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もうどうでもよくなった

 漸くトイレから出てきてパーティー会場を戻って来た頃には既に佳境になっていた。
「ルシーア、大丈夫か? ······どうした?顔色がかなり悪いが」
 私の姿を見たお父様が心配そうに声をかけてきた。
「えぇ、ちょっと具合が悪くて······、出来れば家に帰りたいんですが」
「わかった、パーティーも終わりに近いし出ようか」
 お父様は近くにいる人に声をかけてから私達はパーティー会場を後にした。

 帰りの馬車の中で私はお父様にトイレで聞いた事を話した。
 お父様も知らなかったらしく驚きと同時になんとも言えない表情をしていた。
「······あの王家ならあり得る話だな。身内、特に娘には甘いからなぁ。他人の迷惑なんて省みないし」
 お父様も色々思う所があるみたいだ。
「お父様、私凄い無力感を感じてますの。今日の為に努力してきたのに披露さえ出来なかった······」
 出鼻を挫かれた、とは正にこの事だ。
「そうだな、この件に関しては然るべき所に抗議しておこう」
「そういうのは別にいいんです」
「ルシーア?」
「私、もう社交パーティーへの参加を一切拒否致します。当然お茶会の参加も主催もしません」
「ル、ルシーア? 一回ぐらいそんな目にあったからって······」
「その一回がデビューの日、失敗が許されない日に誰にも相手にされない、っていう屈辱を味わったんです。この傷は一生残りますし一生言われますわ」
 キッパリと言う私にお父様は何も言わなかった。
「家庭教師の方々には明日からもう来なくても良い、と連絡してください。私、暫く何もやるつもりはありませんから」
 この日、私は決意した。
 貴族社会からリタイアしよう、と、 

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