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年の初めのご挨拶よぉ その3

 お義母さんのリテールさんが遊びに来てから数日。
 常にパラナミオとリョータにべったりなんですよね。
 一応、寝室を別に準備しておいたんですけど、
「私、みんなと一緒がいいです~」
 と、とてもお義母さんには見えない、見事な寝っ転がり駄々こねを演じた結果、僕達一家が寝ているベッドのど真ん中、パラナミオとリョータに挟まれる位置で寝る権利を勝ち取った……と、いいますか、まぁ、許可してあげないと、マジ泣きしそうな勢いだったもんですから、仕方なくといいますか……ははは。

 ただ、パラナミオはリテールさんがいても、いつものように僕に抱きついて寝ているわけです。
 なので、リテールさんは、そんなパラナミオに背中をくっつけつつ、リョータを抱っこして寝ているんですよね。
 で、そんなリテールさんにリョータを独占させてなるものか、と、ばかりにスアもリョータを抱きしめていて……なんか、リョータってば、リテールさんとスアに左右から挟まれた格好で寝ているわけです、はい。
 そんな中でも、リョータってばいつも通りなわけでして、気持ちよさそうに寝息をたてているんですよね……なんていいますか大物な風格この上ないわけです、はい。

 で、ですね、そんなリョータの異変に気がついたのが、今朝だったわけです。
 この日も、僕は朝からコンビニおもてなし本店のレジに立って接客をしていたのですが、そんな僕の足を誰から引っ張りました。
「ん?」
 僕が慌てて下を向きますと、
「あ~!」
 と言いながら、満面笑顔のリョータがそこに立っていました。
 ありゃりゃ?いつの間に店内に紛れこんだんだ?朝ご飯が終わった後は、リテールさんと仲良く遊んでいたはずなんだけど……
 僕がそんな事を思っていると、なんか店の奥にある勝手口~巨木の家と通じている廊下の方からリテールさんがこっちをのぞき込んでいました。
 で、よく見るとリテールさんってば、
『すごいわ!リョータくん、ほんとにすごいわ!』
 なんか小声でそんなことを口走っています。
 そんな言葉が漏れ聞こえてくる中ですね、僕はリョータに
「リョータ、来てくれたのは嬉しいけどね、パパは今、ちょっと忙しいんだ。リテールお婆ちゃんのところに行って遊んでもらっておいで」
 笑顔でそう言いました。
 すると、リョータは
「あい」
 そう、舌っ足らずな声で返事したかと思うと、


 一瞬で、僕の視線の先から消え去りました。


「は!?」
 僕が唖然としている中、
「すごい!すごいわ、リョータくんってば!」
 なんか、リテールさんの歓喜な声が聞こえてきました。
 で、そっちに視線を向けますと、そこにはリテールさんがリョータを嬉しそうに抱きしめている姿があったわけです、はい。
 ……つい一瞬前まで僕の目の前にいたリョータを、です。
 リョータは確かによく歩くようになっていまして、結構早いです。
 でも、今の僕とリテールさんの間の距離を一瞬で移動出来るほどではありません。
 しかも、僕が見つめている、その目の前でいきなりいなくなったわけですから……
 僕が、そんなことを思っていると、リテールさんが言いました。
「リョータくん、この年齢で転移魔法が使えるなんて、すごすぎるわぁ」

 ……え? 転移魔法? リョータが? マジで?

 で、僕は、若干困惑しながらリョータを見つめていました。
 すると、そんなリョータと目があったんです。
 リョータは、
「ぱぁぱ!」
 僕と目が合ったことに気がつくと、嬉しそうに微笑みながらそう言ってですね、

 一瞬で、リテールさんの腕の中から消え去って、またもや僕の足元に出現して今度は僕の足に抱きついて来たわけです、はい。

◇◇

 で、そんな事があったこの日の仕事後……
 僕は巨木の家のリビングで、リョータを抱っこしながらイスに座っていました。
「リョータってば、この年で転移魔法が使えるようになったんですねぇ」
 僕がしみじみそう言うと、僕の横でリテールさんが興奮気味に手を何度も上下させています。
 なんといいますか、その姿がですね、どこか嬉しいことがあった子供が、親に喜んで報告にやってきた時の姿みたいでどこか微笑ましく感じてしまうんですけど、
「あらやだ、子供みたいだなんて、そんな若く見えますか?」
 なんか、リテールさん……僕の思考を読んだらしくて、急に頬を染めてですね、その頬を両手で覆いながらスアばりに照れり照れりと体をくねらせ始めたんですけど、
「やっぱり婿様とステルちゃんの子供ちゃんですねぇ……まさに天才ですわぁ」
 そう言いながら、ほうっと熱い吐息を漏らしていきました。

