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第一話 ユーラット到着?


 食事を終えて、ディアナに戻った。そのまま、リーゼは居住スペースに入って横になった。すぐに、居住スペースからかわいい寝息が聞こえ始める。

 食事をして少しは落ち着いたのだろう。ゴブリンに襲われて怖い思いもしたのだろう。ゆっくり寝かす事にした。
 そっとカーテンを閉めて(外からでは壁を引き出す事はできない)、ナビの画面を見つめる。

 時折、赤い点が光るだけのナビを眺めている。
 ディアナが通った場所は道として表示されているが、それだけの寂しい地図だ。

「エミリア。あとどのくらいだ?」

『時間計測・・・成功。あと、11時間32分後に到着予定。ただし、途中馬車などと遭遇した場合、現在の速度が維持できなくなる事が予測されます。その場合、到着時間が遅れます』

「わかった。音楽を鳴らす事は可能か?」

『音楽プレイヤーを起動・・・失敗』

「なんで失敗した?」

『音楽プレイヤーの機能が組み込まれていません』

「どうしたらいい?」

『魔物の討伐が必要です』

「どのくらいの魔物討の討伐が必要になる?」

『討伐履歴を参照・・・成功。続いて、音楽プレイヤーを検索・・・成功。ゴブリン換算で、約1万2千匹の討伐が必要です』

「1万2千匹?ゴブリン以外ではどうなる?」

『魔物を検索・・・失敗。サンプルが無いために、計算できません』

 そりゃぁそうだよな。
 ゴブリン以外倒していないのだからな。そもそも、街道沿いに出てくる可能性がある魔物以外は倒せないよな?

 俺が武器を持って戦う?
 現実的じゃないよな?

「どうしたら、討伐を増やせる?」

『討伐方法を検索・・・成功。ディアナで轢き殺すのが1番確実です。それ以外ですと、マスターが御自ら倒す事です』

「それができないから悩んでいるのだけどな」

『マスターと契約した奴隷や従業員が倒しても、討伐に記憶されます。ちなみに、マスターのステータスは、知力を除きますがレールテの平均値を大きく上回っています。英雄と呼ばれる冒険者にもなれます。武器を持って倒す事も不可能ではありません』

「平均値?」

『およそ、D-Eです。Cあれば上位者です。B以上は限られた人がたどり着くステータスです。ちなみに、Hは最低です』

 ”ちなみに”は必要ないよな?
 そうか・・・ん?そうなると、隠蔽した方が目立たないよな?

「エミリア。ステータスだけど、俺のステータスでは目立たないか?」

『目立つ事が考えられます』

「隠蔽はできるか?」

『ステータス隠蔽を検索・・・成功。一部隠蔽は可能です。知力は最低のHですので隠蔽ができません』

 知性Hがそんなに不思議か?
 隠蔽できる事がわかった。上の物を下に見せる事はできるのだな。

「わかった、知力以外を、3段階下げてくれ」

『かしこまりました。AをDに、CをEに偽装します。知力のHは偽装できません』

--- ステータス
ステータス
 体力D
 腕力E
 精神力D
 知力H
 魔力D
 魅力D

 ディアナの運転席で、船を漕いでいると突然アラームが鳴り響いた。

『マスター。マスター』

「どうした?」

『はい。前方15分くらいの距離に、馬車と人の気配があります。どうされますか?』

 流石に跳ね飛ばすとは言えないし、ディアナでは目立ってしまうだろうな。

「馬車が居るのか?違う道を探したほうがいいかもしれないな?」

「ヤス。アーティファクトで間違いないよね?これ?」

 後ろから声が聞こえてきた。

『後ろで寝ていた雌が起きたようです』

 報告されなくても流石にわかる。
 カーテンを開けて、リーゼがこっちを見ている。

「そうだけど?」

「それなら、このまま進んでも大丈夫だと思うよ。なにか言われたら、僕が話をするよ」

「へぇリーゼにはそこまでの権力があるのか?」

「ん?違うよ。僕は、ユーラットにある宿屋に居る。美人の店員さんだよ?」

「自分で美人とかいう奴の言葉は信用できないな・・・。まぁ可愛いのは認めるけどな。美人ではないな」

「ヤス・・・。僕の事・・・。可愛いって・・・。違う!大丈夫だよ。それに、門番とか商隊の護衛は、宿屋の常連が多いから顔なじみが多いよ」

「そうか、そういう事ならこのまま進むか・・・。速度を落とせば大丈夫だよな?」

「うん!」

 速度を15キロ程度まで落とした。
 揺れが少しおさまった。やはり道が悪いなって日本と比べるのがダメなのだろうな。

 リーゼに任せるとして、なにか問題が有ってもディアナの中に居れば安全だろう・・・。だといいな?

