四章 (まとめ)
谷野はメタナセを背中でおんぶして、左肩にはリュックを背負って歩き続けていた。その目は覚悟を決めた。そう感じさせるものだった。谷野は、
(絶対に、生かすんだ。)
そう常に考えながら歩き続けた。
数時間した頃だった。肩から振動がして草原にそっと寝かすと、少しずつ目を開け始めた。
「・・・、見えない。」
(起きた!!えっと。)
「眼鏡だな。これでいいか?」
谷野はそっと眼鏡をメタナセの手に持っていった。するとメタナセは頷いて眼鏡を持ち、そっと着けた。
「うん、これだな。ありが・・・。」
メタナセは谷野を見ると止まった。
「あーー!?えっ、谷野だ!?」
「そうだよ。また殺そうとするのか?」
そう言うとメタナセはじっと睨んだ。
(でも何で俺を殺そうとしたんだ?・・・もしかして。)
「お前、あの執事達の関係者なのか?」
「そうです。だから襲いました・・・。」
少し震えた声でメタナセはそう言った。恐らく負けたと思ったのだろう。するとメタナセは、
「やっぱり殺されるのですか。」
(・・・。)
「は?誰が殺すって言った。」
メタナセは凄い唖然とした顔をした。
「お前、あの記事を鵜呑みしてるのか?」
「・・・はい。」
(ですよね。)
「そして俺を殺そうとしたと、んー。」
「あの、すみませんでした。」
メタナセは正座して深々と頭を下げて土下座した。
(起きたがどうしようか。)
谷野は腕を組んで言った。
「お前一応帰る所はあるか?」
「仲間の所ですがありますよ。」
(仲間の所か・・・。)
「なら仲間の所まで送るよ。」
「そうですね、私の名前はメタナセです。よろしく俺の名前はメタナセです。」
「知ってると思うが、俺の名前は谷野だよろしく。」
こうして二人はメタナセの仲間の所へ向かい始めた。
「・・・見つけた。」
暗殺者はスナイパーライフルを構えた。
「おい、後ろ。」
「ん?」
男はサイレンサー付きのハンドガンで暗殺者の頭に三発打ち、体にも三発打ってその場を去った。
「これでいいんですよね、『アカネ』さん。」
「はい。」
アカネは頷いた。
男の名は『Mr.キャット』。まあ探偵といえば探偵だが、彼は一味違うのだ。彼は転生といえば転生だ。しかし、彼は・・・
半年前(異世界)
「最近依頼こないなー。」
Mr.キャットがそう言うと女性は返した。
「そうだね。まあ平和なだけいいでしょ。」
「そうだな。」
3ヶ月前
「よし、依頼終わったな!というか最近探し物の依頼多いな・・・。」
Mr.キャットはゆっくり歩いていた。
「よし着いた。ただいま・・・。」
そこで見たのは・・・。数人の男女が血を流して倒れている光景だった。機材は割れたり、電気はチカチカと点滅しており、煽っているようだった。そして少し雨の後の独特の匂いがした。外は晴れなのに。それから調べてそれは『傘使いの能力の独特の匂いだとわかった』
「許さない・・・。」
それから探し回った。そして見つけた。
「ほい。」
アカネはMr.キャットの胸ぐらを掴んだ。
「は?」
Mr.キャットはキョトンとした顔をしたが、
「Mr.キャットさん、さっき谷野に殺意向けてたでしょ。」
アカネはそう言ってMr.キャットを睨んだ。
「いやいや殺そうとするなわけないでしょ、ならなんで助けるの。」
Mr.キャットはそう言った。するとアカネは言った。
「どうせ、あんたの手で殺して復讐したいんでしょ『転生者さん』。」
「えっなんで・・・。」
Mr.キャットはそう言って目が飛び出そうなくらいびっくりした。確かに少し前にあった人にバレるのだから。
約一週間前
アカネは谷野と執事達の目を盗んで館の裏口から出た。そして、ある場所に向かった。それはMr.キャットの探偵事務所『カスタード』だ。カスタードは殺人事件からもの探しまで様々している。まあここまでは他の所でもやってそうだがカスタードの所属者にはある特徴がある。
そこにいるのは一人除いて『特殊能力者』だ。
ここまではアカネが調べてわかっている。
「おい、アカネって言ったっけ。なんでそこまで俺達にこだわる・・・。」
すると、アカネはきっぱりと言った。
「それはね谷野にあるの。」
「谷野は俺達の敵だ!あいつに俺の仲間は・・・。」
そう言ったMr.キャットは
「カウント20、ストップ」
「はっ!えっ・・・。」
さっきまでアカネがMr.キャットの胸ぐらを掴んでいのに、逆にMr.キャットがアカネの胸ぐらを掴んでいる・・・。
「立場逆転だな・・・。」
そして、Mr.キャットはサイレンサー付きハンドガンを取り出し・・・。
「さよなら。」
といって打った・・・。
トン、トン
