第二十三話 密約
/*** リン=フリークス・テルメン ***/
おはようございます。
今、俺は身動きが取れない状況になってから、30分が経過している。
昨日寝る時に、二人の美少女に抱きつかれて寝た事は覚えています。そして、今、大丈夫だと勝手に判断した。その時の、自分を殴ってやりたい気持ちでいっぱいです。
昨日寝る時のマヤとミルの服装を思い出しましょう。
日本風に言えば、ワンピース上の寝間着です。それも、日本製と違って、誰でも着られるようにか、ダボッとした作りになっています。
そして、マヤに関しては解っていた事ですが、ミルもマヤと同じ人種だとは思いませんでした。
寝相が悪い。
そして、二人で昨日の夜何やら話していたようなのです。俺は、枕2つ分くらい下がった状態になっています。なにがいいたいかというと・・・・二人のそれほど大きくはないが確かに存在を主張する部分がすぐとなりにあるのです。どちらを向いても、ぶつかってしまうのは間違いない。
そして、俺の手を、二人とも、自分の足の間に挟んでいるのです。抱きまくらのようにしているのです。
手が動かせません。なんと言っても、あれだけ言ったのに、二人とも下着を付けていません。ミルはなんとなく解ります。この世界の下着は紐で縛るので、履きごこちはあまり良くありません。その上、密着感がないので、履いていると違和感があるそうです。ミルがそんな事を言っていました。
頭は動かせない。手は動かせない。身体を動かせない。
でも、頭はどんどん目覚めていく、二人から、汗と混じったいい匂いがしてくるのが最悪だ。
”うぅーん”
ミルだ。身体を動かして、慎ましい胸部を押し付けてくる。起きているのではないかと思うくらいだ。そうだ。一気に起きてしまおう。それがいい。
”あぁーん”
脱出成功。
ベッドの方を見る。二人が寝ぼけてこちらを見る。寝巻きの裾がめくれてしまっている。
「あっリン。おはよう」
ミルが起きてしまったようだ。できれば、鎮まってから起きてほしかった。
「うん。おはよう。ごめん起こしちゃったみたいだね」
「ううん。キスしてくれたら平気だよ?」
「なぜ疑問系?」
「なんででしょう?」
大きくなってはダメな所は大きいままだ。男性の生理現象だ。
ミルの綺麗な太ももが顕になっている。
「リンのエッチ!もっと見る?僕、今履いてないよ?」
落ち着こう。俺!
「いい。それよりも、今日、書類を持って行くけど、ミルも来るよな?」
「もちろん。そうだ。リン。僕の、スキルの隠蔽を戻してくれる?鑑定と隠蔽だけ隠蔽したい」
「いいけどなんで?」
「ん?今日、ミヤナック家とコンラート家が来る。もしかしたら、王家の・・・ルナの婚約者が来る」
「だろうね。ローザスだっけ?」
「そう。その時に、僕やリンのスキルを絶対に気にすると思う。それで、リンが書類を持って帰る事になったら、誰かを護衛につけると言い出す。僕がそんな事させない」
「僕もだよ。おはよう。リン。ミル。僕も一緒に行っていいよね?」
「もちろん」「当然!」
マヤにも当然聞く権利がある
ニノサの馬鹿が何をやって、僕たちに、何を残したのか。
「マヤのスキルはどうしよう?」
「僕は、今のま・・ま・・・ちょっとまってね。ミル!ちょっと相談!」
二人でベッドの上で相談を始めた。
部屋に椅子に座って、考えをまとめよう。
ミルのいうことはもっともだ。決裂した場合には、俺を襲ってでも欲しい書類かも知れない。
「リン!」
「ん?」
「こっちに来て座って!」
「え?うん。わかった」
マヤが示す場所に座る。
どうやら後ろ向きですわるのが正しいようだ。
「リン。目をつぶって!」
「え?」
後ろを振り向いてしまった。
そこには、全裸の美少女二人が立っていた。
「あっ」
「リンのエッチ」「リンのエッチ」
「ごめん。でも、なんで脱いでいるの?目をつぶったよ」
「もういいよ。こっち向いて」
「え?」
目をつぶったまま振り向く
「目を開けていいよ!」
この声は、マヤだ
「マヤもミルも服着たのだよね?」
「うん」「多分」
なんとも頼りない答え方だ。絶対に着ていない。
「じゃぁいいよ。マヤいいよね?」
「うん。しょうがないよね」
ミルが俺の手を持って、自分の胸に押し付ける。反対の手は、マヤだ。
触ってみて気がつく、微妙に、ミルの方が大きい。
「あぁぁぁ今、リン、失礼な事考えたでしょ?」
「うん。僕の方が少し大きいと思ったはず!触れば解る!」
「そんな事ない!僕の方が柔らかい。だよね。リン!」
確かに!
