第三話 糾弾
晴海は、カップを持ち上げて飲もうとして止める。
「そう言えば、先代の事件の時に、お前たちはどこに居た?」
晴海の問いかけに答えられる者は居ない。
それぞれに理由があるのだが、言い訳になってしまう。もう一つ、各家が何をしていたのか明確に出来ない理由があるのだ。
「お館様」
「
晴海だけではなく、夕花を除く者の視線が、城井
それらの事情もあり、
自分のためにもっと大きな権力を得る。そのために、この場に来ているのだ。
他の家が口を噤んでいる事情はわからないが、自分ならうまくやれる。
城井を・・・。六条を大きく出来るのは自分だと思っている。
「はい。私も、当主も、先代のお館様の事件が有った時に」「やめろ」
城井家の当主である
「
「はっ。お館様!」
雄弁に語る姿は、どこかの舞台俳優のようだ。
「
最後には立ち上がって、身振り手振りで自分たちが以下に大変な状態だったのを語った、
晴海に認められたいのだ。
しかし、晴海は、
「なぜ?」
「ん?なぜ?それを、確認する為に、私は、城井家当主の
他の家の者たちも成り行きを見守っていく。夏菜と秋菜の二人はいつの間にか、晴海と夕花の後ろから出口の前に移動している。忠義と礼登が夏菜と秋菜が立っていた場所に立っている。懐に手を入れている事から、懐に忍ばせている
夏菜と秋菜も同じように、メイド服に隠している武器をいつでも取り出せる状態になっている。
4人の視線は、合屋家当主の
「もう一度聞く、
晴海は、
時間だけが流れていく。
「汗を拭け、
「
「・・・。はい」
「やっと答えたか、まぁいい。それを、お前たちが、取り押さえたのだな」
「はい。間違いありません」
「
「はい。妻から連絡を貰って、すぐに六条家に連絡を入れて、欠席の旨をお伝えして駿河に向かいました」
話初めて気持ちが落ち着いたのか、
「忠義!」
「はい。欠席の連絡を、城井家よりいただきました」
忠義が追認したので、
「そうか、それで駿河の大学で、昼過ぎまで捕物をしていたのだな?」
「はい。お館様。先代の訃報を聞き、駆けつけるにも、時間も距離もあり・・・。もうしわけございません」
「駆けつけなかったのは、他の家も同じだ。気にするな」
合屋を除く、他の家は全員が頭を下げる。
「夏菜。秋菜。六条の家から持ってきたお茶があるだろう?あの日の前に”文月”から届けられたお茶だ。入れてくれ。どうやら、皆は駿河のお茶が好みではないようだ」
「はっ」「かしこまりました」
夏菜と秋菜がお茶をいれる音だけが、室内に響く。
新しいカップが用意されて、夏菜が冷えてしまったお茶が入ったカップを下げる。秋菜が新しいカップを置いて、お茶を注ぎ入れる。
皆の前に新しいお茶が配り終えた。
「そう言えば、文月が持ってきたお茶は、狭山茶だったな」
夏菜と秋菜が袋を確認して、生産地を確認する。
「うーん。いい匂いだな。合屋には地元の味だろう?」
「はい。お館様」
皆がカップを持ち上げる。
「あぁ色をよく見てくれよ。私も、あの日は、お茶の色もおかしかった」
「え?」
誰が疑問の声を上げたのかわからない。
晴海は話を続ける。
「朝食後に、先代に呼び出された。会の説明をされた。そのときに、メイドが持ってきたお茶を飲んだ。離れに戻って、体が痺れて、忠義を呼んでいなければ、私は生きては居なかっただろうな」
”バーン”
机を叩いたのは、新見だ。
「合屋!貴様か!」
「お館様。儂たちは・・・。確かに、狭山は合屋家がまとめている。しかし・・・。文月にお茶を届けさせたりしない!」
夏菜が新見の後ろに立ち、秋菜が合屋の後ろに立つ。
「新見様」「合屋様」
「
「お館様」
「しかし、
皆の視線が
状況証拠が揃った。あとは、御庭番からの連絡を待つだけだ。
「
「違う。僕は、呼び出されただけ・・・。です。本当です」
「六条の家の近くに居たのは認めるのだな」
「・・・。はい。あの日の朝、”いつものところ”に来いと・・・」
「それで?」
「お館様。私は・・・」
「
「はっ」
威圧するように立ち上がった。
「どうした?」
「はい。昼まで待ちましたが・・・。来なかったので、帰りました」
「誰と何の目的だったのだ?」
「・・・」
「
「お館様。もうしわけありません。言えません」
「私の命令でもか?」
「・・・。はい」
頭を持ち上げて、晴海をしっかりと見る。声には恐れが含まれているが、しっかりとした声で自分の意思を晴海に伝えた。
「合屋が、六条に背いたと考えるぞ?お前が店に居たかどうかは考慮しないし調べない。お前が六条家の当主に黙っている。証拠なんて必要ないぞ?六条の当主が黒と言えば、黒になる。解っているよな?」
「・・・」
「もう一度だけチャンスをやる。合屋