「・・・。」
「Mr.キャット・・・。」
Mr.キャットが打ったのは実弾に見せかけた偽弾だ。
偽弾は見た目は実弾だが、ゴム等で出来ていて殺傷能力のない弾だ。
「・・・見えない。」
Mr.キャットはそう呟くと、
「見えない?」
アカネはわからなかったのでまた言うように返した。するとMr.キャットは言った。
「俺の仲間を殺したのは確かに傘使いの能力者なんだ。しかし、あの谷野という者はどうしても殺してるようには見えない・・・。」
「谷野は殺すような人ではないからね。」
アカネはそう言ったが、
「アカネは谷野の何を知っている?」
Mr.キャットのその言葉で少し黙ったがやがて話し始めた。
「谷野はね・・・。」
アカネは言った。
「谷野はね・・・、一回この世界を救ったの。」
「・・・え!?」
「まあMr.キャットがびっくりするのは仕方無いけど、事実なの。」
Mr.キャットは驚きを隠せないが言った。
「まあとりあえず聞こう。」
「うん。」
アカネは頷いた。
約二年前
谷野は中学二年生だった。そんな谷野がこの世界に来た。どこから来たのかというと扉だ。異世界と現世界を繋ぐ不思議な扉だ。そこを何回も出入りしていた。入れたのは実はある日森の空き家で餓死寸前の魔族の男を助けた際に、
「魔族の皆を助けてください!」
そう言われたのが始まりだった。それまで天族と神軍人間の同盟軍に圧倒的劣勢にまで追い込まれていた。それは本当に残酷で、ある魔族は見せしめに町の中心で処刑。ある魔族は性欲の捨て場に。ある魔族は拷問で徐々に弱らせていって同盟軍に忠誠を迫るなど、もう終わっていた。
しかし、谷野が来てからは変わった。劣勢が徐々に戻り遂には攻められて奪われていた所を取り戻し、最初の状態に戻った。そこで同盟軍は驚く行動をした。和解である。すると、魔族側はこれに条件付きで了承した。条件は囚われた捕虜の解放だ。因みに魔族側も同盟軍の兵を捕虜として囚えていたが、衣食住は揃えていた。服はきちんと綺麗な物を揃え、食事はコックが作った美味しい物を食べさせ、住は一人一人個室できちんとプライバシーを守るという簡単に言えば至れり尽くせりだ。そんな中捕虜達にはある考えができた。
「自分達人間は見せしめに殺したり、徐々に弱らせてそれを楽しんだり、奴隷にしたりしていたのが馬鹿馬鹿しい。」
それからは捕虜達はせめてもの償いと思い、町で働き始めた。捕虜達は残る側と出る側に別れた。勿論出ると決意した捕虜は解放した。
しかし、同盟軍は違った。いつまで経っても捕虜を解放しないのだ。 しかも見せしめにわざわざ魔族達の目の前に来て捕虜の魔族を殺した。そして、また戦いが始まった。
そんな中谷野は世界を救った。
男は言った。
「正直ここまでしか書いてないんだよ。」
「・・・『 』様までわからないとはどういうことですか?」
男は少し笑みを見せて言った。
「谷野をこっち側に持ってくか。そうすればあいつの企みを何とか出来るだろう。」
異世界
「とういう所なの。」
アカネはそう言った。するとMr.キャットは、
「おい、なんでそんなことアカネが知ってるんだ。」
「それはヒミツね。」
そう少し魅惑びた声で言った。
「なんだよ。」
まあ『保留』だな、そうMr.キャットは思った。
一方、谷野とメタナセは。気まずそうにどちらも話しかけずに静かだった。実は谷野は少し偉そうな話し方していながら、人見知りだ。
(どうしよう。)
谷野は言った。
「あの、その探している仲間ってどんな人達ですか?」
「んー、一人は本当に存在感がなくていつの間にいなくなってる事が多いですね。あともう一人は少し話が苦手だけど頼れる人ですね・・・。」
メタナセは少し楽しそうにそう言った。
(頼れるか・・・。)
「二人の事が大切なんですね。」
「はい、大切な仲間です。」
メタナセはそう言うと、
「ヤノさんって旅人なんですか?」
谷野は言った。
「確かに旅人と言ったら旅人ですね。」
谷野がそう言うと、メタナセは少し不思議そうな顔をした。そうすると谷野は付け加えた。
「正直に言うと、目的のない旅人です。」
メタナセはそれを聞いてあることを思った。私達と同じだと。すると、メタナセは言った。
「ねえ、あなた行き場所ないのなら私達のギルドに入りませんか?」
谷野はびっくりした。しかし、本当に嬉しいかった。今まで仲間がいなくなって辛い思いをしていた谷野にとっては、とても嬉しい出来事だった。
「ありがとうございます!」
谷野は笑顔でそう言った。
「あの、ギルドに入ったので敬語やめよ!」
メタナセはそう言うと手を差し出した。
(ん?なんだ?)
