秀吉の死11
関が原で西軍東軍が向かい合ったが戦いは疎らだ。様子見の武将が両軍とくに西軍に多い。高虎は頻繁に東軍の中を駆け回っている。そういう役割を与えられているのだ。戦場には柳生や服部が至る所にいる。狗は雑兵に化けて家康の陣に潜り込んでいる。ここが司令塔だからだ。
「どうなっているのだ?」
家康がどうやらイラついている。宗矩が配下から受けた報告を伝える。
「秀忠殿は真田攻めで足止めを」
「何を考えているのか。いつまでも待っておれないのだぞ。で毛利は?」
「服部を入れて小早川に催促しておりますが?」
どうも計画通りに行ってないようだ。高虎は狗の忠告も虚しく向き合った大谷軍と死闘を繰り返すことになった。忍びは戦場の戦いとは無関係だ。夜のうちに陣を抜け出して小早川の陣の近くまで行く。忍びしか聞こえない合図の笛の音で山の中に入る。蝙蝠の姿が現れる。
「秀忠の軍は来ない。予想外の混戦になりそうだ。小早川の動きは?」
「まるで固まったようです。動きが全く見られません。ただ頻繁に服部が忍び込んでいます」
「小早川がこの戦いを決めることになりそうだな?」
「三成からも伝令が再三来ています」
「西軍からも東軍からも怪しい存在なのだな。だがこれではどちらに最後付いたとしても分は悪くなるのだがな」
「高虎殿は?」
蝙蝠は高虎の性格を気にしている。
「大谷と死闘を繰り広げていて忍としては手の出しようがない。何とか早く決着をつけるしかない」
「これは西軍の噂ですが黒田官兵衛が九州で͡この戦乱に紛れて領地を拡大しているそうです」
官兵衛は家康と通じていたが関が原には息子だけを派遣している。彼は三成に勝ち目がないと見ている。これは家康と通じているものかどうか。だが官兵衛はやはり先を見て動いているようだ。