25話〜これからの事{改}
ブラックレギオンの革命派のアジトでは、これからの事を話していた。
「……さっきも話したと思うが。俺は、各地域を歩き色々と見聞きしてきた。その1つが、さっきも話した奴隷の事だ」
グロウディスは腕を組み、その場にいる者たちを見渡すと、
「もう1つが言い伝えなんだが、思っていた以上に他にも色々とあった」
「一般に知られている、言い伝えとは別にもあるという事なのか?」
ハクリュウが聞くとグロウディスは頷き、
「ああ、思っていた以上にあった事に驚いたぐらいだ」
グロウディスは一呼吸おき、
「ただ、その中に信じられないような言い伝えが存在していた。やはり、遥か辺境の地にある、名もない村で聞いた話はこうだ 」
“ 遥か昔の事。ある若者が狩りをする為、茂みを歩いていた。すると、茂みの奥で光る物をみつけ、それをよく見ると水晶の玉だった。
若者は、その水晶を村に持ち帰り村長に、それが何なのかと聞いたが村長にも分からなかった。
しかし、村の中で最も魔力が優れていた女性が、あまりにもその水晶が綺麗だった為、触れてみたくなった。
その女性が右手で触れると水晶は何かを映し出した。そうこれから遠くない未来に起こる出来事を映していたのだ。
その女性はそれを見て皆にこう告げた。
『この水晶で、私は大変なものを見てしまいました。それは、この世界の危機。そして、魔神なのか魔王なのかは分かりません。
ですがそれが現れ、この世界に恐怖をもたらす。しかし水晶は、異世界から勇者を召喚すればそれを防げると言っていました』
と言うと、村の者たちは驚いた。そして、村長は何かを思い付いたように、今から異世界の勇者を召喚すると言い出した。
だが村長は、この時ある事を考えていた。勇者が召喚できのであれば、異世界から魔王も召喚できるのではと、そして村長は水晶に手を翳してみた。
すると水晶は光り出し、村長にその方法を教えた……”
「…… と、この後は何となく分かるとは思うが……ここまで、この話を聞いてどう思った?」
「それって、魔王が異世界から召喚できるかもしれないという事なのか!?」
「ハクリュウ。確かにそうなるな。そして、その方法はかなり複雑らしい」
条件としては、異世界から最初に3人召喚する事。そして首都である国々に暗雲をもたらし、黒い霧で覆い尽くす事。
その後、異世界から魔王の器になる異世界の者を自分の血を持って召喚する事。
と話すとグロウディスはハクリュウを見て、
「そして、召喚後は、ある決められた土地にて処女を生贄にし魔王を呼び覚まし、その器になる者に……」
その話を聞きクロノアは青ざめ、
「ちょっと待って。それって、何かすごく嫌な予感しかしないんですけど……」
シャナは不安な顔になり、
「私も、ノエル様が心配になって来たのですが?」
グロウディスは更に話を続けた。
「この話と、今の状況が似てる部分があるのは確かだ!それと、勇者の召喚についてのことなんだが。異世界の勇者は3人揃って初めて力が解放される」
「俺たちの力が解放される?」
「ああ、ハクリュウそうらしい。ある場所で3人が揃いある事をしなければならないらしいが」
「それってどんな力なの?」
「クロノア。それが、どういう力なのかは、その儀式をしなければ分からないらしい。それに、そのある場所とある事が何なのか、まだ分からんのだ」
「では、もし仮にノエル様が、その生贄になってしまわれた場合。クロノア様も、ハクリュウ様も、勇者としての力が出せなくなるという事か」
アリスティアがそう言うとグロウディスは頷き考え込んだ。
すると、クレイマルスはその話を聞き、
「おいおい!それなら、ここでこんな事してる暇ないんじゃないのか?こうしてる間にも、あの愛らしいノエルさんが……」
拳を握りしめ遥か遠くを見つめながら、
「……魔の手にかかろうとしているかもしれないと言うのに!」
「クレイマルスさんって。ま、まさかだけど……ノエルが好きなんですか?」
ハクリュウがそう言うとクレイマルスは堂々と、
「ああ、ノエルさんの事を将来、俺の奥さんにと望んでいる」
クレイマルスがそう言うと、ハクリュウとクロノアは溜息をついた。
そしてクロノアが呆れた顔で、
「クレイマルスさん。ノエルを奥さんにすると、維持費がいくらあっても足りなくなると思いますよ」
「俺は、最愛の人が喜ぶのであるなら、どんな苦労もしてみせる!」
「クレイマルス……ノエル様が何と言うか、多分あの時の反応見る限りアウトだと思うのだがな」
「構わないさ!何度フラれようが、俺は何回でもアタックするつもりだ!」
クレイマルスがそう言うと、皆はそれを見て呆れ果て溜息をついた。