「ハイタッチ!」
「おっ、おう。」
谷野は戸惑いつつもハイタッチをした。メタナセの笑顔、ハイタッチの音。その一つ一つが谷野に実感を与えてくれた。
(やっと俺の終着点に着いたか。いや、始まりか。)
アカネ、Mr.キャット側
「谷野嬉しそう!」
そう言ったアカネがの顔も笑顔だった。
「そうだな、ところで俺達隠れる必要あるか?」
そう言ったMr.キャットにアカネはどや顔をして言った。
「出るタイミングがあるの!」
「・・・うん。」
Mr.キャットは少し唖然した。
谷野、メタナセ側
「ねー、谷野って何処から来たの?」
メタナセの質問に谷野は、
「んー何処だろ?」
「いやいやあるでしょ。」
メタナセは手を横に振りながらそう言った。
「実は俺の中でも不思議なんだ。なんか死んだらしんだけど、覚えてないって言われて正直謎だ。」
メタナセは少しびっくりした顔をしながら、
「へー、なるほど。」
「まあ、そうなるよな。」
谷野は少し悲しそうな顔をしてそう言った。確かに分からない事は辛い事だ。
「それより、谷野!山頂までもう少しだよ!」
メタナセは山頂に向かって走り始めた。谷野もそのあとを追っていった。山頂に着いたメタナセは唖然とした。
「谷野・・・。」
あとを追っていた谷野も見た。
「えっ・・・。」
そこで見たのは燃える建物、黒くなった建物跡。
「なんでこんなことに・・・。」
そして、
「谷野!後ろ!」
アカネがそう叫んだ!谷野は後ろを振り向いたが、
(間に合わない!)
「カウント30、バースト!」
すると、周りの人達が動かなくなった。しかし、Mr.キャット以外に動ける人がいた。谷野である・・・。
「なんでお前が動けるんだ!?」
Mr.キャットはびっくりした。この能力で動ける者は一人もいないと。
「それよりも縄あるか!」
その本人のヤノはびっくりする様子もない。何故だと思ったが、
「縄あるぞ!」
Mr.キャットは縄を投げた。しかし、
「しまっ・・・」
カウントリセット
襲いかかって来ていた人が動き出したが、ヤノが攻撃を受け流し捕まえた。そして気絶させた。それと同時にヤノも気絶した。
「えっ、谷野!?」
Mr.キャットがびっくりして寄って来た。
「はー、いきなり走るなってMr.キャット・・・って谷野!?」
アカネも来た。一方メタナセは、
「・・・さっきから何が起こってるのだろう?」
メタナセの中では何が起こってるか分からないかった。メタナセから見ると、いきなり人が瞬間移動して気絶してと情報量が多い。
「おい、そこの谷野と一緒にいた女!運ぶの手伝え!」
Mr.キャットがメタナセにそう呼び掛けた。
「は、はい!」
メタナセはそう言うとMr.キャットとアカネの所に来て、Mr.キャットは谷野を背負って、アカネとメタナセで襲撃者を運んだ。
「ふー、とりあえず着いたな。」
運び終えたMr.キャットはソファーに腰かけた。
「ところでここは何処ですか?」
メタナセは疑問になったので質問した。
「ここは俺の元探偵事務所だ。前ここが襲撃されて俺以外全滅だったんだ・・・。」
Mr.キャットが普通そうに衝撃的な事を言った。
「え!?・・・なんでそんな事をほぼ初対面の私に言うのですか?」
「んーそうだな、メタナセって言ったっけ?あんた悪い人だと思えないし。」
「なんせ谷野が自ら信じて守ろうと思った人だからね。」
アカネが話に乱入してきた。
「・・・、谷野さんって何者なんですか?目的のない旅人ってことしか知らないんですが・・・。」
そんな質問をするメタナセにアカネが言った。
「そうね・・・私は彼に救われた話でもしようかな。」
一年前
アカネは風俗をしていた。アカネの家族はその風俗を営んでいる人に借金していたのだ。それでその人にメタナセを売る事を条件にチャラにしてもらっていたのだ。話が好きなアカネはたちまち人気が出た。
