエヴァは、本当に下着を脱いでしまう事がある。
脱いで、見せようとはしないが、そのまま過ごすので気になって仕方がない。
「解った。解った。脱がなくていいから、おいで？」
大きく腕を広げる。
エヴァはすごく嬉しそうに、飛び込んでくる。しっかり抱きしめて、おかえりのキスをする。
「エヴァ。これを」
さっきまで作っていた指輪を見せる。
「これは？」
「あぁえぇーーとな」
/*** レイ・エヴァ・マナベ Side ***/
渡されたのは、指輪だ。
どう見ても指輪だ。すごくシンプルだが、指輪に間違いない。
でも、指にはめてくれない。
私の利き手は、右手なので、右手の薬指にしてくれたら、婚約指輪だと認識できるのだが、アルは、私の手のひらに指輪を置いた。
でも・・・すごく綺麗。
ダイアモンドだよね？こんなに光を反射したり、綺麗に見えるものなの？
イレーネやザシャやディアナ・・・それに、クリスが贈られた、ダイアモンドの指輪を見せてもらったが、こんなに綺麗ではなかった。アルからの贈り物だから、そう見えるのかも知れない。
「エヴァ？」
「ん？なに？」
「あっなんでもない。左手を出して？」
「左手？私の利き手は右手だよ？」
「あっ」
アルがしまったって顔をする。
「そうだね。それじゃ、エヴァ。指輪の内側を見て？」
内側？
婚約指輪で内側？なにか意味があ・・・・え？なに？なんで？
内側にも細工がされている。
それも、表のダイアモンドと同じ様にキラキラ光っている。指輪だよ？ずぅーと指に嵌めるのに、内側になんで？それに、宝石が５種類も？
金色は、私の髪の毛の金髪。銀色は、アルの髪の毛。黒と青は、アルの特徴的な目で、緑色が私の目の色。アルが、私の目の色を覚えていてくれた事がすごく嬉しい。でも、なんで、内側に？外側に作ってもいいくらいの物だと思う。
そして、なにか線のような模様が書かれている。そこに、ダイアモンドだろうか、線がキラキラ光ってすごく綺麗に、指で内側をなぞるが、デコボコが感じられない。どうやったら、こんな加工ができるのだろう。
それに、アルはこの部屋から出ていない。そういう事は、この指輪は、アルが全部作ってくれた事になる。そうして、この線にも意味がある・・・はずだ。
「アル？これ・・・こんやくゆびわ？」
少し噛んでしまった。でも、アルには通じたと思う。
アルは、頭をかいてから・・・。
「あぁエヴァ。俺と結婚してくれ、でも、その前に、話したい事がある。俺の秘密に関してだ、それを聞いてから、エヴァがそれでも俺と結婚してくれるのなら、指輪を指にはめさせてくれ」
秘密？
ユリアンネ様やラウラやカウラの事？
それとも、他のこと？
でも、そんな事関係ない。私の答えは決っている。
「わかりました」
ゆっくりと語りだすアル。
信じられない事を話し出す。ちきゅう？にほん？ぷろぐらま？アルから、わからない言葉が多いと思うから、最初は全部話しを聞いて欲しいと言われた。私の疑問点は、全部に答えるからと・・・。
アルは、一度、ちきゅうのにほんという所で、死んだで、こちらの世界で生き返った？前の生の記憶を持ったまま生まれ変わった？
アリーダ様にもお会いした事があると言われて、いろいろ納得してしまった。、エトとエリ？もしかして、エトリューン様とエリリューン様の事？大精霊様？え？嘘？でも、それなら、アルの今まで不思議に思っていたことの疑問が解消される。
話し終えた、アルを見つめてしまった
「・・・。やっぱり、気持ち悪いよな。ごめんな」
「え？あっううん。違うの、いろいろ納得できただけ」
「納得？」
「うん。女子だけで話す事は昔から合ったけど、アルがなんで、干物や燻製なんて知っていたのだろうとか、リバーシやチェスや将棋や囲碁や麻雀なんて物を考えつくのだろうとか、皆疑問に思っていたから」
「え？そうなの？」
「うん。それで、私達の結論が、”アル”だからだって事になった。実際には、ラウラやカウラとか、ライムバッハ家は歴史や伝統が有るし、共和国にも近いから、そういう所から学んでいると考えていた・・・よ」
「そうか・・・ごめん。なんか気を使わせたようだな」
「ううん。違うよ。ねぇアル。１つだけ教えて？」
「なに？」
アルが身構えるのが解る。
私も気持ちを強く持つ、今まで生きてきて、こんなに緊張した事はない
「アルは、その”ちきゅう”の”にほん”という場所に、戻れるとしたら戻ってしまうの？」
アルが少しだけびっくりしている。
「それはない。戻れる方法が見つかっても、こちらに返ってこられないのなら、戻らない。俺は、アルノルト・フォン・ライムバッハだからな」
嬉しくて、涙が出てくる。アルは、私の涙を指で拭ってから、言葉を続ける
「それに、こんなに愛おしい存在を残して戻るわけがない。この世界がイヤになったら、エヴァとあと数名と地球に移り住んでもいいかとは思うけど、おれひとりだけなら無意味だ」
