いつの間にか
「じゃあ、点呼始めます!」
「はぁーい」
今日も部活の時間が始まった。
私は、美術部に入っている。
「長岡さん」
「はい」
「一《にのまえ》さん」
「はい」
どんどん先輩たちの名前が呼ばれていく。
私は一年生なので、後半の方に呼ばれる。
「東さん」
ドキッ…………。
この名前を聞いただけで、心臓の音が激しくなるなんて、私はどれだけ彼のこと好きなんだ……。
東先輩は、三年生の男の先輩で、私の片思い相手でもある。
私は、彼を好きになって7年も経つ。
小学校4年生のときに、一目惚れしてずっと彼を追いかけてこの学校に入った。
「芦川さん?」
「あ!はい」
東先輩のことを考えていると、私が呼ばれていることに気づかなかった。
「今日の課題はリンゴです。今日もみんなで円になってそれぞれの角度からのリンゴを描いて、みんなの絵をパラパラ漫画にして、360度リンゴを作ります!」
「はーい」
何回も聞いてきて、最近やっとなれ始めた360度絵シリーズ。
リンゴだったら、まだ簡単だな……。
私は、画用紙を取り出して、ペンで絵を描いていく。
たまに、チラッと東先輩の方を気にして、見てしまうけれど……。
この、絵を描きながらたまに視界に入る東先輩も好き。
唯一、彼をじっくり見られる時間だから。
そう思いながら、彼をじーっと見つめていると、バチッと目があった。
私は見ていたことに恥ずかしすぎて、思わずパット目を離してしまう。
もうっ、これじゃあ余計に怪しまれちゃうじゃん……。
そう思いながらもまた視線は、彼の方へ。
こんなふうに部活を送る生活が私は一番好きだ。