そしてこの事に関しては、疲れるので触れない方がいいだろうと判断し話題を変えた。
「今の話を聞いていて、いくつか気になる事がある」
そう言いハクリュウは一点を見つめ考えながら、
「まずは、その水晶は本当に存在するのか。もしあるとして何処にあるのか。もし異世界から魔王の器になる存在が召喚されていたとして、それが誰なのかだ」
「ハクリュウの言う通り、私も色々と考えて見たんだけどね」
クロノアはそう言い周りを見まわし、
「私たち3人ともに知ってる存在で、あっちの世界では1番を競うぐらいの実力。そして今度も異世界から1人、召喚されているかもしれないという事……」
「クロノア。そうなると、もしかしたら魔王の器になる者って、俺たちと面識がある奴かもしれないって事か?」
「それは、あり得るとは思うけど?ただ、それが誰なのかなのよね?」
「クロノア……俺たちと面識があって、俺たちと同等の立場か、それ以上の存在……」
ハクリュウとクロノアは1人のある人物を思い出した。
「その顔は、ハクリュウもあの人の事を思い浮かべたのかな?」
ハクリュウは頷き、
「だけど、まさかな。……あの人は確かに強いし統率力も優れていて頭も切れた」
そう言いながらハクリュウはある人物の事を思い浮かべていた。
「ただあの人は、とっさの出来事には対応しきれなかったけどな。……いや、そういう事ではなく。でも、1年まえに引退してるしな……」
「でも私たちに匹敵する人って、他にいるのかな?」
「確かに、思いあたらないが。しかし、戻って来たって言う噂も聞いていなかったしな……」
「今の話を聞いていて思ったのだが。現在、召喚された者たちが知り合いであるなら、もう1人も知り合いの可能性は大いにある」
そう言うとグロウディスは、ハクリュウとクロノアの順に見ると、
「いま思いあたった者の事を詳しく聞かせてくれないか?」
「何から話せばいいかな。俺とクロノアが、思いあたった人は1年まえまでは、あるギルドのマスターだった。それも最強と言われたギルドの……」
「そうだね。1年まえまでは、私たちはその最強ギルドにいたんだけど。あの人は、どんな癖のある仲間でも、どんな奴でも平等に扱ってた」
グロウディスは考えながら、
「なるほどな。そうなると、もしその者が召喚されていたとしたら厄介かもしれんな。そして魔王になる器としてとなると……」
「ええ、あの人はかなりのくせ者なので、かなり厄介です!」
ハクリュウがそう言うとクロノアは何か思い出したように、
「あっ!そういえば、あの人にも苦手な人がいたよね」
「あっ、そうか!確かに、あいつには逆らえない」
「その者とは、この世界に来ているのか?」
グロウディスに聞かれクロノアは頷き、
「ええ、来てます。多分、もし大臣に捕まっているなら……」
「そ、それってノエル様なのか?」
アリスティアがそう言うと、
「召喚されたのがあの人なら、間違いなくノエルには逆らえない。それにノエルを傷つける事はないと思う」
「それに、もしノエルがそんな状況になってたら……あ〜!?そっか!もしかして……」
そう言うとハクリュウにもクロノアが言おうとしてる事が分かり、
「確かにそれならあり得る。前にノエルから聞いた話だと。あの人は家を出た後もノエルがうざくなるぐらいスマホのSNSに連絡して来たらしい」
少し間をおくと、
「んで、放っておいたたら、ノエルの事が心配になり、大学を休んでまで電車で家にきたって言ってた。今回も連絡がつかなくて心配で見に来たとすれば……」
ハクリュウがそう言うと不思議そうにクレイマルスが、
「それはどういう事なんだ?ノエルさんと、その者は何か関係があるのか?も、もしかして、恋人なのか!?」
「あっ、それはないない。って、言うかね。あの人とノエルは兄妹なんだよね。ただ、話だと引退する時に1人でやって行くために離れたらしいけどね」
シャナはその話を聞き、
「ノエル様に、お兄様がいらしゃったのですね」
「そうなると、これからどうするかだよな」
「ハクリュウそうだな。このままこうして話をしていても埒があかない。とにかく、そのノエルと大臣を、そしてその水晶のある場所を探さなくてはな」
グロウディスがそう言うと、シャナは何かを思い出したように、
「……あっ、そういえば!確か何年か前に、大臣が何処からか分かりませんが、城の自室に水晶らしき物を持ち込んでいたのを思い出しました」
「そ、それは本当か?って、なぜ今頃……」
「アリスティア。そう言われても、その時はそれほど大事な物とも思わなかったので」
……そしてハクリュウ達は、何班かに別れて探すことにし、とりあえずその場は解散となった。