そんな事を考えている所じゃない。
「ミルもマヤも、なんで?」
「ん?リンが初めて触るのは、僕たちって決めたからに決っている!本当は、もっと触って欲しいけど、リンは触ってくれないだろうから、これで我慢する」
言っている意味がわからない。
でも、触っているのなら・・・。
「ミル。ステータス直すよ?」
「うん。お願い!」
そういって、自分が来ていた服を僕の頭にかぶせて、抱きついてきた正面から抱きつく格好だ。
”あぁん”
「ミルさん?」
「気にしないで、早くしないと、リンのズボンをマヤが脱がそうとしているよ」
「え?マヤ。ダメだから。そんな事したら、ミルにだけキスするよ」
マヤの手がピタッと止まる。
ミルのスキルを直す。
これで終わりだ。
ミルを引き剥がす。服をミルに返す。俺の頭にかぶせていたのは、ミルの服で間違いない。匂いを覚えている。
それから、服を着た二人に、キスをして朝ごはんを食べに行く事になった。
昼過ぎに来て欲しいと伝言がされていた。
絶対に宿屋の店主には、”昨晩がんばった”みたいな感じに見られている。訂正しても信じてくれないだろうから、無視しておく。
「リン。時間までどうするの?」
「部屋で寝ているよ。マヤは?」
「うーん。ポルタ近くに行く、商隊がないか探してみるよ」
「あぁそうだね。ミル。一緒に行ってくれない?」
「いいけど、僕よりも、それこそサリーカの方がいいと思うけど?」
「そうだな、ミル。悪いけど、マヤを連れて、サリーカに聞いてもらえるか?」
「うん。解った。リン。絶対に部屋から出ないでね」
「あっあぁもちろんだよ。寝ているから、時間になったら起こして欲しい」
「わかった。リン。それから」
「なに?」
ミルが少しだけ考え込んでいた。
「リン。今日、僕とマヤで買い物してくる。袋を別に持った方がいい。ダミーの書類も用意する」
そうか!
「あっそうだな。その方がいいな。ありがとう。ミル」
「うん。ご褒美のキス?」
「なぜ、そこで疑問系にするの?」
「なんとなく」
なぜか、笑いだしてしまった。
「ミル。マヤ。いつまでも一緒にいよう!」
「うん」「いいの?」
二人を順番に抱きしめてキスをした。
/*** アルフレッド=ローザス・フォン・トリーア Side ***/
ハーレイが面白い者を見つけてきた。
違った、ハーレイの妹の、ルアリーナ・フォン・ミヤナックが見つけてきたのだったな。どうやって見つけたのか、気になったのだが、リンザーとハーレイが会いに行くと行っているので、便乗する事にした。いつもの様に、髪の毛の色を変えて、ハーレイの従者の1人として、会談に望むことにしよう。
ニノサの息子で、サビナーニの息子・・・。どんな奴なのか見てみたい気持ちが強い。
会談場所に指定されたのは、兵士たちがよく使っている料理屋だ。
「本当に行くのですか?」
「ファンも諦めが悪いね」
「当然ですよ。髪の色を変えても、もし、貴方になにかあったら」
「それこそ・・・。だから、お前にもついてきてもらうのだよ、それに、少なくても、王宮に居るよりは安全だと、僕は思っているけどね。違うかい?ハーレイ?」
「ふぅ・・・笑えない冗談だ。確かに、王宮よりはマシだろうな」
「だろ?王弟殿下がおいでになっている今日は特にね。だから、丁度いいと思わないとね」
なんだかんだ言っても、この二人は僕に甘い。
押し切れるのは解っている。問題があるとしたら・・・
「お兄様!」
ほら来た、今日一番の難敵だ。
「なんだい。愛おしい。僕のお姫様?」
「そんな言葉でごまかされません!あの方なのですね?そうなのですね?わたしくの王子様なのですね!」
