バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

*******

 俺の名はボブ・ボブソン、ダークマターのボブ。粋でイナセなニューヨーカーだ。
 隣にいるのは相棒のアルフレッド・マクドナルド、ラシュモアのレッド。
 今、俺達は所属しているアメフトチームの遠征で、日本の東京に来ている。
 チームメイトの大半が慣れない土地での体調コントロールのため、本国でも食べなれたハンバーガーでランチを済ませる中、俺は敢えてこの「銀座」にやってきた。

 何故か? 決まってる。
 日本でアメフトをやるなら、日本の気候に合わせた方が強くなれる。
 そのためには、日本の料理を食べた方が良い。
 そして、銀座では最高の日本食が食えるという寸法だ。
 今、銀座には何とかいう化け物が出るという噂もあるが、だからこそ店も空いているというものだ。俺達は適当に目に付いた、オリエンタルな外装の店に入った。

「ヘイ店主、ここは何の店だ?」
「へい、寿司屋でごぜぇやす」

 適当に入った店は、寿司の店だったらしい。
 カウンターに据え付けられたガラスケースには、魚の切り身が並んでいた。
 なるほどな。俺は注文を決めた。

「ハンバーガーを4つ、ポテトをLサイズで2つ、それにコーラも2つだ」

 店主は一瞬目を眇めた後、「へい」と一言、ポテトを揚げ始めた。

「ボブの兄貴」
「何だレッド」
「ここは寿司屋でがしょ? 何で寿司を頼まないんでガス?」
「寿司屋だからって寿司しか頼まないのでは芸がないぜ、レッド」

 曰く、寿司屋の実力は、卵焼きを食えば判るという。だが、俺達は卵なんてフライドエッグしか食ったことがないから、味の違いがわからん。
 その点、ハンバーガーとポテトなら、世界一の評論家さ。
 俺は間抜けなレッドに説明してやった。

「ハンバーガーとポテトを食えば、その店のレベルが判るのさ」
「へへえ! さっすが兄貴でガス!」

 そこへ、ポテトの揚がる軽快なジングル。
 細切りのポテトを網でサッと掬った店主は、流れるような手付きでバンズとパティ、それに幾らかの野菜を、ハンバーガーに組み立てる。

 見事だ。

「へい、お待ち」

 俺とレッドの前に同時に並べられたハンバーガーは、バンズが黄金に光輝いているように見えた。
 いや、気のせいじゃない。

「これは、金箔か?」
「へい、左様で。見た所、お客さん型は何かスポーツをやられているご様子」
「それと金箔に何の関係があるんでガス?」
「金箔は体内電気をよく通す性質があり、電池のパワーをむだなくモーターに伝え、振動に強いのも特徴。プロスポーツ選手の走りをいっそう高めます」
「なるほどな。だが、味はどうかな?」

 俺はそう言って、ポテトを摘まんだ。
 ハンバーガーの味を確かめるのに、ハンバーガーを食べるのは二流だ。一流はまず、ポテトを食べることで、その店のハンバーガーの味を想像する。

「ふむ……これは、なかなか」
「うめぇでガス! うめぇでガス!」

 ハンバーガーを貪るレッドを横目に、俺は一本ずつポテトを進める。
 本国でもこのレベルのフライドポテトは滅多に食えない。これなら、ハンバーガーの方も期待できる。
 俺は満を持して、コーラに口を付けた。

「ゴクリ……ほほう、良い材料を使っているな」
「へい、コカ・コーラ ボトラーズジャパン社から仕入れた最高級品で」
「この甘味、酸味、舌に弾ける辛味……本国で飲むのと同等、いや、温度管理や器の分を含めれば、それ以上の味わいだ」
「うめぇでガス! うめぇでガス!」

 コーラを飲み干し、ハンバーガー1つとポテト少しで満腹になった俺は、残りをレッドに食わせてやった。
 料理が片付いたら、俺達は金を払って店を出た。

「おい、何してるんだアンタら!」

 と、機嫌良く歩く俺達を呼び止める者がいた。日本の警官だ。

「今、銀座一帯は化け物が出るから通行禁止だぞ!」
「ヘイ、警官。その化け物ってのは、どっちにいるんだ?」
「あっちの方だ! 絶対に近付くなよ!」
「ありがとよ」

 警官と別れた後、俺達は警官が絶対に近付くなと言った方向へ進む。
 そして、誰にも会わない内に、チームの宿泊するホテルに辿り着いた。 

 翌日、試合会場に付いた時に聞かされた。
 相手チームは昨日の夕方、宿泊施設が化け物に襲われて、全滅したという話だ。


-----------------------------------------
参考:
・『ポケットモンスターSPECIAL』(1997/04~)
 日下秀憲/真斗/山本サトシ 著、小学館
・『GP.360 MSシャーシ ゴールドターミナル: ミニ四駆|TAMIYA SHOP ONLINE -タミヤ公式オンラインストア-』(2020/08時点)
 https://tamiyashop.jp/shop/g/g15360/

しおり