「主人あの・・・。」
ここでは営業主を主人と呼ぶようになっている。
「どうした?指名だから言ってこい。」
「あっあの。」
そう呼び掛けるアカネだったが、
「いいから言ってこい!!言うこと聞いてないと捨てるぞ!」
「は、い・・・。」
毎日主人にこんなことしたくないと言おうとしたらこうだ。何度か言ったことがあったが怒鳴られ、殴られで終わりだ。
毎日して、殴られ、雑に扱われ、辛くて、苦しくて、そんな日々を過ごしているとこんな考えが出来た。
(しないと、しないと、そうしないと私の居場所がなくなる・・・。とにかくしないと言うとおりにしないと・・・。捨てられる。)
もはやそう思って自分に言い聞かせていた。しかし、それが逆に快楽になっていた。
そんなある日だった。買い物に行っていると、
「ちょっとお姉さんいいかな?」
少しがたい良い男が声をかけて来た。
「なんですか?」
「ちょっといいですか?」
(またか・・・。)
アカネは町に来るとたまにそうやって声をかけられる事がある。目的はわかっているだろう。そんなこともあるのだ。しかしこの日は違った。
「よっし、それじゃ・・・」
男がアカネに手をかけた時だった。
「おーい、お兄さん達ー。」
やって来た少年はそう言った。
「こんな裏通路に用かな?」
「その女の人を僕にくれない?」
確かにその少年は小さく、声変わりもしていなかった。
「おいおい、小僧は引っ込んでな。」
「うーん、これならどうだ?」
少年は懐からお金を出した。その額200D、これがあれば1ヶ月暮らせる額だ・・・。
「おい、小僧この額どこで・・・。」
男がそう言うと、
「じゃあ、女の人もらってくね、じゃあね。」
「おっ、おう。」
少年とアカネはそうして裏通路から出た。アカネは少年に聞いた。
「なんで、無茶したの!私なんて・・・。」
「あんた、そんな事言ってるの?」
アカネはびっくりした。こんな事言ってくる人初めてだったからだ。少年はアカネの手の手を掴んで歩き出した。
「えっ、何処行くの!」
驚くアカネに少年は言った。
「決まってるでしょ!」
そう言われて連れてかれたのは、アカネが働いている店だった。そして、少年は入った。
「あのー。店主さんって・・・。」
「私が店主だが、坊やには早い所かな?」
店主はそう言って少年を外に出そうとした。すると少年は、
「この額であの女の人を譲ってください。」そう言って懐から600Rを出した。これは家が四軒位建てられる額だ。すると店主は、
「この小僧を取り押さえろ!」
そう言うと四人の男が現れた。少年は言った。
「交渉決裂かー、残念だ。それじゃ、こちらもいこうか。」
そう言うと少年は四人の男を軽々となぎ倒し、店主に駆け寄った。
「はい、これで言うこと聞くようになったかな?」
「はっ、はい!」
店主は涙目になりながらそう言った。
「じゃあ、もらってくよ。」
「女の人?何か最後に言うことある?」
少年がそう言うとアカネは言った。
「さよなら、ウジ虫ども!」
そう言って去った・・・。それから少年とはたまに会った。少年はアカネに家を買い、武術や剣術を教えた。少年と話す時はとても楽しく、素で話せた。そして少年はある日、急にいなくなった・・・。いなくなる少し前に名前を聞いた所、
「谷野 隆史だよ。」
そう答えた。
「という所なの。だから私はもし、もう一回来たらこの命が尽きても守り続けると誓ったの。それが恩返しだと思うからね。」
メタナセはそう言うと、メタナセは仮眠室で倒れている谷野の所に行った。
「谷野・・・。」
アカネはそう言って谷野の頬にキスをした。
「あっ、あの人いっ今谷野さんに、キッスをしましたよ・・・。」