違うと何度説明しても、自分の情報網で調べてしまった。
年齢が解っているのだから、簡単だったのだろう。妹は、今日あう”リン=フリークス・テルメン”と”マヤ=フリークス・テルメン”に命を救われた。実際には、もっと複雑な事情があるが、妹はそう判断している。
自分と同い年の双子の兄妹。出身地が、アゾレム領の辺境の村ポルタ。
この情報で、二人にたどり着いた。
そして、僕とハーレイとリンザーが会いに行く事まで突き止めた。どうやってと思うが、犯人は解っている。ハーレイの奥方である。第二皇女。そこから、第三皇女である妹まで繋がるのには時間がかからなかった。
それで、俺の妹である第二皇女は、第三皇女にものすごく甘いのだ仲が悪いよりはいいのだが、良すぎるのもこういう時に困る。
「アデレード?僕の話を聞いていたのかね?」
「えぇ聞いていましたわ。お兄様と、ミヤナック様は、私に黙って、私の王子様と面会なさると!」
「誰が・・・」「お姉さまですわ!」
ハーレイを睨む。
「わかった。アデレード。でも、今日は遠慮してもらえないか?後日、会わせるように取り計らう(努力をする)」
「本当ですか?」
「あぁ本当だ。僕が今まで嘘を言った事があったかい?」
アデレードに睨まれる。
「数え切れないほどですわ」
「大丈夫。今度は本当さ」
「・・・わかりましたわ。今日は、それにコンラート様もいらっしゃいますし、ミヤナック様たちとのお話もあるのでしょうから、諦めますわ。でも、お兄様。必ず、必ず、必ず、後日お時間を頂いてくださいますね!」
「わかった、わかった。後日の時間を約束させるよ」
ふぅ・・・。1番つかれる交渉相手だ。
僕たちは、街に走っているような馬車を用意させて、乗り込んだ。
会談場所には付いて、僕が従者らしく、最初に店に入って行く、この店の娘が窓口になっている。人数が多いと伝えて、”フリークス”との会食である事を告げれば、二階に案内される手はずになっている。
ハーレイの従者として、僕とファンが付き従う。
リンザーには、聖職者が1名と聖騎士が1名付いている。
通された部屋の中には、女性が多い。9名・・・いや、10名。それに、男が、リン=フリークス・テルメンなのだろう。それにしても、コンラートの娘に、ミヤナックの娘。ほかは、わからないが、どこはかとなく似た雰囲気がある。
「今日は、ご足労頂きありがとうございます。俺が、リン=フリークス・テルメンです。貴方たちのご身分は聞いていますが、ここでは対等に話させてもらいます。もし、それが無礼に当たるのでしたら、どうぞお帰り下さい」
ハーレイもリンザーも構わないと言って、案内された椅子に座った。
リン=フリークス・テルメンは、僕を見て、少し考えてから、視線を戻した。
「フェム。頼む。それから、サリーカとイリメリも頼むな。ルナ。タシアナ。アルマール。フレット。カルーネ。一旦席を外してくれ、フェムの手伝いを頼む」
驚いた。
子供なのは、間違いないが、皆が彼の言葉に従った。フェムと呼ばれたのが、この店の娘なのだろう。サリーカは、セトラスの娘だったはずだ。イリメリはわからないが、ルナとフレットが、身分を考えれば、彼に従う必要性は皆無だ。それが不満の色を一切見せずに、対応している。
「少しだけお待ち下さい。今準備をさせます。一応、食事会の体裁を取らさせてもらいます」
体裁とはっきりと言った。
食事会が言葉だけなのは、彼も認識しているのだろう。アトラスの娘とイリメリ嬢は、羊皮紙を取り出した。ペンを持っている。何をする?