え？私？数名って・・・指輪を見る・・・あっ子供？私とアルの子供の事を考えてくれている？
「それって、私との・・・」
アルがうなずく。
すごく嬉しいけど、きっとわたし、今最高にブサイクだろう。
涙が止まらないけど、顔がにやけている。それで、笑い出しそうだ。すごく・・・すごく・・・嬉しい。
「それでエヴァ？」
アルがなにか、いいたいのだろうか？
「ん？なに？」
「返事を・・・エヴァの返事を聞いていない？やっぱり、気持ち悪くて、結婚は無理なのか？」
「え？」
笑いだしてしまいそうだ。
私の中では、既に結婚の申し出を受けた時点で、答えは決まっていた。断るなんて選択肢はなかった。
「エヴァ？」
「アル。ううん。アルノルト・フォン・ライムバッハでも、シンイチ・アル・マノベでも、”マナベシンイチ”でも、総ての貴方を愛しています。一緒に居させて下さい。答えは、”はい”です。アル。私と結婚してください」
アルは、キョトンとした顔をしてから、満面の笑みを浮かべる。
「エヴァ。ありがとう。俺も愛している」
それから、アルは指輪を私の左手の薬指にはめた。
ちきゅうではこれが一般的な方法だと話してくれた。利き手だという事は知っていたが、あえて”ちきゅう式”を選んだと説明してくれた。
「ねぇアル。あの線は？」
「線？あぁ内側の奴か？」
「うん」
「あれは、地球の言葉で、アルノルト-エヴァンジェリーナと書いてある」
「へぇあの線みたいな奴が？」
「そう、アルファベットって文字を、筆記体で書いた物だけどな」
「そう？今度ちきゅうの文字を教えてよ」
「うーん。いいけど、かなり面倒だよ」
「そうなの？私覚えるの結構得意だよ」
実際に、王国と帝国は基本的な言葉は同じだが、文字が少し違っていたが、問題なく覚える事ができた。
指輪の内側にかかれていた線が文字なら、そんなに多く覚えなくても大丈夫だろう。
「うーん。指輪の内側なら、２６文字の組み合わせだけどな。単語は・・・こっちの物で置き換えればいいけど、俺の居た国”にほん”で使っている文字は種類が多いからな・・・」
「そうなの？４０種類くらいなら覚えられると思うよ。アルの言葉覚えたいし、そうしたら、二人だけの手紙とかできるよね？」
「あっそうか！でもなぁ・・・」
「どうしたの？」
「教えるのはいいけど、本当に多いぞ？」
「そうなの？どのくらい？」
アルは、ため息を付いたと思うと、少し考え出した。思い出しているのかも知れない。
「そうだな。まず基本が５０文字＋記号が二種類で、さっきのアルファベットの組み合わせで表現する物が、同じだけあって、漢字と言われる文字が、数十万文字かな。これの組み合わせ」
はぁぁぁぁ数十万文字？文字を覚えるだけで？それの組み合わせ？
なに、アルの国ってどこかの学者の国なの？
「うん。そういう感じになるよな。俺の居た国が特殊だったからな」
「・・・そうなの？」
「あぁ、エヴァがすごくすごく気に入っている、トイレの後で洗う魔道具と似たような物を発明したのも俺の国だったからな」
「え・・・えぇぇそんなに気に入って・・・無いことも無いけど・・・だってすごく・・・やっアルのエッチ！」
「エッチって、一緒に風呂入ったりするのは平気なのにか？イレーネ達から散々聞かされているのだろう？」
「え？あっうん。やだ・・・でも、そうなの？」
「あぁ俺が数字に強いのは知っているよな？」
「うん。あれもそうなの？」
「あぁ中等部程度の計算問題なら、日本に居た時なら、小学校・・・こっちでいうと幼年学校の２年か３年くらいでやるぞ」
「へ？みんな学者かなにか？」
「違う違う」
笑い話を交えながら、アルの居た場所の話を聞いた。
すごいというしかない。
「アル。この話って？」
「エヴァだけだ。俺からは、エヴァにしか話さない。もしかしたら、同郷者がこちらに居るかも知れないけど、敵なのか、味方なのか解るまでは話さない。エヴァ以外に話す時には、先にエヴァに教えるよ」
え？私だけ？ラウラやカウラは？ご家族にも秘密だったの？
「うれしい・・・私だけの秘密・・・なの？」
「そうだな。エヴァにだけ打ち明けた秘密だ。だから、奥様。一生逃さないよ。俺の秘密を知ってしまったのだからな。絶対に逃さない。一生一緒に居る。そして、俺を残して勝手に死んだりしたら、一生恨んで、一生忘れてやらない。わかったか！」
「はい。旦那様！」
アルは、私を抱きしめてから、優しくキスをしてくれた。
でも、今日もお預けだった。私も疲れていたから・・・。でも、今日は寝る時は、お互い裸で抱き合うのは許してくれた。直接アルの肌に触れられて、布団に入ると、なぜかすごく安心してしまった。
私の大好きなアルがここに居るのがわかったから・・・。