メタナセが凄く戸惑ってそう言った。
「うーん、メタナセは戸惑い過ぎかな?」
Mr.キャットがメタナセにそう言った。
「まあ、そういうこと!」
アカネはそう言ってベッドで倒れている谷野にバグをした。すると・・・
「おーい、アカネ・・・重い。」
「誰が重い・・・谷野!?」
アカネはすぐに退けてヤノが起き上がった。
「谷野大丈夫か?」
Mr.キャットがそう聞くとヤノは答えた。
「おー、今は元の俺の出番か。」
「元の俺?」
メタナセが不思議そうに聞くと、
「三人に、元の谷野から言いたいことがある。それは・・・。」
「三人に元の谷野から話したい事がある。」
「あのさっきから元とか何ですか?あなたは谷野ですよね?」
メタナセがそう質問すると、谷野は答えた。
「まず俺は谷野だ。だが、今は別人格と言うべきか・・・。今は元の俺、三人がよく見ているのは1の俺だ。」
「うーん、私達が今までいたのは1の谷野って事?」
メタナセは少し疑問の様子でそう聞いた。
「そうだ。元っていうのはアカネ。君にあるんだ。」
「うん。」
ヤノはアカネに笑顔でこう言った。
「中学校時代、君のと過ごした日々を俺は覚えているぞ。本当に辛かっただろうが、頑張ったな・・・。」
「谷野・・・。」
アカネは目に涙を浮かべた。本当に辛かった日々を一通り終わったからだ。
「あと、1の俺についてだ。Mr.キャットの考え通り、俺は『傘使い』の能力者だ。」
「やっぱりな。所で何で俺の時間停止の中でも動けたんだ?」
Mr.キャットはそれが全くわからなかった。
「動けた理由か・・・。三人とも、今から話す事信じてもらえるかな?」
ヤノは少し心配そうに聞いた。
「おう。」
Mr.キャットがそう返事すると、ヤノは少しずつ話し始めた。
「まずMr.キャット、自分自身の能力は知ってるか?」
「『カウントクロック』だろ?」
カウントクロック
カウントと呼ばれるポイントを溜めて、そのポイントを一気に放出して自分の動きの倍率を操作したり、相手を止めたり、周囲の時間を止めたりできる能力。能力の中でも強力な部類に入っている。
「そうだ。だが実はカウントクロックには一つ弱点がある。『時空の行動者』には効かないことだ。」
「時空の行動者ってそもそもなんだ?」
Mr.キャットが質問すると、
「時空の行動者は、『過去や未来に行ったことがある人がなる特質』だ。」
「えっ、ということは・・・。」
「俺は過去や未来に行った事があるということだ。」
「えーーー!?」
メタナセが凄く驚いた表情でヤノを見た。
「おい、なら何を見たかを言え。」
Mr.キャットはヤノにそう聞いた。
「それは言わないでおこう・・・。」
ヤノは少し悲しそうな顔でそう言った。なぜなら、
(俺が見たのは仲間が全滅し、異世界が崩壊する残酷な結末だからだ。そして、『この三人の中に裏切り者がいる』からだ。」
「えっ、ここまで話しておいてそれはないだろ。」
「ここから話すのはいけないだけだ。」
ヤノはそう言うと、Mr.キャットに近付き耳元で言った。
「お前の仲間のうち一人は生きている。」
そう言うとヤノは事務所を出た。するとメタナセは 、
「ねえ、さっき谷野に何言われたの?」
「教えねぇよ。」
(何であいつが知ってたんだ?もしかしてあいつ・・・。)
アカネはこう言った。
「二人とも谷野についてだけど・・・。」
一方ヤノは、
(よし、行くか。)
休憩する感じにして、実はある場所に向かっていた。そこは・・・。
「待ってろよ進時。」
メタナセ達がいた町に向かっていた。そう、進時の所へ戦いにいくのだ。
そして山の山頂まで来た。
(やっぱりひでぇな。・・・うっ。)
ヤノはクラっとした。すると、
(おい!聞こえるか!)
