3話〜新たな旅の仲間《後編》【挿絵】
ハクリュウは、どうしたらいいのかと考えていた。
「ホント、泣きたくなるよ。まぁ俺も、あの女に騙されたのが悪いんだから仕方ねぇ」
そう言い男は頭を抱える。
「あの女に言い寄られ……クッ、まさか泥棒だったとはな」
それを聞きハクリュウは、申し訳ない気持ちになりながら男の縄を解いた。
「ごめんなさい。まさか、そんなことをするようにはみえなかったので」
「仕方ねぇ。お前だって、あの女に騙されて俺を捕まえたんだろう?」
「ああ、そうだな。悔しいくらい思いっきり、騙されたぁぁー!!」
とハクリュウは大声で叫んだ。
その後ハクリュウは、シエルと男をみる。
(この状況どうする。シエルは俺をみて何か言いたそうだし。この人は俺を睨んでるし……っていうか、なんで俺が……)
ハクリュウは空を見上げて、左手で頭を搔きむしりながら考えた。
すると男が立ちあがり、パンパンっと両膝とお尻の汚れを落としている。
「ふぅ〜、俺は一文無しになるし。これじゃな〜」
そう言い男は、パンと両手を叩き何かを思いついたようだ。そして、ハクリュウとシエルに話しかける。
「んー……俺が金を取り返せなかったのも、お前たちのせいでもある訳だ。なら、その責任をとってもらわねぇとな!」
少し意地悪そうな顔つきで男はそう言った。
それを聞いたシエルは、いつものクールな感じで男をみつめながら口を開く。
「先程から、色々とお話を聞いていましたが。騙されたハクリュウ様が、確かに悪いかもしれません」
そう言いシエルは、ハクリュウをみたあと男へと視線を向ける。
「ですが、誘惑され騙されたのは貴方ですよね。そうなると、ハクリュウ様よりも貴方の方が悪いのではないのでしょうか?」
(ちょ、ちょっとこれって逆効果なんじゃ無いのか? この手の相手って……)
そう思いハクリュウは、どうしようかと戸惑った。
「言われてみれば、確かにそうだな。さて、そうなると……これからどうするかだ」
そう言うと男は考え始める。その後、ふと何かを思いつきハクリュウをみた。
「ん〜お前、結構いい物を装備してるじゃねぇか。それに、このねぇちゃんも……なかなか強そうだし。何か訳ありの旅なのか?」
男は不思議に思い二人をみる。
それを聞いたシエルは、慌てて話題を変えた。
「ハクリュウ様。急がなければ日が暮れてしまいますので、そろそろ行きましょう」
深刻そうな顔つきでシエルに言われたので、ハクリュウは空を見上げてみる。
「確かに……そろそろこの森を抜けないと、まずそうだな」
それを聞き男は、腕を組みながら考えたあと口を開いた。
「うむ、なるほどなるほど……人様には言えないような旅な訳か」
ニヤニヤしながら男は、勝手に頷き何かを納得している。
何を思ったのか男は、二人に歩み寄る。そして、ポンッと二人の肩を叩いた。
「護衛が必要じゃねぇか? 特に追われる身なら!」
「あっ、えっと……。別に追われてるわけじゃないんだけど。……っていうか、なんでそんな話しになるんですか?」
「まぁ、何にしろ俺は一文無しだ。そして金が欲しいんだから、お前らがなんだって構わねぇ。目的地までの護衛で構わねぇから、とりあえず雇え!」
男はそう言い力強い笑みを浮かべる。
それを聞きシエルは、男をみてからハクリュウの方に顔を向けた。
「ハクリュウ様どうしましょう? 多分、来るなと言ってもついてくるかと思います」
「ん〜、そうだなぁ」
「お金のことは問題ありません。この前のこともありますし。一応、護衛は一人でも多い方が助かるのも事実です」
ハクリュウは、目を閉じ考え始める。
(んー、確かにこの前はアリスティアに襲われた。だけど、護衛をつけるほど……ここの魔獣が強いとは思えない。
でも、シエルは何か知っている。だが、そのことについて教えてくれないんだよなぁ。……この世界とこの国で、今何が起こっているのか。
ん〜、今は状況がみえないし……シエルの判断に任せるしかないよな)
ハクリュウはそう考えたあと、溜息をつきシエルをみた。
「俺は、今の状況が分からない。だから、判断は俺ではなく……悪いけどシエルがして欲しいんだ」
ハクリュウにそう言われシエルは頷く。
「分かりました。それでは、ハクリュウ様が言われた通りに致します」
そう言うとシエルは、男の方に顔を向ける。
「貴方の腕が、どの程度……強いのかは分かりません。ですが、いないよりはマシと思いますので雇うことにします」
それを聞いて男は両手を胸ぐらいの位置で、グーにしヨシッと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「ふぅ〜、ありがてー……これで食いぶちに困ることもなくなった!」
すると男は、何か思い出した様に話し始める。
「あ〜、そうだ! 自己紹介を忘れてたな。俺はグロウディスってんだ。歳は三十一、それと前まで、城の騎士団で働いてた……これでもな!」
【挿絵:もけもけこけこ様】
それを聞いたシエルは、顔色が変わり下を向いていた。
だが二人は、それに気づいていない。
そして三人は、その場を離れ城へと向かった。