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               PM19:19
 
                  ●REC
                   ̄ ̄ ̄

(うそ)つき!バカ死ねバカ!』

獰悪(どうあく)な殺意の目で彼女は僕を(にら)み泣いていた。

無言(むごん)(ひとみ)饒舌(じょうぜつ)に語っていた。

(うそ)つきと。

「一時的な記憶障害(きおくしょうがい)です」

頭上から聞こえた声に(おどろ)き見上げると、
枕元(まくらもと)記憶(きおく)の中で少女の肩に乗っていた
ペルボ(ペット(がた)ロボット)がいた。

こいつが(しゃべ)ったのか?

「もしかしてペルボの君が話しているの?」

「その質問は適切(てきせつ)ではないが、YESです。
 スピット。ロットナンバーXP3567、
 君達がナビと呼ぶ者が(こた)えています」

勘違(かんちが)いじゃないらしく、
ペットロボットは(ふたた)び話し始めた。

「ソウヤ、あなたは記憶障害(きおくしょうがい)にかかっています。

あなたの記憶を取り戻す方法はあります。

ただしそれは死ぬより(つら)い事かも知れません。

それでもあなたは記憶を取り戻したいですか?」

童話(どうわ)の世界の未知のロボがそんな事をたずねてきた。

ダメだ耳を()すな。

心の奥底(おくそこ)からもう1人の自分が、
そんな事を(ささや)いてきた。

僕は答える。

「ああ取り戻したい」

ペットロボは僕を見つめたままこう宣言(せんげん)した。

「それではその枕元(まくらもと)にあるクロムバイザーを、
 頭に装着(そうちゃく)して下さい」

それは目元(めもと)をすっぽり(おお)う、
ゴーグルの(よう)機械(きかい)だった。

僕は静かにそれを手に取ると、無言で装着(そうちゃく)した。

装着し終わった時に、
奥の部屋からもう1人男が(あらわ)れた。

僕はそれを見た瞬間、
(はげ)しい動揺(どうよう)後悔(こうかい)にみまわれた。

じっとこちらを見つめる男は僕自身だったのだ!?

なんだこれは?

なんだこれは?

なんだこれは!?

ジオラマ見たいに小さくなった現実が、
世界を見つめていた。

まるで解像度(かいぞうど)の悪いモニターを見ている(よう)な、
無機質で能面(のうめん)な人々の顔がこちらを(うかが)っていた。

だが後悔(こうかい)(すで)に遅く、僕の意識(いしき)(まばゆ)い光の中に
飲み込まれていった。

(くだ)(ちっ)った記憶の断片(だんぺん)無秩序(むちつじょ)残像(ざんぞう)となって、
(まぶた)(おく)を焼く。

その中に血まみれになって微笑(ほほえ)む少女がいた。

記憶の残映(ざんえい)(たたず)む少女。

「イリ・・・ 」

僕はなぜか涙を流し、それを最後に僕の意識(いしき)は、
深い闇の中に()ちて行った。



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