〈・・・え!?心の中で何か聞こえる!?〉
どういうことか言うと、元のヤノと1の谷野は今心の中で会話しているということだ。
(おーい、聞こえるか1ー。)
〈1じゃなくて谷野だ!〉
(・・・俺も谷野だから言ってるのだけど。)
〈えっ、どういうこと!?〉
ヤノは谷野に事の一部始終を教えた。
〈んー、という事は俺は新しく生成された人格って事?〉
(まあ、そうなるな。)
〈とりあえずわかった。〉
(・・・てっきり悲しむと思ったんだが。)
〈おーい、聞こえてるぞー。あと、悲しむどころか嬉しいよ。だって、二人でいる方が行動しやすいからね。〉
(そうだな。でも、一人の時間なくなるな・・・。)
〈だから、聞こえてるぞー。〉
(ですよね。)
ヤノは笑った。因みにこの心での会話は勿論他の人には聞こえてない。なので、周りから見るとヤバい奴だ。
ヤノは走って山を下っていた。
〈足はや!?〉
(んー、パラメーター違うからな。)
〈どういうこと?〉
(パラメーター見てみて。)
〈うん。〉
ヤノのパラメーター
HP1000、SP1000、攻撃力2000、防御力1500、素早さ 3000、その他略だ。気づいた読者もいると思うが、実は進時より弱いのだ。しかし進時に勝るものがある。それはレベルと素早さだ。まず、進時のレベルが1なのに対してヤノのレベルは257だ。そして素早さなのだが、進時のパラメーター紹介の際書いて無かったが、進時の素早さは2000だ。しかし、ヤノは3000と上回っているのだ。素早さが相手より速いと回避しやすいというメリットがある。
(俺も前は谷野のようにパラメーターが超低かったからな。)
〈そうなの!?〉
(そうだ。・・・おっ、町に着いたな。)
〈でっ、どうすればいいんだ?〉
(んー、あれ試すか!)
〈あれ?〉
(あれってのはな・・・。)
あれとは・・・
(傘地蔵の能力ってどんな感じか知ってるか?)
〈んー、人格2つ出来ることしか・・・。〉
(まあそうだよな。それじゃあ教えるよ。)
傘地蔵の能力 (現時点)
・元の人格にさらに1の人格が追加される。
・1の人格は人の心に入る事が出来る。
・心を変化させる事が出来る。
(という所だ。)
〈えっ、これだけ!?〉
(そうだ、しかしこれだけでわかった事がある。)
〈うん。〉
(最後で気づいたかもしれないが、心を変化させる・・・。これ悪用したら、精神崩壊や人格崩壊を容易く出来るということだ・・・。)
〈おい、それ不味くないか!?〉
(Mr.キャットが言う限り、この能力者は俺らを含めて最低二人はいる。これがどういう事を意味するか。)
〈確実に一人は悪用者がいるということか・・・。〉
(そうだ。)
〈そのためにも早く行こうぜ!〉
(よし、わかった。)
そして、谷野達は廃墟と化した町へと入っていった。
異世界(どこか)
「よし、出来た♪」
女が笑顔でそう言った。
「これは?」
男が質問すると、
「これはね、異世界の扉。これが私の計画に必要なの。」
「計画?」
女は言った。
「それはね・・・。」
異世界(谷野達)
〈ところで進時って誰だ?〉
(んー、チート的なパラメーターがあるがその一方で催眠や呪いにかかりやすいデバフのある奴なんだが・・・。)
〈ってまさか!?〉
(そうだ。だから操られたりしている可能性が高いんだ。)
〈で、助けにいきたいと。〉
(そうだよ。)
〈なら行こう!〉
(その前に、あれしようか。)
〈あれってなんだ?〉
(あれってのは、精神分離だ!)
精神分離
傘地蔵など、能力で人格が出来た場合に分離することができる。分離した時にパラメーターを振り分けることになるが、二人のパラメーターを合わせてその後好きに取っていく。因みに割合は6-4、5-5でないといけない。因みに分離した後にまた戻ることは可能だが、パラメーターの再分配は不可能。
(こんな感じだな。)
〈わー、難し。〉
(とりあえず分配どうするかだな。)
〈どうするか・・・。ヤノ、とりあえず接近戦向きと魔法向きなので分けよ。〉
(いいなそれ。じゃあ俺接近いくわ。)
〈その方がいいな。〉
(よし、じゃあ振り分けるか。〉
〈ちょっと待って、進時って人パラメーターチートなんでしょ?〉
(そうだな。)
〈パラメーター分けたら一人あたりは減るってことは、下手したら一撃だぞ?〉
(確かに。)
〈ということは今はしない方がいいと思うぞ?〉
(そうだな。)
〈うん、覚悟は出来てるよね。〉
(おう。行くか・・・。)
二人は廃墟を歩き始めた。町には焼き崩れた建物、死体が生々しく残っていた。何があったか、よくわからないが物事の大きさを物語っていた。
〈何があったのだろうか。〉
(これ進時が操られたとして一人で出来るものなのか?)
