拡張と下準備
自身が創造した世界を変えるのはとても容易く、管理者は直ぐに世界を大きくした後、同じ世界の中にペットを飼育している場所とは隔離した区画を構築した。
そこはかなり広々とした場所で、そこだけで創造主が創造する最近の世界が丸々収まるほど。
ペットを飼育している区画はそれ以上に大きいので、そもそも両方を合わせたこの世界自体がかなり大きい。それでも管理者が最初に任された世界と比べればまだ小さかった。
それでも周囲に何も無い場所に創造しただけに、まだまだ大きくしても問題はないだろう。その予定は無いがこの調子であれば、そう遠くない内に拡張しなければならないかもしれない。
管理者は新設した区画の環境を軽く整えた後、建物を建設していく。交流の為に管理者達が集う場所にするので建物はとても広く、区画自体もゆっくりと休めるような環境を目指す。
それを行うのは分身体でしかない管理者だが、分身体の総数を減らしたり、管理者自身が成長した影響でかなり能力に余裕がある。なので、かなり大きな世界ではあるが、その世界を管理しているのは一人だけだ。
区画を整備しながら、管理者はペットの様子も見に行く。
飼育しているペットは、広い世界でのびのびと暮らしており、むしろ世界が広すぎるぐらいだろう。この世界には管理者以外にはペットが一匹いるだけなのだから。
ぐるぅと鳴いて、ペットは様子を見に来た管理者に甘えるようにすり寄る。
元々戦いの化身のような荒々しい存在ではあったが、そんな存在よりも強い管理者に飼われている内に、それも大分性格が丸くなった。といっても、懐いているのは管理者のみになので、他に対しては今までと変わらないだろう。
このペットに名前は無い。そもそも管理者にも名前が無いので、管理者自身名前を必要だとは認識していなかった。大抵一対一で会話するので、現在のところは必要としていないというのもある。名前というモノぐらいは知識としては存在しているのだが。
ペットと言っても、餌に関しては特に必要ない。外の世界に満ちる力から生まれたそれは、力さえ補充出来ればそれで十分。そして、この世界にはその力が充満していた。他の世界とは異なり外の世界と隔離している訳ではないので、独自の力というのは基礎的な部分ぐらいしか築いていない。
管理者はしばらくペットを撫でた後、ペットが元気に動く姿を静かに眺める。今ではそれは、管理者の数少ない楽しみとなっていた。
なので、管理者はまた似たような存在を見つけたら飼おうと決心する。幸い世界にはまだまだ余裕があるので、百や二百増えたとしても問題はない。仮に問題があっても大きくすればいいのだから。
ペットと戯れた後は、区画の整備の続きを行う。世界一つ分以上の広さがあるので、いくら管理者でも整備には多少時間が掛かる。といっても、急ぎではないのでのんびりと整備しているのだが。
それが終われば、世界間を移動する手段も構築しておかなければならない。今は常設でもいいかもしれないが、人数が増えればそれも考えなければならないだろう。幾ら広くとも受け入れられる人数は限られている。あまり拡張しすぎるのもよろしくないだろう。それに拡張するのであれば、ペットを飼育している区画の方を優先したかった。
大分慣れてきたので、別の分身体で行っている指導も順調だ。他の世界でもこれといった問題もなく、平穏そのもの。
もう少ししたら次の指導要請が来るのだろうが、体制は少しずつ形になってきている。
その辺りを考えながら世界を弄っていると、管理者は新しい存在が生まれたのを察知する。新しいペットを飼いたいと思っていたところだったので、管理者は創造主から何か言ってくる前に分身体を生み出し、そちらに分身体を向かわせることにした。