「本当に早いのね?」

「そういっただろう?」

「うん。もうこの辺りなら僕が道案内できるよ?」

「ほぉ?近道とかも?」

「近道?ないない。普通に、この道をまっすぐ進めば、いいだけだからね」

「おい。それは道案内と言わないと思うぞ?」

「そう?」

 後ろから身を乗り出して、外の風景を見ながら、リーゼは面白くもない事を言い出している。

「でも・・・」

「どうした?」

「このアーティファクト・・・。誰かに盗まれないかな?宿の近くに置いて置けるかな?大丈夫かな?」

「どうだ?エミリア?」

『マスター認識でロックされます。マスターが許可しない者は、ドアを開ける事ができません。また、破壊の意図を感じたら攻撃する事もできます』

「なんだって?」

「あぁそうか、リーゼにはエミリアの言葉がわからないのだったな」

「・・うん(ヤスにわかるほうが不思議なのよ!)」

「そうだな。リーゼは大丈夫だとしても、それ以外の者が扉を開けようとしても開かないようにできる。壊そうとしたら、ゴブリンを跳ね飛ばしたように攻撃する事もできるし、逃げる事もできる馬車だってことだよ」

「へぇすごいのね」

『マスター。雌に、マスターの凄さを解らせましょう』

「エミリア。いい。面倒だよ。それよりも、マルスはまだ作業をしているのか?」

『はい。マスター。マルスは、拠点を作っております』

「そうか、わかった。拠点にも行かないと駄目か・・・。説明を聞かなければならないだろう?」

『お願いいたします』

「わかった、マルスが拠点作成を終えたら教えてくれ」

『了』

「ヤス。帰るの?」

「そうだな。拠点には帰るつもりだけど、まずはリーゼをここまで運んだ”駄賃”をもらう約束になっているからな。仕事として考えれば当然だろう?」

「・・・。そうだね。うん」

「あぁおやっさんの料理は美味しいのだろう?」

「え?あっ!もちろんだよ!」

「楽しみにしているからな」

「うん!」

 速度を落としたと言っても、馬車の1.5倍程度の速度は出ている。
 まだ馬車とは遭遇していないが、ナビには確かに人族の反応が出始めている。

 そう言えば、マークのオンオフとかできるのかな?

 たしか、真一の説明では・・・おっできた。

『マスター。運転しながらの操作は危険です』

「あっすまない」

『いえ、エミリアにお命じください。操作を行います』

「次からは、お願いする」

 フロントガラスに映る可愛い顔したリーゼが”むぅ”という表情をしている。
 自分が無視されたのが気に入らないのだろう。”お子ちゃま”はだから嫌いだ。

「リーゼ。宿屋までは、このサイズの馬車が入っていけるのか?」

「え?あっ・・・。大丈夫・・・じゃないかな?」

 なんか、曖昧な表現だな。

「なんだよ、曖昧だな」

「だって、この”エミリア”だったよね?僕、大きさわからないわよ」

『雌に告げてください、ディアナのサイズは、通常の馬車の4台分です』

「ディアナな。それで、大きさだけど、幅は倍で長さも約倍くらいだぞ?」

「うーん。それだと難しいかな?」

『マスター。ディアナを、街の外に停車してください』

「リーゼ。ディアナは、街の外に停めておくことにするから大丈夫だ」

「へ?わかった」

 馬車がちらほら見え始めたが、ディアナを見て動揺はしているみたいだが、突っかかってきたり、文句を言ってきたりする者は居ない。
 少し遠巻きにして見ている位だ。

 速度差もあるので、気にしてはいられないのだろう。

 などと思っていたが、ユーラットの街?が見えてきたら状況が一変した。

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