〈いや、いくらチートでも一人では出来ないと思うよ。進時の他に何か・・・。〉
(いや、今はそんなこと考えてる場合ではない。先に進もう。)
〈そうだな。〉
また少し進むと、廃墟の中に人影が見えた。谷野達は瓦礫に身を潜めて人影を見た。
〈んー、誰だろあれ。
(・・・あれは!?)
〈ん?なんだ?〉
(メラアクだ!)
〈メラアク?〉
(メラアクはな、俺が中学生の時に森の空き家で助けた魔族だ。)
〈なるほど。〉
(よし、あいつに。)
〈待て。〉
(なんだ?)
〈後ろ!!〉
ギン!
すると、ヤノの剣と襲撃者の剣が合わさった!
(危な!?)
〈もう一発くる!〉
(よし。)
ジリリッ
ヤノは襲撃者の攻撃を受けながした。
(いくぞ!)
〈なんだ!?〉
ヤノが振り被ると剣が赤くなりだし、ヤノはそのまま襲撃者に斬りかかった。
リードパワースラッシャー+5
ヤノの剣は襲撃者に直撃し、襲撃者はそのまま倒れた。
(終わったな・・・。)
〈とりあえず相手の情報を調べる方がいいと思うよ?〉
(そうだな。)
〈こんな時こそ分離すべきか。〉
(何でだ?)
〈襲撃されたって事は俺達が狙われてる可能性だってあるから調べる時に一人は見張りに付くという感じが
良いかな。〉
(そうだな・・・、OKいくぞ。)
〈わかった・・・。〉
(聞こえるか。)
〈おう。〉
(パラメーターはもう振り分けてあるから、分離だけだ。)
〈OK。〉
ヤノは静かに目を閉じた。すると目の前が光出し、光がヤノ達を包み込んだ。そして目覚めると・・・。
「おい、何が・・・。」
谷野が辺りを見渡すと・・・。
「これ成功したのか!?」
フードを被った男がいた。谷野である。
「成功っぽいな。」
ヤノは少しホッとした。
「とりあえずボーッとしてる暇はないから早速調べよ!」
「じゃあ俺見張りいくわ。」
ヤノは見張り、谷野は調べる感じにした。ヤノは襲撃者の所持品を調べ始めた。すると、
〈剣に毒が塗ってあるな・・・危なかった。〉
そんな中谷野はある物を見つけた。
〈家族写真・・・。〉
三人の家族が笑顔で写った写真だった。谷野は襲撃者の顔を見た。
「俺がこの戦いを終わらせます。だから安らかに・・・。」
そう語りかけた。そして決意した。
〈絶対に戦いを終わらせる。〉
谷野はそしてヤノの所に戻った。しかし、そこにいたのは血を流して倒れている谷野だった・・・。
谷野が着いたときにはヤノは倒れていた。
「大丈夫か!?」
よく見るとヤノは大量の血を流していた。するとヤノは谷野の服を掴み凍えた声で言った。
「1の谷野・・・ここは包囲されている、俺を囮にして逃げろ・・・。」
「でもヤノが!」
するとヤノは言った。
「俺はいい、だけどこれを持っていけ・・・。」
ヤノから不思議な巻物を渡された。その後谷野は笑顔で谷野を見た。
(血を流して苦しいと思うのになんで・・・。)
「行く・・・。」
「ああ、行けそして・・・過去を変えろーー!!」
ヤノは掠れた声でそう言いまた地面に倒れた。
(俺は・・・もう、もう誰も、『殺させない、悲しませない。』そして、戦いを終わらせる。)
目に涙を浮かべた・・・。
(この包囲網を脱出する。とりあえずどうするかだな。)
ここは複数の建物があるが、どれも窓が割れている。一応夜では無いため、見渡しやすいのが有利だった。
(人数が分からないからどう動けばいいか・・・。)
「おーい。」
「うわ!?誰か・・・。」
誰かが谷野の口を塞いだ。
「モゴモゴゴ・・・プハー、びっくりした。」
谷野がいきなり口を塞がれたのでびっくりした。
「びっくりしたのはこっちもですよ。そういえばあなた・・・谷野さん?」
「はい、そうですが。」
「・・・久しぶりです。」
「誰・・・ヤラトラ!?」
「そうです!」
ヤラトラが笑顔でそう言った。
「なんでだ?お前俺と一緒に落ちたはずじゃ・・・。」
「そういうのは、後で説明するから。とりあえずこの包囲網から出よう。」
「わかった。」
ヤラトラ、谷野のパラメーターを決める転生面接の間に向かってる際に階段通路で落ちてしまい死亡扱いになっていた。
(・・・今はそれよりも包囲網から出る方法を探る方法が先だ。現状こちらは俺とヤラトラがいる、ヤラトラがどれほど強いのか気になるが、俺はヤノと実力が半分に分けてある。そして、ヤノがやられた。敵わない・・・。)
谷野が悩んでいる様子をすると、
「どうしたのヤノ?」
「ここまで行くまで何か襲撃にあったか?」
谷野が質問した。
「いや、特には。」
「そうか。」
30分経っても動きはなかった。というよりかはお互いが様子を伺っている様子だった。
「相手動かないな。」
「・・・はい。」
(このままじゃ消耗戦になってしまう、どうすればよいか・・・あっ。)
「雷を降らせるから、離れといて!」
「わかった!」
【詠唱】
魔力を溜めて、
【魔法を生成】
雷が降るのを想像して、
【魔法を発動!】
魔法を放つ!