僕が、二人を凝視しているのに、彼が気がついた。
「サリーカとイリメリには、今日ここで話された事を、この場で書いてもらいます。お互いに内容を確認して、間違いなければ、片方をお互いに持って帰ろうと思います」
なっ思わず声が出そうになってしまう。たしかに、危険性はあるが有効な手段だ。この場で確認をすると言うのは、あとで話が違うではないかというのが発生しない。しかし、話し言葉でそんなに早く書けるものなのか?
リン=フリークス・テルメンと目があう。
「彼女たちは、速記ができますので、大丈夫です。速記に関しては、出来上がった物で説明します」
速記とはなんだ?
ハーコムもリンザーもファンもわからないようだ。聖職者達も同じだ。
一旦席を外した、フェムたちが戻ってきた。
手には、料理・・・なのかわからないが、持ってきている。
「どうぞ。あっそちらの従者の方もおすわりになって下さい」
リン=フリークス・テルメンは、僕を見てそう言ってきた。その後、ファンを扉の所に立たせて、コンラートに付いてきた二人には退室するようにお願いした。料理を持ってきた、者たちも部屋から出ていく。
残ったのは、僕とハーレイとリンザー。サリーカ嬢とイリメリ嬢。リン=フリークス・テルメンと、二人の女の子。1人が、妹なのだろう。もう1人は、ファンに剣を預けて、扉の前に立つ。
完全に、彼は僕を見ている。
「どうしてわかった?」
「ローザス!」「アルフレッド様!」
「いい。彼は、僕が何者か正確に判断しているよ。だろう?」
「アルフレッド=ローザス・フォン・トリーア」
「へぇどこで解った?」
「はじめから・・・では、納得しませんよね?」
「それでもいいが、僕の態度は完璧だったはずだ」
「そうですね。貴方は完璧です。しかし、そちらのドアの所に立っている方は、立場的に守るべき、ハーコムレイ・フォン・ミヤナックよりも、貴方を守る事に集中されていました。実際に、ミル・・・あぁ扉の所の彼女ですが、貴方たちが入ってきた時に、剣に手をそえたら、貴方とミルの間に身体を滑り込ませました。貴方の従者なら満点の動きですよね」
へぇよく見ている。それだけでは無いだろうけど、今は、それで納得しておこう。
「それで?」
「それで?」
「君は、どうするのかな?」
「何も変えませんよ。俺は、俺ですからね。貴方や、ルナの事を大事に思っている御仁や、密偵を連れてきている教会関係者に睨まれたら、この国を出ていくだけですからね」
ん?
密偵?だれの事を言っている?
「ちょっとまってくれ、密偵とは?」
「え?お気づきにならなかったのですか?右側にいらっしゃった方は、僕たちなのか、貴方たちなのかはわかりませんが、探りを入れてきた者ですよ?」
「は?なぜ?」
リンザーが慌てている。当然だろう。これから、交渉しようとする場で、密偵を連れてきたと疑われているのだからな。
「まず、足運びが戦闘慣れしていました。最初、聖職者の格好をしているけど、聖騎士の方か、マルクトの方だと思ったのですが、守るべき貴方を気にされるよりも、俺の話た速記や、マヤが持っている暗器を気にされていました」
「しかし、それだけでは、疑いはかけられても、密偵である証拠は無いであろう」
「そうですね。先程の中に、鑑定スキルを使える者が居ましてね、彼の真命を確認させてもらった所”ボルダボ”という名が刻まれていました。俺は知りませんが、ステータスを偽装する方法でもあるのですかね?うまく、潜り込めたものですね」
「ファン!」
「はっ」
「あぁ大丈夫ですよ。逃げようとしたので、捕らえています。帰る時に、連れて帰ってから調べて下さい。さて、本題に入りましょうか?」
ダメだ、完全に舐めていた。
パシリカをうけたばかりの子供だと思っていたから、こちらは彼に関する情報をほとんど上辺だけのものしか持っていない。これなら、アデレードを連れてくるべきだったのかも知れない。完全に僕のミスだ。