 で、このリョータが使用し始めた転移魔法ですけど……
 普通、中級魔法使いでチラホラ使える人がいて、上級魔法使いでも何割か程度しか使用出来ない……そんな高等魔法らしいんですよ。
 そんな魔法を、まだ1才にもなっていないリョータが使用出来ているとは……確かにリテールさんでなくても、そりゃびっくりしますよね。
 僕は、その……スアの転移ドアを普通に見続けているもんですから、この魔法がそこまですごい物だとは思ってもいなかったもんですから、最初リアクション薄かったんですけどね。

「そっかぁ、リョータはそんなすごい魔法を使えるんだなぁ」
 僕がそう言いながら、膝の上に抱っこしているリョータの頭を撫でてやっていると、リョータは
「あい」
 嬉しそうに微笑みながら、僕の手に頭をすり寄せてきます。
 よくですね、男の子は男親にはあまり懐かないとか聞いた気がしないでもなかったもんですから、こうして甘えてもらえると、なんだかすごく嬉しくなってくるんですよね。
(ボク、パパのこと大好きです。嫌いになるわけないじゃないですか)
「そうかそうか……リョータってば、そんな風に僕の事を……」

 ……ん?
  
 ちょっと待ってください。
 今の声……なんかおかしいです。
 リョータは、まだ片言の言葉しか話せないはずです。
 ですが、先ほど聞こえて来たリョータの声は、流ちょうな言葉使いをしていました。
 で、そのことに気がついた僕が、リョータを見つめながら困惑していると、
(この体はですね、まだ発声器官が成長していないので上手く話せないのです。ですが、思念波でならこうしてお話出来ることに気がついたので、今は思念波でパパの頭に直接話しかけさせてもらっています)
 そんな言葉が、文字通り脳内に流れ込んできましてですね、同時にリョータがニッコリ微笑んだわけです、はい。
 で、どうもリョータが、僕に思念波で語りかけていることに気がついたらしいリテールさんってば
「すごいわすごいわ!リョータくんってば、もう思念波まで使えるのね!すごいわすごいわ!」
 と、またもや感動しきりな様子でぴょんぴょん跳びはねまくっていったわけです、はい。

 で、そんな感じでリテールさんが跳びはねまくっている室内に、スアがトコトコとやってきました。
 僕は、そんなスアにリョータが転移魔法や思念波を使用出来たことを報告していったのですが、スアによると、
「……素質はすごい、よ……リョータは」
 そう言いながらニッコリ笑って僕に抱きついてきました。
「……私と、旦那様の子供……すごい、ね」
 そう言って頬を染めるスア。

 で、そんな僕とスアの後方で、リテールさんってば頬を上気させながらスアににじり寄っていきました。
「ねぇねぇステルちゃん。ママもね、そんなすごい赤ちゃん産みたいなぁ……って思うの。ママならまだ産めると思わない?だからぁ、スアの旦那様を……」
「……お断り、よ」
「そんなこと言わないで、ちょっとだけ貸してくれないかしらぁ?」
「……ダメ、絶対」
「そこをなんとかぁ」
「……嫌、ね」
 ……とまぁ、そんな会話を繰り広げるスアとリテールさん。
 なんか、僕抜きでそんな会話をしているわけですけど……そもそも僕はですね、スア以外の女性を相手にするつもりは毛頭ありませんので、不毛だと思うんですけどねぇ。
 僕がそんな事を思っていると、リテールさんってば
「そんな事おもわないでぇ、婿様ぁ。私、ステルちゃんのママよぉ、スタイルも負けてないと思うのよぉ」
 そんな事を言いながら着衣を脱ごうとしていきます。
 で、その横で、スアは
「……旦那様は、私のこの体が好き、なの」
 そう言いながら、こちらも着衣を脱ごうとしているわけです。
 
 ともに、2百才を超えている2人なんですけど……見た目的には幼女そのものなんですね。
 で、そんな2人が僕の目の前で素っ裸になろうとしているわけですよ……これ、元いた僕の世界だったら、即ロリ呼ばわりされて通報されかねないレベルだよなぁ……なんて思ったわけです、はい。

 で、そんな僕に抱っこされてるリョータ、
(パパ、モテモテですね。さすがボクのパパですね)
 なんて思念波で語りかけてきながらですね、満面の笑みを浮かべているんですよ。
 なんていいますか……

 すごい魔法使いのスア
 サラマンダーなパラナミオ
 で、魔法の素質がすごいリョータ

 ……やはり、僕はタクラ家最弱なわけですね、はい。

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