谷野達から少し離れた所に雷が降った。
(よし、出来た!)
どういうことかと言うと、
(仲間や助けを呼ばないと・・・。)
谷野の選択としては、強行突破、待機、助けを呼ぶ等があった。強行突破はまずない、待機は消耗戦になるのでない。となったら助けを呼ぶしかないので呼んだ。
「・・・やっぱり無理だったのか?ヤラトラごめん。」
「こちらこそ・・・。」
すると、
「助けを呼ぶ声がしたのですが。」
谷野の方を叩いた男は、
「えっ、谷野様・・・。」
黒い服をきた男だった。
「あの、誰ですか?」
「覚えてないのですか!?うーん、私はメラアクと申します。」
メラアクは谷野のわからない様子を見てびっくりした。
「もしかして、あそこに倒れているヤノの知り合いですか?」
谷野がそう言うと。
「それはどういう・・・。」
谷野はメラアクに事の一部始終を説明した。
「なるほど、なら私が守るべきなのは谷野様ですね!」
「そうなるな。」
いきなり風と共に忍者らしき男がそう言った。
「待ってよ、れたん!」
今度は魔法使いらしき女性が一人来た。
「・・・ん?」
谷野は状況が読み込めない様子だった。すると、
「僕は忍者『れたん』。魔法使いらしきのは『キヌラ』、あとから侍が来るんだが名は『カツオブシ』だ。」
「よろしくお願いいたします・・・。」
メラアクは戸惑っている谷野に言った。
「戸惑うのは当たり前だ。しかし今はここを出るのを優先しよう。話はそれからだ。」
「ありがとうございます。」
メラアクは頷くと皆に言った。
「よし、一気に行くぞ!」
「オッケー。」
そのれたんの返事と共に全員一斉に走り出した。目的はあくまでも谷野の生存だ。
しかし、何故こうなったの?皆なんで血を流して倒れているの? 何で皆・・・そうだ。あいつらが攻めて来たんだ。神族とタサだ。神族は神に使える者達のことで、魔族と仲の悪い種族らしい。何故神族が来たかというと、メラアクが魔族だからだ。俺達は魔族を匿ったとして倒しに来たのだ。だが問題はここからだ。タサはこう言った。
「異世界と現世界を繋ぐ扉を沢山作っといたから、谷野さんの仲間が沢山出来るよ!」
タサはそう言うと、
「よし、言うことは言ったから。爆破しよ!」
・・・そしてタサは町全体を爆発させた。
俺が生き残ったのは何故なのか・・・分からないが、間違いなく生かされたと思う。
現世界
「何これ?」
少年達は扉を見つめていた。
「異世界の扉って書いてあるけど。」
『異世界の扉!?行ってみるしかないでしょ!』
「っておい!?」
入った少年が見たのは・・・。
「おい、何だこれ・・・。」
モンスターに食われる人間、死体の山、そして、
「・・・近づくな!近づくなー!!」
少年は泣き叫ぶが声は届かず、
グシャ
少年の首は飛んだ。
異世界
「ねえ谷野さん、この景色綺麗でしょ。」
「・・・。」
「俺は・・・。」
『異世界の扉!?行ってみるしかないでしょ!』
終わり。
『異世界の傘地蔵の破壊衝動が抑えられない!?』
に続く。