彼は、ニノサが集めたという書類の一部を提示した。
それを見た時に、背筋に、冷たい者が流れた。これは、王国の半分を吹き飛ばすだけの威力がある情報だ。宰相派だけでなく、こちらの派閥の人間も・・・。
そして、サビナーニ=テルメン・フォン・トリーアの20年前の真実までたどり着いている。リン=フリークス・テルメンはこの書類を読んだのだろう。彼の態度から、そう考える事ができる。
これはもう交渉ではない。僕たちが、ニノサ・・・リン=フリークス・テルメンに全面的に従うしかなくなってしまう状況だ。
数字の方も、ものすごく早く説明される。
正直、僕がギリギリついていける。ポルタ村の教育は・・・違うな、彼が特別なのだろうか?それも違うように思える。アトラスの娘は商人だから数字には強いだろう。イリメリ嬢も、平然としている上に、時折、リン=フリークス・テルメンのミスを指摘している。どこかの貴族で囲われていなければ、僕たちの陣営に欲しい。
「さて、交渉に入りましょうか?この書類の意味は解っていただけると思います。父と母と、協力してくれた・・・人たちの命の値段です。いくら付けますか?」
沈黙が流れるだけだ。
”命の値段”と言ってのけた。確かに、命の値段だ。これからの王国を導くためにも必要になってくる。
「そうですね。いきなり値段をつけろと言われても、困ってしまうと思います。ですので、いくつかの条件を飲んでいただければ、書類をお渡しいたします」
そう切り出したリン=フリークス・テルメンが提示してきた条件は次の3点+1だ。
・フェムとミトナルたちが行う、”冒険者ギルド”に、ミヤナック家とローザス殿下が全面的に協力する事
・父ニノサと母サビニを、探し出して、ニノサをリン=フリークス・テルメンの代わり殴ってから連れ戻す。もし、殴れない状況になっている時は、殴れない状況を作った者を調べ上げる事
・リン=フリークス・テルメンとマヤ=フリークス・テルメンとミトナル=セラミレラ・アカマースのスキルやジョブに関して詮索しない、同時に、行動の自由を保証する事
この3つの条件を飲めるのなら、
・書類の半分を渡す。残りの半分は、扉の所に立っている、ミトナル=セラミレラ・アカマースが持つ
・残りの半分の値段を、渡した半分から割り出す。リン=フリークス・テルメンは、その金額で残り半分の書類を渡す
ん?上3つの条件もそれほど悪いものではない。
ハーレイから聞いている、ルナ嬢が絡むと言っていた、冒険者ギルドは、僕たちに取ってもメリットがある。その上、ニノサとサビニ関しては、こtらでも調査をしている。これも、問題はない。
最後の3+1に関しても、大きな問題にはならない。ハーレイもリンザーも安堵の表情を浮かべている。
「リン=フリークス・テルメン殿」「リンでいいですよ。ローザス殿下」
「そうか、それなら、リンと呼ばせてもらう。正式な場ではダメかもしれないけど、ここでなら、僕の事もローザスと呼んでくれ」
「わかった、それで、ローザスなんだ?」
いいね、その思いっきりの良さは好きになりそうだよ。
「あっうん。君の提示した条件は、大丈夫だと思う。受ける前提で話をするが、書類の値段を僕たちが決めていいように思えるがそれで、君はいいのか?」
「もとより、そのつもりですよ。だから、命の値段だと言ったのです」
「え?」「は?」
僕だけではなく、ハーレイも声に出して驚いている。
「貴方たち、支配階級の人たち・・・特に、青い血が流れる人たちに取って、臣民の命の価値がどの程度か知りたいのです。賤貨一枚と言われても、それで納得します。この書類は、この王国の未来を作る上で必要な土台だと思ってます。臣民が土台ではなく、使い捨ての道具だとお思いになるのなら、賤貨一枚でも高いでしょう。ローザス殿下。貴方・・・いえ、あなた方が付ける、臣民の命の値段・・・楽しみにしていますよ」
やられた・・・。
これが、今日の会談の僕の感想だ